日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PF

2015年8月27日(木) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PF071] 見通し力尺度作成の試み(1)

大学生を対象として

肥田幸子1, 堀篤実2, 鈴木美樹江3 (1.愛知東邦大学, 2.愛知東邦大学, 3.金城学院大学)

キーワード:見通し力尺度, 構成因子, 内的整合性

目 的
大学生の中に学業に問題はないが,対人関係能力が低く,場の理解,時間的組み立てに困難を示す一群が存在する。それらの学生の多くが就職活動やその後の就業で困難を示す。特徴の中核はAutism Spectrum Disorder(自閉症スペクトラム障害)と重なるが,スペクトラムと呼ばれるように程度や現れ方も多様である。中には診断が出ている学生もいるが多くは未診断である。
自閉症スペクトラムを測る尺度は多数あるが,必要なことは診断ではなく,どの学生にどのような支援が必要かを見出すことである。
本研究では,過去の体験の上に現在を構築し,そして未来をイメージする,この時間の感覚を縦の繋がりとし,現在の対人関係や場の理解を横の広がりと見た推察力を「見通し力」という名前で便宜的に定義する。見通し力尺度で要支援学生をスクリーニングすることで,大学生活や就職活動の支援に繋いでいくことができる。
本研究では探索的因子分析を行い,見通し力尺度の項目の作成を目的とする。
方 法
調査時期と対象:2014年7月,大学生1~4年生165名(男子90名,女子75名)を対象とした。
調査内容:見通し力尺度は,時間的展望尺度(白井 1994),共感性尺度(登張 2003),セルフモニタリング(岩淵・石井 2006),日常生活スキル尺度(島本・石井 2006)等を参考にし,発達障害児・者支援活動(NPO法人アスペ・エルデの会)の中から得た16項目を加えて40項目を初期項目とした。重なっているもの等を削除した後の26項目とAQ(Baron-Cohen et al. 2001,若林ら 2004)下位尺度のコミュニケーション10項目,想像力10項目を用いた。見通し力は「そうである」を4点とし,「そうではない」を1点とした4件法で回答を求めた。
結 果
1.見通し力の因子分析(主因子法,Promax回転)
因子分析の結果,3因子が抽出された。(Table 1)
2.見通し力因子の信頼性
各尺度の信頼性は,第Ⅰ因子α=.770,第Ⅱ因子α=.725,第Ⅲ因子α=.714であった。(Table 1)
考 察
結果から時間的予測力,場の理解力,感情推察力の3因子が見いだされ,因子の信頼性に関しても十分なα係数が得られた。
この尺度は見通し力の悪さ,つまり過去の体験の上に現在を構築し未来を予測する,そして,自分のおかれている場を理解し,対人関係を結ぶ力を計る尺度であるといえる。
今後は,質問項目の妥当性を精査するともに,開発中の就業に関するレディネスの尺度とあわせて使用の方法を検討していきたい。
本研究はJSPS科学研究費(基盤研究C,25381147)の助成を受けたものです。