[PG035] 高校生は相手の理解状態をどう確認するか
作問課題による理解観の検討
キーワード:ごまかし勉強, 理解観, 作問課題
問題と目的
多くの中学生高校生によって「理解できない所は,とりあえず教科書の内容を丸暗記して,試験を乗り切ろう」といった発言がなされることから,中学生以上であれば,少なくとも「丸暗記をしても理解したことにはならない」ということは分かっている筈だと言える。
しかしながら,最近の中学生高校生は学習の質が著しく低下しており,テストで高得点を取ることのみを目指すあまり,暗記や反復練習などの定着作業だけで,深化学習や発展学習を省略してしまう「ごまかし勉強」が主流になってしまっている(藤澤, 2002)。この場合,学習者が認知的協和を保つために「機械的暗記をしただけで,理解したつもりになる」可能性があり,そのような認知が生じた場合は,これがメタ認知の正常な働きを抑制することになる。
この自己欺瞞的認知が生じているかどうかは,他人の理解度を確認する問題を作らせてみれば判定できるかもしれない。即ち,理解状態と機械的暗記状態の峻別ができていれば,理解確認問題を作る場面で暗記確認問題を作ることはないだろうし,峻別ができていなければ,理解確認場面でも暗記確認問題を作成すると考えられる。
本研究では,高校生に長文を与え理解確認問題を作成させ,暗記確認問題の混入状況を調べる。
方 法
首都圏在住の高校生男女108名を4群に分け,各群に異なる主題(記憶,説得,共生,CD)の約1000文字からなる文章を提示し,「先生になったつもりで」生徒がうまく理解できたかを確認する問題を,思いつく限り書き出させた。平行し
て,自分の理解程度も,5段階評定させた。
結 果
本文中に記載のある内容そのままを再生させる問題は「記憶」に,本文中に記載されていない内容を考えさせる問題を「応用」に分類した。指導法を回答したり,「わかる?」と尋ねるような回答はここでは除外している。
図1が示すように,文章の主題によって応用問題や記憶問題の作成のしやすさに差があることがわかった。ここで「応用+記憶」は,両方の問題を作成したことを示している。
図2は,文章の理解度に応じて,どんな問題が作成されたかを見たものであるが,自分が理解できた文章ほど応用問題が多く作られ,理解できなかった文章ほど記憶問題を作成している。
考 察
自分が理解できない内容から応用問題を作成することは不可能だから,記憶問題を作成しておくというのは,納得できる結果といえる。しかしながら,自分でよく理解できたと判断している文章の理解度を試す問題として,記憶問題を作成しているのは,「本当は理解できていないが,記憶しているから理解したことにしてしまおう」という,協和を生み出すために形成された認知の可能性がある。一方で出題困難さや,日常接する試験問題の影響という可能性もあるだろう。
引用文献
藤澤伸介 (2002). ごまかし勉強 新曜社
多くの中学生高校生によって「理解できない所は,とりあえず教科書の内容を丸暗記して,試験を乗り切ろう」といった発言がなされることから,中学生以上であれば,少なくとも「丸暗記をしても理解したことにはならない」ということは分かっている筈だと言える。
しかしながら,最近の中学生高校生は学習の質が著しく低下しており,テストで高得点を取ることのみを目指すあまり,暗記や反復練習などの定着作業だけで,深化学習や発展学習を省略してしまう「ごまかし勉強」が主流になってしまっている(藤澤, 2002)。この場合,学習者が認知的協和を保つために「機械的暗記をしただけで,理解したつもりになる」可能性があり,そのような認知が生じた場合は,これがメタ認知の正常な働きを抑制することになる。
この自己欺瞞的認知が生じているかどうかは,他人の理解度を確認する問題を作らせてみれば判定できるかもしれない。即ち,理解状態と機械的暗記状態の峻別ができていれば,理解確認問題を作る場面で暗記確認問題を作ることはないだろうし,峻別ができていなければ,理解確認場面でも暗記確認問題を作成すると考えられる。
本研究では,高校生に長文を与え理解確認問題を作成させ,暗記確認問題の混入状況を調べる。
方 法
首都圏在住の高校生男女108名を4群に分け,各群に異なる主題(記憶,説得,共生,CD)の約1000文字からなる文章を提示し,「先生になったつもりで」生徒がうまく理解できたかを確認する問題を,思いつく限り書き出させた。平行し
て,自分の理解程度も,5段階評定させた。
結 果
本文中に記載のある内容そのままを再生させる問題は「記憶」に,本文中に記載されていない内容を考えさせる問題を「応用」に分類した。指導法を回答したり,「わかる?」と尋ねるような回答はここでは除外している。
図1が示すように,文章の主題によって応用問題や記憶問題の作成のしやすさに差があることがわかった。ここで「応用+記憶」は,両方の問題を作成したことを示している。
図2は,文章の理解度に応じて,どんな問題が作成されたかを見たものであるが,自分が理解できた文章ほど応用問題が多く作られ,理解できなかった文章ほど記憶問題を作成している。
考 察
自分が理解できない内容から応用問題を作成することは不可能だから,記憶問題を作成しておくというのは,納得できる結果といえる。しかしながら,自分でよく理解できたと判断している文章の理解度を試す問題として,記憶問題を作成しているのは,「本当は理解できていないが,記憶しているから理解したことにしてしまおう」という,協和を生み出すために形成された認知の可能性がある。一方で出題困難さや,日常接する試験問題の影響という可能性もあるだろう。
引用文献
藤澤伸介 (2002). ごまかし勉強 新曜社