The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PG

Fri. Aug 28, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PG003] 大学生が教員に求める「義務」について

理想との比較と学生のアイデンティティとの関連

久木山健一 (九州産業大学)

Keywords:大学生, 教師学生関係, 理想と義務

▼問題と目的▼
久木山(2014)では,これまで大学の教員-学生関係の検討が授業内の関係にとどまりがちであることを指摘し,授業外での関係性についての意義を主張し,関係性の現状について検討した。今後,大学の授業外での教員-学生関係をより良いものにしていくためには,現状の把握にとどまらず,「学生側がどのような関係性を理想としているのか」という理想の関係性について知ることも有効であると考えられる。
また,授業評価制度の導入や大学の質保証への要求の高まりなどより,「教員は最低限この程度をしなければならない」,「大学教員であれば~~であらねばならない」などの義務的な視点を学生が持つことも十分考えられる。そこで本研究では,理想のみではなく義務の側面についても検討することにする。
さらに,学生が教員にイメージする理想および義務の内容は,学生の心理的状況によっても変化すると考えられる。そこで本研究ではアイデンティティを取り上げて,理想と義務との関係も検討することにする。
▼方 法▼
○質問紙:
1.学生が教員にイメージする理想および義務の内容:自由記述形式で採集した。
2.アイデンティティ尺度:日本の大学生のアイデンティティの測定を目的として作成された下山(1992)の尺度20項目を使用した(4件法)。
○調査対象:大学生252名。男性177名(1年115名,2年37名,3年11名,4年13名,その他1名),女性75名(1年60名,2年7名,3年5名,4年2名,その他1名)。
○調査時期:2014年1月
▼結果と考察▼
1.理想とする教員との関係性について
自由記述データをKJ法に類する方法で分類した。各カテゴリへの分類を重複ありで行った結果,反応数は225であった。以下,10以上の反応があったカテゴリを挙げる。まず,一番反応数が多かったのは「特になし」(50)であった。教員との関係性に明確な理想を有しておらず,現状を受け入れている学生も多く存在する可能性がある。
次に多かったのは,“授業以外の場であったときに雑談出来る”などの「交流(会話)」が38であった。以下,“気軽に話せる関係”などの「関係性(気軽さ)」が29,“せめて顔と名前を覚えてほしい”などの「個別理解」が25,“もっと親密になりたい”などの「関係性(密接)」が23と続いた。これらは,学生との一対一での密接な関係や,学問上の知識伝達などにとどまらないプライベートな関係性の形成に関わることが多いといえる。
“自分の興味のある学問について話し合えること”などの「交流(学問)」は14,“学生が話しかけやすい場を設ける”などの「公的交流」が11,
“学生が尊敬出来る教員であって欲しい”などの「尊敬」が10であった。
各カテゴリに分類された学生とそうでない学生で,アイデンティティの下位尺度得点が異なるかについてt検定を行った。その結果,「個別理解」および「公的交流」においてアイデンティティの基礎の得点に有意な差がみられた(順にt=2.53, p<.05; t=2.12, p<.05)。教員からの個別の認識を求める学生や,教員と関係を持つための公的な機会の設置を求める学生において,アイデンティティの基礎の形成に不安が高いことが示された。
2.教員に求める関係面での義務について
理想と同様の分類を行った結果,反応数は155であり,理想での反応数にくらべて義務の反応数が少なかった。以下,10以上の反応があったカテゴリを挙げる。まず,一番反応数が多かったのは,「特になし」(63)であった。義務のほうが理想よりも総反応数が少なかったにもかかわらず,特になしと答えた数が多かった。次に多かった反応は「立場の違い」が28であった。しかし,自由記述の内容は“仲が良くなっても先生と学生と言う立場がしっかりとしていること”などの,教員側ではなく学生側にとっての義務を意識した反応であることも多かった。 “しっかりと一人一人をみて欲しいです”などの「個別理解」および“学生は教員を尊敬すべきだと思うが,だからといって教員も調子に乗ってなまけて欲しくない”などの「しっかりさ」がともに11であった。
理想と同様のt検定を行った結果,「しっかりさ」においてアイデンティティの確立の得点に有意な差がみられた(t=2.12, p<.05)。このことより,教員に対して「しっかりしなければならない」という義務をイメージする学生は,アイデンティティの確立が出来ていないことが示唆された。