[PF072] 見通し力尺度作成の試み(2)
尺度の信頼性と妥当性の検証
Keywords:見通し力尺度, 信頼性, 妥当性
目 的
大学生の中には発達障害などの診断の有無にかかわらず,時間や対人関係において見通しを持って行動する力が弱く,学生生活や就職活動,その後の就業で困難を示す者がいる。一連研究⑴において,これらの学生をスクリーニングし支援する目的で見通し力尺度の作成を試み,検証を行ってきた。
本研究では一連研究⑴で明らかになった「見通し力尺度」およびその下位尺度である「時間的予測力」,「場の理解力」,「感情推察力」の再検査信頼性を検証する。また,「見通し力尺度」の基準関連妥当性を検証する。
方 法
調査時期と対象:1回目の調査は2014年7月,大学生1~4年生165名(男子90名,女子75名)を対象とした。2回目の調査は同年10月,大学生172名(男子92名,女子73名,性別未記名7名)に対し実施した。このうち再検査信頼性を確認するため,両調査のデータが得られた対象者は79名(男子38名,女子41名)であった。
調査内容:信頼性の検証には,一連研究⑴結果をもとに抽出された「見通し力尺度」21項目(下位尺度「時間的予測力」8項目,「場の理解力」6項目,「感情推察力」7項目)を用いた。「そうである」を4点とし,「そうではない」を1点とした4件法で回答を求めた。また,妥当性の検証には,AQ(Baron-Cohen et al. 2001,若林ら 2004)下位尺度のコミュニケーション10項目,想像力10項目を用いた。「そうである」を1点とし,「そうではない」を4点とした4件法で回答を求めた。
結 果
1.見通し力尺度の信頼性
見通し力尺度全体および下位尺度について検査・再検査間の相関係数を算出した(Table 1)。その結果,見通し力尺度全体としては.81,時間的予測力は.75,場の理解力は.67,感情推察力は.65であった。全体および各下位尺度の間に有意な正の相関がみられた。
2.見通し力尺度の妥当性
基準関連妥当性を検討するため,1回目の調査における見通し力尺度全体及び下位尺度とAQ合計(下位尺度コミュニケーション,想像力を合計したもの)との相関係数を算出した(Tabl 2)。その結果,見通し力尺度全体および下位尺度とAQ合計の間に有意な負の高い相関がみられた。
考 察
結果から見通し力尺度全体および下位尺度である時間的予測力,場の理解力,感情推察力のいずれにおいても十分な相関係数が得られた。また,見通し力尺度とAQにおいても十分な負の相関係数が得られた。すなわち,この見通し力尺度は再検査信頼性および基準関連妥当性のある尺度であるといえる。今後は,見通し力尺度とADSの指標との関係や構造についても詳細に検討する必要がある。その上で学生支援に効果的に活用していく方法を検討していく必要がある。
本研究はJSPS科学研究費(基盤研究C,25381147)の助成を受けたものです。
大学生の中には発達障害などの診断の有無にかかわらず,時間や対人関係において見通しを持って行動する力が弱く,学生生活や就職活動,その後の就業で困難を示す者がいる。一連研究⑴において,これらの学生をスクリーニングし支援する目的で見通し力尺度の作成を試み,検証を行ってきた。
本研究では一連研究⑴で明らかになった「見通し力尺度」およびその下位尺度である「時間的予測力」,「場の理解力」,「感情推察力」の再検査信頼性を検証する。また,「見通し力尺度」の基準関連妥当性を検証する。
方 法
調査時期と対象:1回目の調査は2014年7月,大学生1~4年生165名(男子90名,女子75名)を対象とした。2回目の調査は同年10月,大学生172名(男子92名,女子73名,性別未記名7名)に対し実施した。このうち再検査信頼性を確認するため,両調査のデータが得られた対象者は79名(男子38名,女子41名)であった。
調査内容:信頼性の検証には,一連研究⑴結果をもとに抽出された「見通し力尺度」21項目(下位尺度「時間的予測力」8項目,「場の理解力」6項目,「感情推察力」7項目)を用いた。「そうである」を4点とし,「そうではない」を1点とした4件法で回答を求めた。また,妥当性の検証には,AQ(Baron-Cohen et al. 2001,若林ら 2004)下位尺度のコミュニケーション10項目,想像力10項目を用いた。「そうである」を1点とし,「そうではない」を4点とした4件法で回答を求めた。
結 果
1.見通し力尺度の信頼性
見通し力尺度全体および下位尺度について検査・再検査間の相関係数を算出した(Table 1)。その結果,見通し力尺度全体としては.81,時間的予測力は.75,場の理解力は.67,感情推察力は.65であった。全体および各下位尺度の間に有意な正の相関がみられた。
2.見通し力尺度の妥当性
基準関連妥当性を検討するため,1回目の調査における見通し力尺度全体及び下位尺度とAQ合計(下位尺度コミュニケーション,想像力を合計したもの)との相関係数を算出した(Tabl 2)。その結果,見通し力尺度全体および下位尺度とAQ合計の間に有意な負の高い相関がみられた。
考 察
結果から見通し力尺度全体および下位尺度である時間的予測力,場の理解力,感情推察力のいずれにおいても十分な相関係数が得られた。また,見通し力尺度とAQにおいても十分な負の相関係数が得られた。すなわち,この見通し力尺度は再検査信頼性および基準関連妥当性のある尺度であるといえる。今後は,見通し力尺度とADSの指標との関係や構造についても詳細に検討する必要がある。その上で学生支援に効果的に活用していく方法を検討していく必要がある。
本研究はJSPS科学研究費(基盤研究C,25381147)の助成を受けたものです。