日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PG

2015年8月28日(金) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PG043] 女子短期大学生の心理的発達に関する縦断研究(31)

学校満足度とパーソナリティ,愛着の関連

谷伊織1, 五十嵐素子2, 森山雅子3, 杉本英晴4 (1.東海学園大学, 2.北海学園大学, 3.愛知江南短期大学, 4.中部大学)

キーワード:青年期, 学校適応, パーソナリティ

問題と目的
近年,学業だけでなく進路,生活面などさまざまな側面についての大学生の適応,不適応に関する要因をついて検討し,得られた知見を学修や就職活動等の支援に生かそうとする試みが多くの高等教育機関において行われている。本研究でもそのような取り組みの一環として,学生の心理特性とその発達やキャリア形成,学業だけでなく学生生活も含めた大学への適応のあり方を検討し,学生支援の方法を模索することを目的とした包括的な学生の心理的発達に関する縦断調査を2年間にわたって行った。
本報告ではその一環として,大学生活の満足度とパーソナリティ,愛着との関連を検討した結果を報告する。大学生活における学校に対する満足度は適応的な学生生活を送る上での一つの要因になると考えられるが,学校生活における満足度が何によって影響を受けているのかを実証的に研究するために,パーソナリティなどの心理特性との関連を縦断的に扱った研究は多くない。そこで,これらについて,縦断的に調査を行ったうえで関連性を検討する。学生の学校満足度は環境面だけではなく,さまざまな心理変数とも影響をしていると考えられる。
方 法
対象者:東海地区におけるA女子短期大学において,研究の趣旨に同意した大学生の198名を対象として2年間にわたる3か月ごと,7回の質問紙による縦断調査を行った。
調査項目:①ビッグファイブ尺度(和田, 1996):「外向性」,「神経症傾向」,「経験への開放性」,「勤勉性」,「協調性」の5下位尺度,計60項目,7件法を使用した。②愛着尺度:丹羽(2005)によって作成された「親への愛着尺度」を使用した。この尺度は,青年の親に対する愛着について「愛着回避(8項目)」「愛着拒否(9項目)」の2つの側面から尋ねるものである。5件法で回答を求めた。③学校満足度:単一項目にて,0-100までの得点をつけることによって評価した。①②は比較的安定した特性を扱っているため,1年次6月のデータを用いて,③については7時点のデータを用いた。なお,当該校においては倫理委員会が設置されていないため,学長による研究計画および倫理指針の承認を受けた。
結 果
ビッグファイブ尺度と愛着尺度の各尺度得点を求めたうえで,各時点での学校満足度との相関係数を算出した。その結果,大学生活初期の時点で部分的に協調性と学校満足度の間に正の相関が見られたが,それ以外はほとんどが無相関であった。
考 察
学校満足度とパーソナリティ,愛着との間にはほとんど意味のある相関関係を見出すことができなかった。唯一,初期のころに協調性との間に正の相関が得られたのは,友人作りなどに協調性が影響を与えており,それが学校満足度と関連している可能性がある。しかし,それ以外についてはほとんど関連性が見いだせなかった。学校満足度という変数は,比較的幅広い包括的なものであり,さまざまな側面から影響を受けると考えられるが,実際には限定的なものである可能性もあるだろう。今後,さらに他の側面からの検討が望まれる。