日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PG

2015年8月28日(金) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PG064] 4歳児の片付け場面における保育者の援助

園における片付けの実態の違いに着目して

箕輪潤子1, 秋田喜代美2, 安見克夫3, 増田時枝4, 中坪史典#5, 砂上史子#6 (1.川村学園女子大学, 2.東京大学, 3.板橋富士見幼稚園, 4.聖心女子専門学校, 5.広島大学, 6.千葉大学)

キーワード:保育, 片付け

問 題
保育園や幼稚園の片付けにおいて,保育者はそれまでの遊びや活動の満足感を大切にしつつ,次の活動の時間や他の子どもの動き,片付け方を意識しながら指導を行うことが必要である。そのため,片付けの指導の過程において,保育者は葛藤や困難を感じることが多いと考えられる。そこで本研究では,葛藤を伴う片付け場面における保育者の援助について,園の片付けの実態を踏まえ,検討することを目的とする。
方 法
【研究協力者・調査時期】2014年7月~8月に,保育所・幼稚園・認定こども園77園の保育者256名(平均経験年数12.3年,SD=8.67)に対し,質問紙での調査を行った。
【調査方法】葛藤を伴う片付け場面での援助を調査するため「片付け援助葛藤場面記述課題」:4歳児6月の砂場での片付け場面を想定した質問(4問,自由記述式)を行う。今回は「玩具を丁寧に片付けているが次の活動に間に合いそうにない子どもに対してどのように援助するか」という質問に対する回答について,園の片付けの実態を踏まえ検討する。片付けの実態は「園の片付け実態質問項目」:箕輪他(2009)の片付けの実態と目標尺度をもとに共同研究者間で協議して決定した,各園の片付けの実態に関する項目(28項目,「とてもあてはまる」「まああてはまる」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の4件法)により検討する。
【分析方法】①「片付け援助葛藤場面記述課題」の回答を質的な分析(佐藤, 2008)により意味内容ごとに分類する。②「園の片付け実態項目」の回答について,共通性の初期値を1とし,最尤法(バリマックス回転)により因子を抽出し,その結果3因子解を適当と判断し,各項目の因子負荷量を得た(表1)。3因子による累積寄与率は,58.74%であった。③①について,②で抽出された3因子のうち「心理重視因子」と「時間重視因子」を構成する項目の平均評定値が高い各20園に勤務する保育者の回答を比較,分析する。
結果と考察
「心理重視因子」を構成する項目の平均評定値が上位20園では,平均評定値が3.47(SD=0.32)であった(77園全体3.10,SD=0.47)。「時間重視因子」を構成する項目の平均評定値が上位20園では,平均評定値が2.55(SD=0.48)であった(全体2.03,SD=0.60)。
「心理重視因子」と「時間重視因子」を構成する項目の平均評定値が高かった各20園に所属する保育者の自由記述の回答の意味内容を分類したところ(Table.2),「心理重視」の園の保育者は,【手伝う】【次の活動内容や時間を知らせる】といった回答の比率が全体の平均より多かったのに対し,「時間重視」の園の保育者では,【競争・ゲーム形式で片付ける】【周囲のペースを意識させる】【早く片付けるよう言葉をかける】といった回答が全体の平均より多かった。このことから,丁寧に片付けているが次の時間に間に合わない状況において,子どもが考えたり楽しみながら片付けることを重視する園の保育者は,片付けを手伝ったり時間に気付かせたりする方法を重視していることがわかる。一方,定刻に片付けることを重視する園では,早く片付けられるよう声をかけたり方略を用いたりすることや,他の子どもを意識するような方法を重視すると考えられる。
今後の課題として,4歳児の担任経験によって,どのように回答の内容が異なるのかを検討する。
付 記
本研究は,公益財団法人野間教育研究所の幼児教育部会の研究プロジェクトの一環として行われたものである。