日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PG

2015年8月28日(金) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PG039] 牽引の看護の観察点の理解促進につながった要因に関する考察

滑車の力のつり合いに着目して

門司真由美1, 青木久恵2, 青木奈緒子3, 窪田恵子#4, 三好麻紀5 (1.福岡女学院看護大学, 2.福岡女学院看護大学, 3.福岡女学院看護大学, 4.福岡学園看護大学設備準備室, 5.福岡女学院看護大学)

キーワード:看護学生, 動画, 有効性

問題と目的
現在の学生は,学習習慣が確立していない,既習学習の定着ができていないことなどの問題が指摘されている(大久保 2011)。初めて習う医学的なことは説明を聞いてもイメージがつかず,理解をすることも困難で暗記に頼らなくてはならない現状があり,知識の定着につながらない。
今回,滑車における力のつり合いに関する映像による学習を促し,力のつり合いを活用した治療法(牽引)の看護の観察点(正しい牽引方法)の説明を行った。
本研究では,その効果を分析し,牽引の看護の観察点(正しい牽引方法)の理解促進の要因と今後の課題について考察する。
方 法
対象者:A看護大学2年生,成人看護学援助論Ⅰ受講者120名中,研究協力に同意が得られた109名。
手続き;「運動器疾患の保存療法(牽引)」を含む講義を90分実施した。滑車における力のつり合いについて,学生の理解度を確認。誤答が多かったので,「角度を変更しても,紐が弛まず,物体が静止していれば,力がつり合っている」ことを説明し,力のつり合いを利用した治療(牽引)と,それに伴う看護の観察点(正しい牽引方法)の解説を行った。解説後に,力のつり合いを活用した治療(介達牽引)の確認テスト3問(3点満点)を行った。次の授業時に,事前に作成した力のつり合いの動画を学生に見せながら解説した。解説直後に,前回の確認テスト以外の治療(直達牽引)を入れた確認テストを行った。
結 果
テスト成績 テスト成績が動画使用前と動画使用後でどのように変化したかを比較検討した(表1)。テスト得点のt検定を行ったところ,動画使用前よりも動画使用後の方が優位に上昇していた(t(108)=7.74, p<.001)。動画使用後の学生の意見では,「プリントで見るよりも,映像を見ることで,問題を解くときに頭の中でイメージしやすい。」「説明だけではイメージがつかない。」という意見が多数あり,正答率も上昇していた。(図1)
考 察
本研究の結果から,動画を使用した説明は,滑車における力のつり合いの理解を促進し,力のつり合いを活用した治療法(牽引)の看護の観察点(正しい牽引方法)の理解を促進させる効果があることが示された。また,学生の意見からも,映像が設問内容のイメージの具体化を促進し,正答率の上昇につながったと考えられる。看護実践では1つの現象を多角的に観察する必要があり,今回はその一側面(力のつり合い)しか観察ができていない。今後は,解剖学的視点も含めた解説が必要となってくる。
今回,理解を促進する効果が示されたとはいうものの,正しい牽引方法の観察点の理解度は十分とは言えない。今後は,既習学習を基盤に看護実践で活用できる知識につながるような教材や教育方法の検討が必要となる。