The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

Cancelled

ポスター発表

ポスター発表 PG

Fri. Aug 28, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PG048] 幼児児童の心理教育的援助とSELプログラムの開発

沖林洋平 (山口大学)

Keywords:心理教育的援助, SEL, 幼児

Key Words:心理教育的援助,SEL,幼児
問題と目的
近年,ADHD,アスペルガー症候群等の発達障害児の増加が,小中学校をはじめとする教育現場における喫緊の課題となっている。発達障害について,文部科学省の最新の定義は次のようなものである。すなわち,①自閉症の定義 〈Autistic Disorder〉自閉症とは,3歳位までに現れ,1他人との社会的関係の形成の困難さ,2言葉の発達の遅れ,3興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。②高機能自閉症の定義 〈High-Functioning Autism〉 高機能自閉症とは,3歳位までに現れ,1他人との社会的関係の形成の困難さ,2言葉の発達の遅れ,3興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち,知的発達の遅れを伴わないものをいう。また,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。③学習障害(LD)の定義 〈Learning Disabilities〉 学習障害とは,基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は,その原因として,中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが,視覚障害,聴覚障害,知的障害,情緒障害などの障害や,環境的な要因が直接の原因となるものではない。④注意欠陥/多動性障害(ADHD)の定義 〈Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder〉ADHDとは,年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力,及び/又は衝動性,多動性を特徴とする行動の障害で,社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また,7歳以前に現れ,その状態が継続し,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。⑤アスペルガー症候群とは,知的発達の遅れを伴わず,かつ,自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを伴わないものである。なお,高機能自閉症やアスペルガー症候群は,広汎性発達障害に分類されるものである(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm)。以上のように,発達障害の機能障害は様々であり,その教育的支援についても様々なものが求められる。
このような,発達障害に対する心理教育的援助法の一つとして近年注目を集めているのが,常道と社会性の学習(Social Emotional Leaning 以下「SEL」)である。例えば,香川・小泉(2013)では,小学生を対象として,児童の社会的能力を育成するために,SELプログラムを実施し,SELプログラムと学習の関係を検討している。その結果,「対人関係」「人生の重要事態に対する能力」「積極的貢献的な奉仕活動」に関する得点が向上したこと,ならびに,算数と漢字の学習について有意な上昇がみられたことが確認された。あるいは,山田・小泉・中山・宮原(2013)では,SELの効果測定を行うための自己評定式の,小中学生用規範行動自己評定尺度を開発した。この尺度は,「対人間での望ましい行動」,「対人間で遵守すべき行動」「個人として遵守すべき行動」の3因子により構成されること,小学校3年生から利用可能な尺度であることが特徴として挙げられる。このように,情動と社会性に関する研究は,近年注目を集め,研究が進められているが,幼児教育あるいは小1プロブレムにおけるSEL研究は,小中学校の研究に比べると多くない。
方 法
調査時期 2014年8月から10月であった。
調査対象児 本研究における観察対象児は,保育所に通園する3名であった。
調査方法 本研究では,教育実習と追加のボランティア活動としての保育現場での実践を通し,経験したことを石隈・田村式援助シート(特別支援編)(2013)に記入し,保育期間終了後,実践者と熟達した保育士との間で,記録の解釈をシンク・ペア・シェアによって比較検討した。
結果と考察
まず,調査開始時に,衝動的,あるいは,うまく主張できないという,要支援児を抽出した。実践者が,要支援児と関わる中で,SEL-8Sにおける,小学校用のプログラムを遊びの中に取り入れることで,要支援児の行動の変化を記録した。2か月の断続的取組によって,最終的には,要支援児それぞれの課題は,ある程度,日常生活に適応できるようになったと,熟達者も判断した。
このように,幼児に対するSELプログラムとしては,小学生用のものをうまくアレンジして,幼児との遊びの中で支援者が適切に使っていくというアプローチがあることが明らかとなった。ただし,幼児には児童とは異なる発達課題や知能の個人差の大きさというような問題もあり,幼児用に特化したSELプログラムの開発も待たれる。