The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PG

Fri. Aug 28, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PG053] 幼児の利他的分配行動と実行機能の関連

熊木悠人1, 前原由喜夫2 (1.京都大学, 2.長崎大学)

Keywords:幼児, 分配, 実行機能

問題と目的
3歳児は,他者とモノを自由に分け合う場面で他者よりも自分の取り分が多くなるように分配する傾向がある。その後,6歳頃にかけて平等な分配が増加していく(Benenson et al., 2007; Blake & Rand, 2010)。他者への分配は自分の利益を減らすことになるため,自分の利益に対する欲求を抑制しなければならない。こうした観点から,認知的実行機能,特に抑制機能と分配行動との発達的関連を調べる研究が行われてきた(Aguilar-Pardo et al., 2013; Smith et al., 2013)。
実行機能には認知的側面と情動的側面の両面がある(Zelazo & Muller, 2010)。情動的実行機能と分配行動との関連を調べた研究は行われていないが,情動や欲求が喚起される場面でのトップダウン制御に関わる情動的実行機能は,分配場面で必要となる自己利益への欲求の抑制に強く関わっていると考えられる。そこで本研究は,自己利益への欲求を抑えなければならない分配場面での幼児の分配行動と認知的・情動的実行機能との関連を検証することを目的とした。
方法
4歳児群16名(42-52か月,平均47.5か月),5歳児群16名(56-66か月,平均61.6か月),6歳児群14名(68-78か月,平均72.6か月)の計46名が実験に参加し,以下の課題を行った。
1.認知的実行機能課題
赤-青ストループ課題(Simpson & Riggs, 2005)
サイモン課題(Gerardi-Caulton, 2000)
2.情動的実行機能課題
子ども版ギャンブリング課題(Kerr &Zelazo, 2004)
ギフトラッピング課題(Kochanska et al., 1996)
3.分配課題
各参加児は以下の2条件を行った。
〈他者/他者条件〉 参加児の見知らぬ幼児2名の写真が提示された。参加児は4つのおもちゃを2人の他児に好きな数ずつ分配する課題を3回行い,計12個のおもちゃを分配した。
〈自分/他者条件〉 参加児の見知らぬ幼児1名の写真が提示された。参加児は4つのおもちゃを自分と他児との間で好きな数ずつを分配する課題を3回行い,計12個のおもちゃを分配した。
4.絵画語彙発達検査
参加児の語彙発達年齢を統制するために行った。
結 果
(1)分配課題
他者/他者条件では,42名がおもちゃを6個ずつ平等に分配し,4名が不平等な分配をした。自分/他者条件では6個ずつ分配した参加児が34名,相手が多くなる分配した参加児が2名,自分が多くなる分配した参加児が10名であった。6個ずつの分配と相手が多くなる分配を平等分配,自分が多くなる分配を不平等分配とすると,分配方略には条件間で有意な分布差があり(p= .026),自分/他者条件では他者/他者条件よりも平等分配が少なかった。自分/他者条件では分配方略の年齢間の分布差が有意傾向であり(p=.053),4歳児群で平等分配が有意に少なかった(p<. 05)。
(2)実行機能と分配行動との関連
自分/他者条件において,12個のおもちゃのうち何個を自分に分配したかを指標とし,年齢と絵画語彙検査の成績を統制した上で4つの実行機能課題との順位相関係数を算出した。その結果,赤―青ストループ課題(rs=-.22, p=.14),サイモン課題(rs=-.10, p=.51),子ども版ギャンブリング課題(rs=-.14, p=.37),ギフトラッピング課題(rs=-.24, p=.10)のいずれとも,自分/他者条件における分配との間に有意な相関は見られなかった。
考 察
本研究より,以下の2点が明らかとなった。
(1)他者/他者条件よりも自分/他者条件で平等分配を行った児が少なかったことから,自分の利益が関わらない場面では平等に分配する児でも,利益が関わる場合には自分の利益への欲求を優先して分配を行う。
(2)自分/他者条件では,自分に多くする分配方略は4歳児群で多く,5歳児群,6歳児群ではほとんどの児が平等分配したことから,3歳から6歳頃にかけて平等分配が年齢とともに増加する。
分配課題と実行機能課題との間に有意な相関は見いだされなかった。ただし,本研究の分配課題の成績に個人差が少なかったために相関が見られなかった可能性もある。今後,より適切な分配行動の指標を用いて,認知的・情動的実行機能との関連を調べていく必要がある。
付 記
本研究は文部科学省科学研究費補助金,新学術領域(#24119001)の助成により実施されました。