[PG010] シークレットフレンドゲームを活用した学級づくりの効果
Q-Uテストに表れる変容に注目して
キーワード:学級経営, 良いところ探し
問題と目的
他者からの肯定的評価は,自己の個性,価値の再認識や受容を促す。学級内の子どもも,教師や級友から認められることで自尊心を高め,学級における自己存在感を実感し,適応感を形成していくと思われる。その効果を期待し,多くの教育実践の現場では,「良いところ探し」といわれる級友相互の肯定的認知を促す集団活動が導入されている。このような実践による学級づくりの効果は,経験的には語られているが(ex.國分,2004),今後客観的な検証の手続きを経ることで,学級経営における有効な指導法として確立される可能性が高まる。そこで,本研究では,「良いところ探し」への動機付けを高めるために遊びの要素を取り入れた「シークレットフレンドゲーム」活動(以下SFG)によって生じる心理的効果を測定する。藤田・久保田(2012)は,小学6年の児童を対象に,SFG活動の前後でQ-Uテストによる効果測定を行い,受容・尊重されている感覚(承認得点)や対人的スキル(配慮,関わり)が上昇すること,ドット法による測定によって級友との心理的距離が近くなることを確かめた。本研究では,SFG活動中の児童に,他者評価の観点を提示したり,動機付けのための教示を個々の児童に与え,さらに「良いところ探し」の効果を高めるための介入について検討することを目的とする。
方 法
1.研究対象 小学4年生2学級(50名)
2.実験的介入 各学級別にSFGを実施し,その前後に生じた変化を測定する。SFGとは,「秘密の友達(SF)」として割り当てられた相手の良い点を,学校生活の中で,その相手に気づかれないように観察・記録しながら一定期間を過ごし,終了後にその良い点をSFに伝えるというゲームである。これは,一般的な「良いところ探し」活動とは異なり,日常の学校生活を通して「良いところを探そう」という意図をもってSFに注目し,実際のエピソードの中で,相手の良さを評価・理解しようとするものであり,肯定的な対人態度形成に有効だと考えられる。また,個々の児童のSFG中の他者評価を方向付け,動機付けるために,SFの良いところを記録した児童のノートを1日の活動の終わりに回収し,実験者がコメントを付したものを翌朝返却するという介入を行う。
3.手続き ①hyper-QUを用いて,学校生活意欲,学級満足度,ソーシャルスキルを,SFG実施の前後に測定した。②SFGは,初日にルール説明を行い,その後,良いところ探しを5日間継続,最終日にSFに対する気づいた「良いところ」を相手に開示するという手順で実施した。
結果と考察
1.hyper-QU 下位尺度別の平均点を算出し,SFG導入前後で比較した(Figure1)。導入前に比べて導入後は,承認得点と対人的なかかわりのスキル得点が上昇し,被侵害得点が減少するという傾向があることが確かめられた。また,承認-被侵害の得点パターンから推測される学級満足タイプの人数は,導入前後において,学級生活満足群が21→29名,非承認群が12→5名,侵害行為認知群が7→8名,学級生活不満群が10→6名,要支援群が2→2となった。SFGの経験により,対人関係行動の変容が生じ,児童相互の受容的な関係の形成が起きたことが推測できる。
2.記録ノート
各児童の記録ノートの記述から,SFに対する評価の変容を推定した。Table1にI児の記録を示したが,この例のように多くの児童にSFの良さに関する記述量の増加が生じた。記述内容も能力的な特徴から努力や内面的な特徴への変容が見られた。このような認識の変化には,実験者からの「問い」を通した気づきの促進や,「励まし」や「ほめる」ことによる動機付けが影響していると考えられる。
他者からの肯定的評価は,自己の個性,価値の再認識や受容を促す。学級内の子どもも,教師や級友から認められることで自尊心を高め,学級における自己存在感を実感し,適応感を形成していくと思われる。その効果を期待し,多くの教育実践の現場では,「良いところ探し」といわれる級友相互の肯定的認知を促す集団活動が導入されている。このような実践による学級づくりの効果は,経験的には語られているが(ex.國分,2004),今後客観的な検証の手続きを経ることで,学級経営における有効な指導法として確立される可能性が高まる。そこで,本研究では,「良いところ探し」への動機付けを高めるために遊びの要素を取り入れた「シークレットフレンドゲーム」活動(以下SFG)によって生じる心理的効果を測定する。藤田・久保田(2012)は,小学6年の児童を対象に,SFG活動の前後でQ-Uテストによる効果測定を行い,受容・尊重されている感覚(承認得点)や対人的スキル(配慮,関わり)が上昇すること,ドット法による測定によって級友との心理的距離が近くなることを確かめた。本研究では,SFG活動中の児童に,他者評価の観点を提示したり,動機付けのための教示を個々の児童に与え,さらに「良いところ探し」の効果を高めるための介入について検討することを目的とする。
方 法
1.研究対象 小学4年生2学級(50名)
2.実験的介入 各学級別にSFGを実施し,その前後に生じた変化を測定する。SFGとは,「秘密の友達(SF)」として割り当てられた相手の良い点を,学校生活の中で,その相手に気づかれないように観察・記録しながら一定期間を過ごし,終了後にその良い点をSFに伝えるというゲームである。これは,一般的な「良いところ探し」活動とは異なり,日常の学校生活を通して「良いところを探そう」という意図をもってSFに注目し,実際のエピソードの中で,相手の良さを評価・理解しようとするものであり,肯定的な対人態度形成に有効だと考えられる。また,個々の児童のSFG中の他者評価を方向付け,動機付けるために,SFの良いところを記録した児童のノートを1日の活動の終わりに回収し,実験者がコメントを付したものを翌朝返却するという介入を行う。
3.手続き ①hyper-QUを用いて,学校生活意欲,学級満足度,ソーシャルスキルを,SFG実施の前後に測定した。②SFGは,初日にルール説明を行い,その後,良いところ探しを5日間継続,最終日にSFに対する気づいた「良いところ」を相手に開示するという手順で実施した。
結果と考察
1.hyper-QU 下位尺度別の平均点を算出し,SFG導入前後で比較した(Figure1)。導入前に比べて導入後は,承認得点と対人的なかかわりのスキル得点が上昇し,被侵害得点が減少するという傾向があることが確かめられた。また,承認-被侵害の得点パターンから推測される学級満足タイプの人数は,導入前後において,学級生活満足群が21→29名,非承認群が12→5名,侵害行為認知群が7→8名,学級生活不満群が10→6名,要支援群が2→2となった。SFGの経験により,対人関係行動の変容が生じ,児童相互の受容的な関係の形成が起きたことが推測できる。
2.記録ノート
各児童の記録ノートの記述から,SFに対する評価の変容を推定した。Table1にI児の記録を示したが,この例のように多くの児童にSFの良さに関する記述量の増加が生じた。記述内容も能力的な特徴から努力や内面的な特徴への変容が見られた。このような認識の変化には,実験者からの「問い」を通した気づきの促進や,「励まし」や「ほめる」ことによる動機付けが影響していると考えられる。