[PG069] 中学生における攻撃行動と共感性および同調性との関連性
キーワード:攻撃行動, 共感性, 同調性
【問題と目的】
中学生における攻撃行動は,攻撃行動を遂行する相手である被害者に,さまざまな心理社会的な不適応を引き起こさせる可能性があることから大きな問題とされている(佐藤他,2007)。この攻撃行動は,形態ごとに異なる機能を持つことが指摘されていることから(Cillesen & Mayeux,2004),まずは発現する攻撃行動の形態の差異によって,その関連性を比較検討する必要があるといえる。
このような攻撃行動を増長させる要因の1つとして,攻撃行動を遂行する側の「共感性」の欠如が指摘されており(Mehrabian & Epstein,1972),これまで,共感性を高めることに主眼をおいた介入が行なわれてきた(松尾,2002)。しかしながら,それらの介入によって共感性が高まっても,なお攻撃行動が生じてしまう生徒の存在が指摘されており(下田,2014),攻撃行動の変容を考える際には,共感性とは異なる要因の検討が必要であると考えられる。
このような要因として,他者への「同調性」が挙げられる(中島・五十嵐,2012)。特に青年期には,周囲と同じ行動をとる傾向である同調性が高まることが指摘されている(高田,1999)。このように,攻撃行動を共に行なう他者である加害者側への同調性が高まることによって,被害者への共感性の賦活が妨げられ,結果的に他の加害者が望むような攻撃行動に従事してしまう場合が考えられる。しかしながら,攻撃行動と共感性,および同調性との関連について実証的に検討した研究はほとんど見受けられない。
そこで本研究では,中学生における攻撃行動と,共感性および同調性との関連性を検討することを目的とする。
【方 法】
調査参加者:関東の公立中学校に在籍する中学生178名(2年生:男子71名,女子73名,無記入1名,3年生:男子12名,女子21名;平均年齢13.82±0.93歳)を対象とした。
調査材料:(a)攻撃行動:中学生の対人場面において攻撃行動に誘われる3場面(身体的攻撃場面・言語的攻撃場面・関係性攻撃場面)の映像から,各場面で攻撃行動をとろうと思う程度をVASで測定,(b)共感性:多次元共感性尺度(櫻井,1988),(c)同調性:相互独立的-相互協調的自己観尺度(高田,1999),(d)攻撃行動をとる理由についての自由記述,を用いた。
なお,本研究は「早稲田大学人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て行なわれた。
【結果と考察】
攻撃行動の形態別に分けた各場面における攻撃行動得点を従属変数,共感性および同調性の各下位尺度を独立変数とし,重回帰分析を行った。その結果,関係性攻撃行動において,共感的認知(β=-.17,p < .05)および共感的情動(β=-.22,p < .01),評価懸念(β=.20,p < .05)の関係が認められたが,他者への親和・順応(β=.10,n.s.)の関係は認められなかった(Figure)。また,身体的攻撃行動および言語的攻撃行動においては一部に関係が認められた(身体的攻撃:共感的認知β=-.20,p < .05,他者への親和・順応β=.24,p < .01,言語的攻撃:評価懸念β=.19,p < .05)。
本研究の結果から,攻撃行動の生起に関して,共感性の欠如ばかりではなく同調性についても,その要因となりえることが明らかとなった。また,攻撃行動に対する共感性および同調性の関係は,攻撃行動の形態によって異なることが明らかとされた。特に,関係性攻撃行動の生起については,従来から指摘されてきた共感性の欠如の要因だけでなく同調性の要因が関係していたことから,加害者側が行なう攻撃行動に加担する以外の行動遂行が阻止され,結果的に攻撃行動が生起しているという枠組みから,従来の知見を再整理する必要があることが示唆された。したがって,攻撃行動を抑制するための介入に際しては,ターゲットとなる攻撃行動の形態を踏まえた上で,従来から指摘されてきた共感性のみでなく同調性の程度についても考慮して実践する必要があると考えられる。
