[PG006] 発達障害傾向のある子どもに対する通常学級担任の関わり
キーワード:不登校, 心理的・行動的アプローチ, 保護者連携
問題と目的
対人関係のトラブル,不注意,多動性,読み書き困難等の発達障害の傾向を持つ子どもたちが全国的に増えている。このような子どもは,公立小学校全体の7.7%で通常学級1クラスに2~3人在籍し(文部科学省,2012),教師のストレスや該当する子どもの不登校につながることが指摘されている(土岐,2010)。また,そのような特徴に周囲が気づかない場合,トラブルが多発し,注意されたことを繰り返す問題のある子どもという形での対応になり,子どもの自己肯定感の低下,問題行動の悪化が懸念される。だが,その対応は従来の指導の枠組みと相違しており教師もその対応に苦慮している。また,子ども一人ひとりの状況により困難場面は異なっており,担任や関係教師はどのような対応をしたらよいのか,日々試行錯誤をしている現状がある。そのため,発達障害傾向を持つ子どもへの教師の対応は,教育現場での喫緊の課題となっている。
そこで,本研究では,発達障害傾向のある子どもへの通常学級担任の関わりについて検討することを目的とし,有効な支援への手がかりとする。
方 法
公立小学校の通常学級担任20名に対し,発達障害傾向のある子どもへの関わりについて年度末に,インタビュー調査を実施した。本研究では,STEP1として,3名の教師の語りを分析する。分析方法は,質的研究法の1つであるグラウンデッド・セオリー・アプローチを使用した。
結果と考察
10のカテゴリーが創出された。カテゴリーは幾つかの下位概念から構成されている。以下,カテゴリーを【】,概念を<>で表記する。
【現状把握】<状況把握><困難感>から成り,子どもの現状を苦手なことなどを中心とする,学習や生活を含めた具体的な内容の把握がされていた。課題が明確である一方で,年間を通した指導方針への見通しの立ち難さが,困難感として語られた。
【個別支援】<苦手感の軽減>のために今できることへの取り組みや,<意欲の維持>のための声掛け,苦手分野に関する<隙間時間の学習指導>,机間巡視による<授業中の個別指導>や,学習の遅れが目立つ子どもへの宿題の<個別の課題設定>などの対応がみられた。
【本人理解】<子どもの心情の理解>や,<家庭環境を含めた理解>がみられた。また,様々な場面における子どもへの承認が行われていた。子どもが既にできていることや,できるようになったことは個人内成長として把握し,また,意欲や頑張り等行動として見えにくい内面も評価していた。
【気にかけていたこと】本人の自己肯定感が下がらないために<周囲の子どもに対する本人への声かけ>に気を配ったり,学級作りの中での<居場所感の確保>も大切にしていた。また,<学習意欲を低下させない>ための学習指導の工夫,<自己肯定感の向上>を目指した本人への声掛けや学級での対応,それに関連して本人が<できることを増やす>等の内容が語られた。
【特性理解】<行動理解>に関し,集団行動に適さない場面では,きちんとした指導をしながらも本人の特性に基づいた内面的理解が行われていた。どうしてもうまくいかない場面では厳しく指導して頑張らせるのではなく,ある程度の<失敗の承認>がなされていた。また,特性理解による<行動予測>が行われており,特に苦手な場面を把握し,事前に対応していた。
【特性に合わせた配慮】無理に学級の枠組みに子どもを合わせるのではなく,<できることを中心に取り組ませる>ことや,<思いこみの修正>を行いながら学習意欲を向上させていた。また,<友だち関係の配慮>では,座席のマッチングやグループ分けにも気を配っていた。また,子どもの自発性や意欲を大切にする<自立・意欲への配慮>,個別の配慮が必要になるに従い,周囲の子どもたちへの配慮も細やかになされていた(<個別対応に伴う周囲の子ども達への配慮>)。
その他,変化があった場合の【要因の分析】や【自身の省察】【保護者との関わり】等が語られた。
総合考察
通常学級担任は,日々学級全体を教授・指導していかなければならず,個別指導は時間的にも非常に難しい現状がある。その中で,子どもの気質や特性,課題ができるようになるための仕掛けや声掛け,学級の中での居場所や友だち関係の考慮,今後の方向性を見据えた様々な工夫がなされていた。今後は,特性タイプ別の支援方略と関わりについて包括的に分析し,実践に活かせるより有効な支援方略を提示していく必要があるだろう。
