日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PG

2015年8月28日(金) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PG059] 昆虫への嫌悪感を構成する要因の検討

対人嫌悪尺度の応用による尺度作成

田中悠樹 (京都教育大学)

キーワード:虫嫌い, 嫌悪感情

問題と目的
現在,教育現場の課題として自然体験活動の欠如が取り上げられている(日置, 2004; 国立青少年教育振興機関, 2010)。その要因のひとつとして昆虫に対して嫌悪感を示す子ども・教師が増えている(日高, 2005; 鑄物・地下, 2014)ことが考えられる。しかし嫌悪は恐怖や不安といった感情と近い属性を備えた感情であるとされるものの,対人的な場面以外の研究は多くなく,特に昆虫に対する嫌悪は従来本能的なものであると考えられており,その構成要因についてはほとんど明らかでない。
よって,本研究は,対人嫌悪の研究を参考として尺度作成を試みることで昆虫に対する嫌悪感情の構成を明らかにすることを目的とする。
方法
調査対象者 関西の国立大学で,2015年1月から2月に質問紙調査を実施した。分析対象は大学生51名(男性:17名,女性:34名)である。
質問項目 日高(2005)において想起されやすかった昆虫「ハチ・ダンゴムシ・イモムシ・チョウ・カブトムシ・バッタ・ゴキブリ・セミ・ガ」についてそれぞれA:(比較的)好ましく思う,B:(比較的)いやだと思う,C:どちらでもない,のどのイメージ群に当てはまるか解答を求めた。なお,統制のためにそれぞれスライドショーで該当する昆虫の画像を提示した。その後,金山・山本(2003)の嫌悪対象者に対する感情の尺度のうち4因子を応用し,昆虫に対する嫌悪感情の尺度を作成,各群について回答を求めた。質問項目は全20項目×3群であり,6件法である。
結果と考察
昆虫へのイメージ 各昆虫に対するイメージ群の選択率をFigure 1に示す。χ2検定で選択率を比較した結果,好ましく思う群にはチョウ・カブトムシ・バッタが,いやだと思う群にはハチ・イモムシ・ゴキブリ・ガが選択される傾向にあることがわかった(p<.05)。この結果は日高(2005)の結果を概ね支持し,嫌悪対象となる昆虫とそうでない昆虫とは区分されていることが示唆された。今後昆虫の持つどのような属性が感情に影響を及ぼしているのか調査する必要があると考える。
昆虫に対する嫌悪感情の構成 昆虫に対する嫌悪感情の尺度20項目の3群それぞれ主因子法・Promax回転による探索的因子分析を行った。その際に全群において信頼性係数を低下させていた1項目を分析から除外した。金山・山本(2003)との比較のために,いやだと思う群について取り上げたところ,4因子構造が妥当と判断され下位項目の特徴から各因子を命名した。それぞれの因子名・下位項目・α係数をTable 1に示す。
今回の調査で得られた因子構造のうち「恐怖感情」「無関心」は金山・山本(2003)の尺度と一致したものの,新たに「不快感情」「敵意感情」の因子が抽出された。このことから,嫌いな他者といやだと思う昆虫とで抱く嫌悪感情は概ね似通っており,昆虫に対しては不快と嫌悪が別の感情であることがわかった。
また,嫌悪感情4因子の各尺度得点について,好ましさによる平均値の比較を分散分析によって行った。結果,無関心以外の3因子において好ましさの程度によって差が見られ(不快感情:F(2, 100)=66.68, p<.01; 恐怖感情:F(2,100)=55.89, p<.01; 無関心:F(2,100)=0.39; 敵意感情F(2,50)=12.66, p<.01),いやだと思う群が他の2群と比べて該当する3因子すべてで有意に得点が高かった。こしたことから,いやだと思う昆虫に対する不快や恐怖,敵意といった感情は他の昆虫と比べて強いものであることが示唆された。