The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PG

Fri. Aug 28, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PG008] 中学生の学校適応感と学校行事の関連

3年間の縦断調査から

尾藤ヨシ子1, 伊藤義美2 (1.名古屋大学大学院, 2.名古屋大学大学院)

Keywords:学校適応感, 学校環境, 学校行事

問題と目的
思春期の子どもの不登校やいじめなど,学校適応に関する諸問題が社会的にも注目されている。学校適応感は,個人の行動と環境との相互作用によって生じるものであり(大対ら,2007),個人-環境の適合性の視点から,各学校の特徴を踏まえた上で研究を進めていく必要性が指摘されている(大久保,2005)。そこで,学校環境の異なる2つの中学校を対象に,学校適応感と学校行事との関連を見ることにした。具体的には3年間の縦断調査を実施し,性別に学年間の変化および学校間の共通点と差異について検討することを研究の目的とした。
方 法
1.調査参加者
C県内の2つの中学校,生徒指導件数の少ないA校と,比較的多いB校に在籍する1~3年生を対象にX年(T1),X+1年(T2),X+2年(T3)の3時点で,学年末の2月~3月に調査を実施した。参加者はT1=1050名, T2=867名, T3=1055名であった。各時点の調査で回答に不備のなかったT1=979名, T2=812名, T3=986名を横断分析に用いた。縦断分析では3時点とも調査に参加し,回答に不備のなかった270名(男子121名,女子149名)を分析対象とした。さらにコホート分析ではT1=351名, T2=336名, T3=328名を分析対象とした。
2.質問紙
・6領域学校適応感尺度(ASSESS)(栗原・井上,2010)。6因子×5項目+crit項4項目の計34項目,5件法。
・体育祭・合唱コンクールへの取り組み尺度。2因子×5項目の計10項目,5件法。
結果と考察
結果
まず横断分析でT1~T3それぞれについて各尺度の基本統計量と,学校差・学年差・性差を検討した。学校⑵×学年⑶×性別⑵の3要因分散分析(被験者間要因)を行った後,各尺度間のピアソンの相関係数を算出した。T1ではほぼA校>B校であったが,T3では体育祭を除いて差がなかった。学年では2年生が低かった。性差は友人サポート,向社会的スキル,体育祭,合唱が女子>男子で,学習は男子>女子であった。相関は行事VS学習・非侵害で低かった。
次に縦断分析で学校⑵×性別⑵×調査時期⑶の3要因分散分析(被験者内要因)と相関係数の算出を行った(Figure1,2,Table1)。また縦断分析では欠席なく登校している生徒に絞られた可能性があるため,分析対象を広げてコホートによる分析をあわせて行った。友人サポートと行事で学校差(A校>B校)が見られた。性差は横断分析と同様の結果に加えて,生活満足感が男子>女子だった。学年×学校の交互作用が6尺度で見られ,A校ではほぼ1・3年>2年であり,B校では3年>1・2年だった。3年生では両校の差はほぼ見られなかった。尺度間の相関はA校では3年>1年>2年の順に高く,非侵害的関係と学習,行事で正の相関が見られた。B校では3年>2年>1年の順で,非侵害的関係と学習,行事で負の相関が見られた。学習は他の尺度との相関がやや低かった。
考察
学校適応感の2年生での低下は,他者からの働きかけを受け付ける心の余裕がなくなる思春期危機の影響が考えられる。3年生では学校差,性差とも見られず,充実した学校生活が窺える。学校適応感と学校行事との関連については,A校では2年生でやや低下するが,3年間を通じて高い相関を示しており,行事に熱心に取り組む姿勢と一致している。一方B校では3年生になると高い相関を示すという結果であった。1,2年男子の学校行事へのモチベーションをあげる効果的な取り組みが今後の課題となる。