中学生における攻撃行動は,攻撃行動を遂行する相手である被害者に,さまざまな心理社会的な不適応を引き起こさせる可能性があることから大きな問題とされている(佐藤他,2007)。この攻撃行動は,形態ごとに異なる機能を持つことが指摘されていることから(Cillesen & Mayeux,2004),まずは発現する攻撃行動の形態の差異によって,その関連性を比較検討する必要があるといえる。
このような攻撃行動を増長させる要因の1つとして,攻撃行動を遂行する側の「共感性」の欠如が指摘されており(Mehrabian & Epstein,1972),これまで,共感性を高めることに主眼をおいた介入が行なわれてきた(松尾,2002)。しかしながら,それらの介入によって共感性が高まっても,なお攻撃行動が生じてしまう生徒の存在が指摘されており(下田,2014),攻撃行動の変容を考える際には,共感性とは異なる要因の検討が必要であると考えられる。
このような要因として,他者への「同調性」が挙げられる(中島・五十嵐,2012)。特に青年期には,周囲と同じ行動をとる傾向である同調性が高まることが指摘されている(高田,1999)。このように,攻撃行動を共に行なう他者である加害者側への同調性が高まることによって,被害者への共感性の賦活が妨げられ,結果的に他の加害者が望むような攻撃行動に従事してしまう場合が考えられる。しかしながら,攻撃行動と共感性,および同調性との関連について実証的に検討した研究はほとんど見受けられない。
そこで本研究では,中学生における攻撃行動と,共感性および同調性との関連性を検討することを目的とする。
【方 法】
調査参加者:関東の公立中学校に在籍する中学生178名(2年生:男子71名,女子73名,無記入1名,3年生:男子12名,女子21名;平均年齢13.82±0.93歳)を対象とした。
調査材料:(a)攻撃行動:中学生の対人場面において攻撃行動に誘われる3場面(身体的攻撃場面・言語的攻撃場面・関係性攻撃場面)の映像から,各場面で攻撃行動をとろうと思う程度をVASで測定,(b)共感性:多次元共感性尺度(櫻井,1988),(c)同調性:相互独立的-相互協調的自己観尺度(高田,1999),(d)攻撃行動をとる理由についての自由記述,を用いた。
なお,本研究は「早稲田大学人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て行なわれた。
【結果と考察】
攻撃行動の形態別に分けた各場面における攻撃行動得点を従属変数,共感性および同調性の各下位尺度を独立変数とし,重回帰分析を行った。その結果,関係性攻撃行動において,共感的認知(β=-.17,p < .05)および共感的情動(β=-.22,p < .01),評価懸念(β=.20,p < .05)の関係が認められたが,他者への親和・順応(β=.10,n.s.)の関係は認められなかった(Figure)。また,身体的攻撃行動および言語的攻撃行動においては一部に関係が認められた(身体的攻撃:共感的認知β=-.20,p < .05,他者への親和・順応β=.24,p < .01,言語的攻撃:評価懸念β=.19,p < .05)。
本研究の結果から,攻撃行動の生起に関して,共感性の欠如ばかりではなく同調性についても,その要因となりえることが明らかとなった。また,攻撃行動に対する共感性および同調性の関係は,攻撃行動の形態によって異なることが明らかとされた。特に,関係性攻撃行動の生起については,従来から指摘されてきた共感性の欠如の要因だけでなく同調性の要因が関係していたことから,加害者側が行なう攻撃行動に加担する以外の行動遂行が阻止され,結果的に攻撃行動が生起しているという枠組みから,従来の知見を再整理する必要があることが示唆された。したがって,攻撃行動を抑制するための介入に際しては,ターゲットとなる攻撃行動の形態を踏まえた上で,従来から指摘されてきた共感性のみでなく同調性の程度についても考慮して実践する必要があると考えられる。