キーワード:発達障害傾向,通常学級担任,関わり
対人関係のトラブル,不注意,多動性,読み書き困難等の発達障害の傾向を持つ子どもたちが全国的に増えている。このような子どもは,公立小学校全体の7.7%で通常学級1クラスに2~3人在籍し(文部科学省,2012),教師のストレスや該当する子どもの不登校につながることが指摘されている(土岐,2010)。また,そのような特徴に周囲が気づかない場合,トラブルが多発し,注意されたことを繰り返す問題のある子どもという形での対応になり,子どもの自己肯定感の低下,問題行動の悪化が懸念される。だが,その対応は従来の指導の枠組みと相違しており教師もその対応に苦慮している。また,子ども一人ひとりの状況により困難場面は異なっており,担任や関係教師はどのような対応をしたらよいのか,日々試行錯誤をしている現状がある。そのため,発達障害傾向を持つ子どもへの教師の対応は,教育現場での喫緊の課題となっている。
そこで,本研究では,発達障害傾向のある子どもへの通常学級担任の関わりについて検討することを目的とし,有効な支援への手がかりとする。
方 法
公立小学校の通常学級担任20名に対し,発達障害傾向のある子どもへの関わりについて年度末に,インタビュー調査を実施した。本研究では,STEP1として,3名の教師の語りを分析する。分析方法は,質的研究法の1つであるグラウンデッド・セオリー・アプローチを使用した。
結果と考察
10のカテゴリーが創出された。カテゴリーは幾つかの下位概念から構成されている。以下,カテゴリーを【】,概念を<>で表記する。
【現状把握】<状況把握><困難感>から成り,子どもの現状を苦手なことなどを中心とする,学習や生活を含めた具体的な内容の把握がされていた。課題が明確である一方で,年間を通した指導方針への見通しの立ち難さが,困難感として語られた。
【個別支援】<苦手感の軽減>のために今できることへの取り組みや,<意欲の維持>のための声掛け,苦手分野に関する<隙間時間の学習指導>,机間巡視による<授業中の個別指導>や,学習の遅れが目立つ子どもへの宿題の<個別の課題設定>などの対応がみられた。
【本人理解】<子どもの心情の理解>や,<家庭環境を含めた理解>がみられた。また,様々な場面における子どもへの承認が行われていた。子どもが既にできていることや,できるようになったことは個人内成長として把握し,また,意欲や頑張り等行動として見えにくい内面も評価していた。
【気にかけていたこと】本人の自己肯定感が下がらないために<周囲の子どもに対する本人への声かけ>に気を配ったり,学級作りの中での<居場所感の確保>も大切にしていた。また,<学習意欲を低下させない>ための学習指導の工夫,<自己肯定感の向上>を目指した本人への声掛けや学級での対応,それに関連して本人が<できることを増やす>等の内容が語られた。
【特性理解】<行動理解>に関し,集団行動に適さない場面では,きちんとした指導をしながらも本人の特性に基づいた内面的理解が行われていた。どうしてもうまくいかない場面では厳しく指導して頑張らせるのではなく,ある程度の<失敗の承認>がなされていた。また,特性理解による<行動予測>が行われており,特に苦手な場面を把握し,事前に対応していた。
【特性に合わせた配慮】無理に学級の枠組みに子どもを合わせるのではなく,<できることを中心に取り組ませる>ことや,<思いこみの修正>を行いながら学習意欲を向上させていた。また,<友だち関係の配慮>では,座席のマッチングやグループ分けにも気を配っていた。また,子どもの自発性や意欲を大切にする<自立・意欲への配慮>,個別の配慮が必要になるに従い,周囲の子どもたちへの配慮も細やかになされていた(<個別対応に伴う周囲の子ども達への配慮>)。
その他,変化があった場合の【要因の分析】や【自身の省察】【保護者との関わり】等が語られた。
総合考察
通常学級担任は,日々学級全体を教授・指導していかなければならず,個別指導は時間的にも非常に難しい現状がある。その中で,子どもの気質や特性,課題ができるようになるための仕掛けや声掛け,学級の中での居場所や友だち関係の考慮,今後の方向性を見据えた様々な工夫がなされていた。今後は,特性タイプ別の支援方略と関わりについて包括的に分析し,実践に活かせるより有効な支援方略を提示していく必要があるだろう。
キーワード:発達障害傾向,通常学級担任,関わり