日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PG

2015年8月28日(金) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PG033] 保育指導計画の理解を促す授業実践の試み

保育内容「言葉」における実践演習

橋村晴美1, 塚本恵信2 (1.中部学院大学, 2.椙山女学園大学)

キーワード:保育者養成, 保育指導計画, 授業実践

問題・目的
保育者養成課程の部分実習や責任実習において,学生が指導計画を立案できないといった問題がしばしば指摘される。年児の発達段階や移行過程を踏まえて子どもの行動を捉える観点が不十分で,幼児の学びや育ちを保育の「ねらい」「内容」に適切に結びつけられないところに問題があると思われる。
本研究では,手作り紙芝居の実践演習を通して保育指導計画の理解を促し,立案の技能を育成する授業実践について検討する。
方 法
対象 T大学2年生72名を対象に,『保育内容演習:言葉』(2014年度前期)で実施。
授業構成 手作り紙芝居の指導計画立案,教材作成,実演を課題とする演習を計画し,グループ活動による3段階の展開を構成した。
1)基礎学習 学生を4~5名のグループに編成し対象年児を選択させた。まず『幼稚園教育要領解説』(文科省,2008)及び『保育所保育指針解説書』(厚労省,2008)を用いて,対象年児の発達段階をグループ学習させた。次に「月間指導計画」の事例を用いて,対象年児の年間の発達過程を学習させた。
2)事例検討 月間指導計画における「子どもの姿」の事例を提示し,まず“現在の育ち”と“次に期待される育ち”をグループで考察させた。その上で,事例に関する「ねらい」と「内容」を仮想的に立案させた。
3)実践演習 各グループが想定した対象年児及び実施月における対象児の発達状態を踏まえた「ねらい」と,手作り紙芝居の題材に反映させる「内容」を検討させ,指導計画を立案させた。これをもとに,活動教材となる手作り紙芝居を考案・作成させ,準備練習を経て,授業内で実演させた。
結 果
15グループが編成され,3~5歳児の5~2月を対象とする手作り紙芝居の指導計画が立案された(表1)。保育内容5領域のうち,「人間関係」に関するテーマを題材とするグループが最も多く(n=10;66.7%),他に「健康」(n=4;26.7%),「環境」「言葉」(n=2;13.3%),「表現」(n=1;6.7%)が選ばれた。
考案・作成された紙芝居の内容には,登場人物の葛藤場面を含むものが少なからず見られた。特に「人間関係」では,対人的な葛藤(けんか,勝ち負け,仲間外れ等)を‘育ちの契機’と捉え,「ねらい」「内容」の立案や教材の作成に反映させていた。だが実演の際に‘上手に演じよう’とするあまり,聴衆との相互作用に配慮できない姿も見られた。
考 察
年児の発達段階や移行過程を考慮しながら具体的な「ねらい」「内容」を立案する演習を通して,指導計画と保育活動の有機的なつながりを理解する観点が学生に得られた。段階的な授業展開と主体的活動が学生の能動的な学びを促したと考えられる。
課題として,計画を実現する技能育成の必要性が示唆された。「素話」実践演習を通して相互作用に対応する保育技能を養う(橋村・塚本,2014)等の教育指導が求められる。