[PG019] 教師は宿題としてどのような課題を出すか
教職に関心のある大学生の自由記述から得られる示唆
キーワード:宿題, 家庭学習, 自由記述
問題と目的
子どもの学力向上を考える上で,学校の授業はもちろんのこと,家庭での学び方や生活の仕方についても切り離すことはできない(田中, 2008)。教師が子どもに対して,家庭でも効果的な学習を行なえるようサポートするためには,宿題が一つのツールとして有効だろう。
従来の宿題研究では,教師が宿題の目的をどうとらえているかに着目した研究は複数行なわれており(e.g., Van Voorhis, 2004),教育的な目的としては大きく「知識・技能の習得」と「学習態度・スキルの獲得」の二つに分けられることが示されている(Coutts, 2004)。しかし,こうした目的のもとで,教師が具体的にどのような課題を出すのかという点まで踏み込んだ研究は少ない。
一方,テスト期待効果の知見(e.g., 村山, 2003)に代表されるように,課題の種類(i.e., 空所補充型や記述式など)が,子どもの学習行動や信念に影響を与えることが知られている。このことを踏まえれば,教師が宿題としてどのような課題を出すかによって,子どもの学習方略や学習観の一部が規定される可能性が示唆される。
そこで本研究では,日常的に出されている宿題の影響を調べるための前段階として,教師は宿題としてどのような課題を出すのかについて,自由記述課題を用いて検討する。今回は予備調査として,教職に関心のある大学生を対象として実施した。
方 法
研究協力者 教職に関心のある都内大学生12名。
質問紙 以下に記す二種類の課題を実施した。
1.教師になったつもりで宿題を考える課題
東京書籍「新しい数学1」pp.50~53(文字の使用)を見ながら,当該箇所の授業のあとに自分だったらどのような宿題を出すかについて,目的・具体的な課題・評価方法の三点を満たすように記述してもらった。
2.宿題に対するイメージを問う課題
宿題に対する一般的なイメージを尋ねるため,「あなたは『宿題』と聞いたとき,一般にどのようなものをイメージしますか。思い浮かんだことを自由に記述して下さい」と教示して回答を求めた。
分析 宿題の目的,具体的な課題,評価方法,宿題に対するイメージのそれぞれについて,KJ法に基づき分類を行なった。
結 果
宿題の目的 宿題の目的に該当する記述は25件見られた。記述の分類は,多い順に「日常と関連づけた文字の利用(8件)」,「授業内容の定着・記憶(5件)」,「計算手続きの反復練習(4件)」,「学習習慣作り(3件)」,「理解状況の確認(2件)」,「その他(2件)」,「概念的理解の促進(1件)」であった。
課題の内容 課題の内容に該当する記述は23件見られた。記述の分類は,多い順に「同型問題の反復練習(8件)」,「具体的な問題数や分量(5件)」,「日常と関連づけた文字式の作成(4件)」,「要点への焦点化(2件)」,「誤答分析(2件)」,「応用問題(1件)」,「その他(1件)」であった。
評価方法 評価方法に該当する記述は13件見られた。記述の分類は,多い順に「遂行の有無(3件)」,「正答率(3件)」,「取り組んだ量(2件)」,「日常との関連づけ(2件)」,「思考過程(2件)」,「分からない問題への対処(1件)」であった。
宿題のイメージ 宿題のイメージに該当する記述は20件見られた。記述の分類は,多い順に「強制・義務(12件)」,「有効性の認知低(5件)」,「有効性の認知高(2件)」,「自発(1件)」であった。
考 察
自由記述の結果から,宿題の目的としては,日常との関連づけや学習習慣の形成,理解状態の確認など多様な発想が行なわれている一方,実際に出す課題としては,同型問題の反復練習や量的側面に着目した記述が大半を占めることが明らかになった。また,宿題の評価方法についても,遂行の有無や正答率など,量的な観点から評価するという意見が過半数を占めた。このことから,教師が宿題の目的をどうとらえているかとは別に,宿題ではある程度の量のドリル練習を行なうものだというような,ある種の宿題観のようなものが存在することが示唆される。
宿題に対するイメージを尋ねた自由記述の結果から,宿題とは他人からやらされるものであり,その有効性が見えにくいというイメージが浮かび上がってきた。このようなイメージが実践に対してもたらす影響についても,今後検討の余地があるだろう。
