[PG022] 中学校の数学授業での協同過程における個人の数学的な説明構築が理解に及ぼす効果
事象の数理的な考察に焦点を当てて
キーワード:協同過程, 数学, 説明構築
【問題と目的】
数学授業での協同過程を通じた個人の理解の深まりについて,小田切(2013)では,高校生を対象とし,回転運動に関する課題の解法の構造化を集団的に行う中で,三角関数を用いた複数の解法の関連についての個人の説明構築が促進され,それが個人の理解の深まりにつながることが示された。さらに,三角関数という抽象的な学習内容についての個人の理解が深まるためには,回転運動という日常的な事象の変化に関する課題であっても,説明の根拠として数学的な知識を用いる必要性が示唆された。そこで本研究では,高校数学に比べ,日常的な知識との関連がわかりやすい具体的な学習内容を扱う中学校の数学授業での協同過程において,個人の数学的な説明構築が促進されることで,個人の理解が深まるかを検討した。特に事象の数理的な考察においては,高校生においても変化率一定を前提としがちであることが指摘されている(小田切, 2012)。よって中学校の数学授業で,1次関数的変化の事象の考察において,複数解法の比較を行う中で,1次関数的変化とみなす数学的な根拠への着目を促す協同過程を設けることで,事象の数理的な考察についての個人の理解が深まるのではないかと考えた。
【方 法】
対象 中学2年生2クラス(実験群30名,統制群30名)。
課題および手続き 1次関数的変化の事象についての課題を作成し,教科書の「1次関数の利用」の学習後に, 事前課題,授業,事後課題の順に実施した。事前・事後課題は個人で取り組んだ。
(1)事前課題:水を熱した時の2分ごとの時間xと水温yのデータ(10分まで)と,対応する点をプロットしたグラフを提示し,17分後の水温を予測させた後,続きのデータ(20分まで)を提示し,火の強さをどう変えたのかを尋ねた。グラフまたは数値計算を用いて,全てのデータを考慮して変化率が一定であることを説明しているかによって,事象の数理的な考察についての理解をみた。
(2)授業:事前課題を用い,解法の比較検討を,実験群はクラス単位の協同過程で,統制群は教師による解説で行った。授業中は気付いたことや考えたことをワークシートに書き込むよう指示した。
(3)事後課題:事前課題の類題を設定した。
【結果と考察】
まず協同過程を通じて事象の数理的な考察についての理解が促進されたかを検討するため,2群の2課題における変化率一定に関する説明の有無の比率を,Fisherの直接確率計算法(両側検定)により比較した(Table 1)。比率の差は事前では有意ではなかったことから,2群は等質であったと言える。一方,事後では有意であり(p<.05),実験群で説明が多かった。次に,協同過程における個人の数学的な説明構築を検討した。ワークシートに変化率一定という観点から解法間の関連を説明している場合,個人が数学的な説明を構築したと判断した。そして2群のワークシート上の数学的な説明構築の有無の比率を同様に比較した(Table 2)。比率の差は有意であり(p<.05),実験群で数学的な説明構築が多かった。さらに実験群について,ワークシート上の数学的な説明構築と,事後課題での変化率一定に関する説明の有無との関連を検討した(Table 3)結果,有意な関連がみられた(Cramerの連関係数V=.870, p<.001)。
以上より,協同過程において,複数の解法を変化率一定という数学的な観点から関連づける個人の説明構築が促進され,それが事象の数理的考察についての個人の理解につながることが示された。
数学授業での協同過程を通じた個人の理解の深まりについて,小田切(2013)では,高校生を対象とし,回転運動に関する課題の解法の構造化を集団的に行う中で,三角関数を用いた複数の解法の関連についての個人の説明構築が促進され,それが個人の理解の深まりにつながることが示された。さらに,三角関数という抽象的な学習内容についての個人の理解が深まるためには,回転運動という日常的な事象の変化に関する課題であっても,説明の根拠として数学的な知識を用いる必要性が示唆された。そこで本研究では,高校数学に比べ,日常的な知識との関連がわかりやすい具体的な学習内容を扱う中学校の数学授業での協同過程において,個人の数学的な説明構築が促進されることで,個人の理解が深まるかを検討した。特に事象の数理的な考察においては,高校生においても変化率一定を前提としがちであることが指摘されている(小田切, 2012)。よって中学校の数学授業で,1次関数的変化の事象の考察において,複数解法の比較を行う中で,1次関数的変化とみなす数学的な根拠への着目を促す協同過程を設けることで,事象の数理的な考察についての個人の理解が深まるのではないかと考えた。
【方 法】
対象 中学2年生2クラス(実験群30名,統制群30名)。
課題および手続き 1次関数的変化の事象についての課題を作成し,教科書の「1次関数の利用」の学習後に, 事前課題,授業,事後課題の順に実施した。事前・事後課題は個人で取り組んだ。
(1)事前課題:水を熱した時の2分ごとの時間xと水温yのデータ(10分まで)と,対応する点をプロットしたグラフを提示し,17分後の水温を予測させた後,続きのデータ(20分まで)を提示し,火の強さをどう変えたのかを尋ねた。グラフまたは数値計算を用いて,全てのデータを考慮して変化率が一定であることを説明しているかによって,事象の数理的な考察についての理解をみた。
(2)授業:事前課題を用い,解法の比較検討を,実験群はクラス単位の協同過程で,統制群は教師による解説で行った。授業中は気付いたことや考えたことをワークシートに書き込むよう指示した。
(3)事後課題:事前課題の類題を設定した。
【結果と考察】
まず協同過程を通じて事象の数理的な考察についての理解が促進されたかを検討するため,2群の2課題における変化率一定に関する説明の有無の比率を,Fisherの直接確率計算法(両側検定)により比較した(Table 1)。比率の差は事前では有意ではなかったことから,2群は等質であったと言える。一方,事後では有意であり(p<.05),実験群で説明が多かった。次に,協同過程における個人の数学的な説明構築を検討した。ワークシートに変化率一定という観点から解法間の関連を説明している場合,個人が数学的な説明を構築したと判断した。そして2群のワークシート上の数学的な説明構築の有無の比率を同様に比較した(Table 2)。比率の差は有意であり(p<.05),実験群で数学的な説明構築が多かった。さらに実験群について,ワークシート上の数学的な説明構築と,事後課題での変化率一定に関する説明の有無との関連を検討した(Table 3)結果,有意な関連がみられた(Cramerの連関係数V=.870, p<.001)。
以上より,協同過程において,複数の解法を変化率一定という数学的な観点から関連づける個人の説明構築が促進され,それが事象の数理的考察についての個人の理解につながることが示された。