[PG005] キャリア・アダプタビリティがセルフ・コントロールに及ぼす影響
Keywords:キャリア・アダプタビリティ, セルフ・コントロール, 進路意思決定
【問題と目的】
キャリア・アダプタビリティは,自律的な進路意思決定を支える要因の1つとして近年注目を集めている(Savickas,2011)。とくに大学から職業社会への移行プロセスは長期にわたるため,自律的な進路選択行動を維持すべく,自己の行動を自発的にコントロールすることが求められる。
こうした自発的な自己の行動統制は,セルフ・コントロールとして研究が蓄積されてきた。セルフ・コントロールは,「習慣的な行動を新しくしてより望ましい行動へと変容」する改良型セルフ・コントロールと「ストレス場面において発生する情動的・認知的反応の制御」する調整型セルフ・コントロールとに大きく分類され,目標達成のためにはこれらを同時に駆使する重要性が指摘されてきた(cf 杉若,1995)。
本研究では,自律的な進路選択行動を行う上で,その獲得が求められるセルフ・コントロールに,キャリア・アダプタビリティが及ぼす影響を検討することを目的とする。
【方 法】
調査対象者 東海地方の大学に所属する大学生434名(男性286名,女性148名)を対象とした。平均年齢は20.98歳(SD = 1.31)であった。
調査内容 ①キャリア・アダプタビリティ尺度(杉本,2014;関心,コントロール,好奇心,自信の4下位尺度;15項目,5件法),②Redressive-Reformative Self-Control Scale(以下,RRS)(杉若,1995;改良型セルフ・コントロール,調整型セルフ・コントロール,外的要因による行動のコントロールの3下位尺度;15項目,6件法)について回答を求めた。
調査時期・手続き 2014年1月,調査協力に同意が得られた大学生に上記の内容を含んだ質問紙が配布され,後日回収した。
【結 果】
はじめに,キャリア・アダプタビリティ尺度とRRSの下位尺度ごとに信頼性係数(α係数)を算出した。その結果,キャリア・アダプタビリティ尺度(α = .73-.79),就職イメージ尺度(α = .63-.72)ともに十分な信頼性が得られたため,各下位尺度の加算平均得点を算出し,各下位尺度得点とした。
次に,説明変数をキャリア・アダプタビリティの各下位尺度,目的変数をRRSの各下位尺度とした重回帰分析を行った (Figure1)。その結果,改良型セルフ・コントロールにはキャリア・アダプタビリティのコントロールと自信から有意な正のパスが確認された。一方,調整型セルフ・コントロールには,キャリア・アダプタビリティの関心と好奇心から有意な正のパスが確認された。外的要因による行動のコントロールには関心から有意な負のパスが確認された。
【考 察】
本研究では,キャリア・アダプタビリティがセルフ・コントロールに及ぼす影響を検討した。その結果,コントロールや自信に関するキャリア・アダプタビリティが改良型セルフ・コントロールに影響を及ぼす一方,調整型セルフ・コントロールに影響を及ぼすのは関心や好奇心に関するキャリア・アダプタビリティであることが示された。大学から職業社会への移行場面では,目標達成に向けたセルフ・コントロールのみならず,情動調整を行うセルフ・コントロールも同時に駆使することが求められる。キャリア・アダプタビリティの4側面が改良型・調整型のセルフ・コントロールに異なる影響を示したことから,自律的な進路選択行動を行うためにも,キャリア・アダプタビリティを全般的に形成する必要があるだろう。
なお,キャリアへの関心の低さは外的要因による行動のコントロールを高めることも示された。外的要因によって自身の行動がコントロールされるという認識は自律的な進路選択行動を抑制し,進路の決定を困難にすると考えられる。したがって,キャリア教育・支援においてキャリアへの関心の形成は非常に重要だと考えられる。
※本研究は平成24~26年度科学研究費補助金若手B課題番号24730549の助成を受けた。
キャリア・アダプタビリティは,自律的な進路意思決定を支える要因の1つとして近年注目を集めている(Savickas,2011)。とくに大学から職業社会への移行プロセスは長期にわたるため,自律的な進路選択行動を維持すべく,自己の行動を自発的にコントロールすることが求められる。
こうした自発的な自己の行動統制は,セルフ・コントロールとして研究が蓄積されてきた。セルフ・コントロールは,「習慣的な行動を新しくしてより望ましい行動へと変容」する改良型セルフ・コントロールと「ストレス場面において発生する情動的・認知的反応の制御」する調整型セルフ・コントロールとに大きく分類され,目標達成のためにはこれらを同時に駆使する重要性が指摘されてきた(cf 杉若,1995)。
本研究では,自律的な進路選択行動を行う上で,その獲得が求められるセルフ・コントロールに,キャリア・アダプタビリティが及ぼす影響を検討することを目的とする。
【方 法】
調査対象者 東海地方の大学に所属する大学生434名(男性286名,女性148名)を対象とした。平均年齢は20.98歳(SD = 1.31)であった。
調査内容 ①キャリア・アダプタビリティ尺度(杉本,2014;関心,コントロール,好奇心,自信の4下位尺度;15項目,5件法),②Redressive-Reformative Self-Control Scale(以下,RRS)(杉若,1995;改良型セルフ・コントロール,調整型セルフ・コントロール,外的要因による行動のコントロールの3下位尺度;15項目,6件法)について回答を求めた。
調査時期・手続き 2014年1月,調査協力に同意が得られた大学生に上記の内容を含んだ質問紙が配布され,後日回収した。
【結 果】
はじめに,キャリア・アダプタビリティ尺度とRRSの下位尺度ごとに信頼性係数(α係数)を算出した。その結果,キャリア・アダプタビリティ尺度(α = .73-.79),就職イメージ尺度(α = .63-.72)ともに十分な信頼性が得られたため,各下位尺度の加算平均得点を算出し,各下位尺度得点とした。
次に,説明変数をキャリア・アダプタビリティの各下位尺度,目的変数をRRSの各下位尺度とした重回帰分析を行った (Figure1)。その結果,改良型セルフ・コントロールにはキャリア・アダプタビリティのコントロールと自信から有意な正のパスが確認された。一方,調整型セルフ・コントロールには,キャリア・アダプタビリティの関心と好奇心から有意な正のパスが確認された。外的要因による行動のコントロールには関心から有意な負のパスが確認された。
【考 察】
本研究では,キャリア・アダプタビリティがセルフ・コントロールに及ぼす影響を検討した。その結果,コントロールや自信に関するキャリア・アダプタビリティが改良型セルフ・コントロールに影響を及ぼす一方,調整型セルフ・コントロールに影響を及ぼすのは関心や好奇心に関するキャリア・アダプタビリティであることが示された。大学から職業社会への移行場面では,目標達成に向けたセルフ・コントロールのみならず,情動調整を行うセルフ・コントロールも同時に駆使することが求められる。キャリア・アダプタビリティの4側面が改良型・調整型のセルフ・コントロールに異なる影響を示したことから,自律的な進路選択行動を行うためにも,キャリア・アダプタビリティを全般的に形成する必要があるだろう。
なお,キャリアへの関心の低さは外的要因による行動のコントロールを高めることも示された。外的要因によって自身の行動がコントロールされるという認識は自律的な進路選択行動を抑制し,進路の決定を困難にすると考えられる。したがって,キャリア教育・支援においてキャリアへの関心の形成は非常に重要だと考えられる。
※本研究は平成24~26年度科学研究費補助金若手B課題番号24730549の助成を受けた。