子どもの学力向上を考える上で,学校の授業はもちろんのこと,家庭での学び方や生活の仕方についても切り離すことはできない(田中, 2008)。教師が子どもに対して,家庭でも効果的な学習を行なえるようサポートするためには,宿題が一つのツールとして有効だろう。
従来の宿題研究では,教師が宿題の目的をどうとらえているかに着目した研究は複数行なわれており(e.g., Van Voorhis, 2004),教育的な目的としては大きく「知識・技能の習得」と「学習態度・スキルの獲得」の二つに分けられることが示されている(Coutts, 2004)。しかし,こうした目的のもとで,教師が具体的にどのような課題を出すのかという点まで踏み込んだ研究は少ない。
一方,テスト期待効果の知見(e.g., 村山, 2003)に代表されるように,課題の種類(i.e., 空所補充型や記述式など)が,子どもの学習行動や信念に影響を与えることが知られている。このことを踏まえれば,教師が宿題としてどのような課題を出すかによって,子どもの学習方略や学習観の一部が規定される可能性が示唆される。
そこで本研究では,日常的に出されている宿題の影響を調べるための前段階として,教師は宿題としてどのような課題を出すのかについて,自由記述課題を用いて検討する。今回は予備調査として,教職に関心のある大学生を対象として実施した。
方 法
研究協力者 教職に関心のある都内大学生12名。
質問紙 以下に記す二種類の課題を実施した。
1.教師になったつもりで宿題を考える課題
東京書籍「新しい数学1」pp.50~53(文字の使用)を見ながら,当該箇所の授業のあとに自分だったらどのような宿題を出すかについて,目的・具体的な課題・評価方法の三点を満たすように記述してもらった。
2.宿題に対するイメージを問う課題
宿題に対する一般的なイメージを尋ねるため,「あなたは『宿題』と聞いたとき,一般にどのようなものをイメージしますか。思い浮かんだことを自由に記述して下さい」と教示して回答を求めた。
分析 宿題の目的,具体的な課題,評価方法,宿題に対するイメージのそれぞれについて,KJ法に基づき分類を行なった。
結 果
宿題の目的 宿題の目的に該当する記述は25件見られた。記述の分類は,多い順に「日常と関連づけた文字の利用(8件)」,「授業内容の定着・記憶(5件)」,「計算手続きの反復練習(4件)」,「学習習慣作り(3件)」,「理解状況の確認(2件)」,「その他(2件)」,「概念的理解の促進(1件)」であった。
課題の内容 課題の内容に該当する記述は23件見られた。記述の分類は,多い順に「同型問題の反復練習(8件)」,「具体的な問題数や分量(5件)」,「日常と関連づけた文字式の作成(4件)」,「要点への焦点化(2件)」,「誤答分析(2件)」,「応用問題(1件)」,「その他(1件)」であった。
評価方法 評価方法に該当する記述は13件見られた。記述の分類は,多い順に「遂行の有無(3件)」,「正答率(3件)」,「取り組んだ量(2件)」,「日常との関連づけ(2件)」,「思考過程(2件)」,「分からない問題への対処(1件)」であった。
宿題のイメージ 宿題のイメージに該当する記述は20件見られた。記述の分類は,多い順に「強制・義務(12件)」,「有効性の認知低(5件)」,「有効性の認知高(2件)」,「自発(1件)」であった。
考 察
自由記述の結果から,宿題の目的としては,日常との関連づけや学習習慣の形成,理解状態の確認など多様な発想が行なわれている一方,実際に出す課題としては,同型問題の反復練習や量的側面に着目した記述が大半を占めることが明らかになった。また,宿題の評価方法についても,遂行の有無や正答率など,量的な観点から評価するという意見が過半数を占めた。このことから,教師が宿題の目的をどうとらえているかとは別に,宿題ではある程度の量のドリル練習を行なうものだというような,ある種の宿題観のようなものが存在することが示唆される。
宿題に対するイメージを尋ねた自由記述の結果から,宿題とは他人からやらされるものであり,その有効性が見えにくいというイメージが浮かび上がってきた。このようなイメージが実践に対してもたらす影響についても,今後検討の余地があるだろう。