[PG071] 不登校における大学生の援助要請行動プロセスとその関連要因の検討
人間関係の悩みによる不登校傾向の場面想定を用いて
Keywords:学生相談, 不登校, 援助要請行動
問題と目的
大学において不登校の学生が今日相当数に上がることが指摘されている(堀井,2013)。不登校学生の支援に向けて,不登校の状態に陥った時に,援助を求めることをどのように考え,そして行動するかを明らかにする必要があるだろう。そこで本研究では不登校の問題における援助要請行動のプロセスに焦点をあてて,その関連要因を検討することを目的とする。
方 法
対象 大学生392名(男性141名,女性251名)。
質問紙 1)人間関係の悩みによる不登校傾向の状態(シナリオ「あなたは,学内での人間関係に悩んで,大学に行きたくなくなり,授業への欠席が続いています」)における援助要請行動のプロセス(木村他,2014;援助要請行動のプロセスに沿った7つの意識・行動についての選択肢から回答,複数回答可),2)シナリオの経験の有無(2件法),3)シナリオの問題の深刻度の評価(5件法),4)心理専門職への援助要請に対する態度尺度(SASPPH;大畠・久田,2010;4件法),5)ソーシャル・サポート(福岡,2000;5件法),6)K6日本語版(古川他,2003;5件法)。
結果と考察
対象者を援助要請行動のステージに分類したものがTable 1である。問題の経験あり・なしともに,半数以上が他者への援助要請を検討していた(ステージIV/V)。各ステージ間にフィルターを設定し,経験なし群を対象に,フィルター通過の有無を基準変数,性別(男性:0,女性:1),問題の深刻度,K6,ソーシャル・サポート,SASPPHを説明変数としたロジスティック回帰分析を実施した(Table 2)。フィルター1では問題の深刻度の評価が,2ではソーシャル・サポートが,3では性別,問題の深刻度の評価,ソーシャル・サポート,SASPPHの心理的援助に対する無関心が,4では問題の深刻度の評価,SASPPHの特殊な状況に対する抵抗感と心理的援助に対する無関心が,4aでは特殊な状況に対する抵抗感が,4bではソーシャル・サポートが関連を示した。
問題を深刻であると評価するほど,問題の認識,他者への援助要請の検討,学生相談機関への援助要請の検討を促進し,またソーシャル・サポートの多さが,問題への対処,他者への援助要請の検討,学生相談機関への援助要請行動を促進することが示唆された。心理専門職への援助要請態度では,特殊な状況への抵抗感および心理的援助に対する無関心が低いほど学生相談機関への援助要請を促進することが示唆された。性別はフィルター3のみで関連を示し,女性の方が男性よりも他者への援助要請を検討しており,抑うつ・自殺念慮のケースと同様の結果となった(木村他,2014)。今回は実際にシナリオと同じ経験がある学生は少なく,実際の経験に基づく回答について検討できなかった。今後,今回の場面想定法で得られた結果と,実際に経験した際の結果を比較・検討する必要があるだろう。
謝 辞
本研究はJSPS科研費25780434の助成を受けた。
大学において不登校の学生が今日相当数に上がることが指摘されている(堀井,2013)。不登校学生の支援に向けて,不登校の状態に陥った時に,援助を求めることをどのように考え,そして行動するかを明らかにする必要があるだろう。そこで本研究では不登校の問題における援助要請行動のプロセスに焦点をあてて,その関連要因を検討することを目的とする。
方 法
対象 大学生392名(男性141名,女性251名)。
質問紙 1)人間関係の悩みによる不登校傾向の状態(シナリオ「あなたは,学内での人間関係に悩んで,大学に行きたくなくなり,授業への欠席が続いています」)における援助要請行動のプロセス(木村他,2014;援助要請行動のプロセスに沿った7つの意識・行動についての選択肢から回答,複数回答可),2)シナリオの経験の有無(2件法),3)シナリオの問題の深刻度の評価(5件法),4)心理専門職への援助要請に対する態度尺度(SASPPH;大畠・久田,2010;4件法),5)ソーシャル・サポート(福岡,2000;5件法),6)K6日本語版(古川他,2003;5件法)。
結果と考察
対象者を援助要請行動のステージに分類したものがTable 1である。問題の経験あり・なしともに,半数以上が他者への援助要請を検討していた(ステージIV/V)。各ステージ間にフィルターを設定し,経験なし群を対象に,フィルター通過の有無を基準変数,性別(男性:0,女性:1),問題の深刻度,K6,ソーシャル・サポート,SASPPHを説明変数としたロジスティック回帰分析を実施した(Table 2)。フィルター1では問題の深刻度の評価が,2ではソーシャル・サポートが,3では性別,問題の深刻度の評価,ソーシャル・サポート,SASPPHの心理的援助に対する無関心が,4では問題の深刻度の評価,SASPPHの特殊な状況に対する抵抗感と心理的援助に対する無関心が,4aでは特殊な状況に対する抵抗感が,4bではソーシャル・サポートが関連を示した。
問題を深刻であると評価するほど,問題の認識,他者への援助要請の検討,学生相談機関への援助要請の検討を促進し,またソーシャル・サポートの多さが,問題への対処,他者への援助要請の検討,学生相談機関への援助要請行動を促進することが示唆された。心理専門職への援助要請態度では,特殊な状況への抵抗感および心理的援助に対する無関心が低いほど学生相談機関への援助要請を促進することが示唆された。性別はフィルター3のみで関連を示し,女性の方が男性よりも他者への援助要請を検討しており,抑うつ・自殺念慮のケースと同様の結果となった(木村他,2014)。今回は実際にシナリオと同じ経験がある学生は少なく,実際の経験に基づく回答について検討できなかった。今後,今回の場面想定法で得られた結果と,実際に経験した際の結果を比較・検討する必要があるだろう。
謝 辞
本研究はJSPS科研費25780434の助成を受けた。