[PG074] 親の養育行動に対する生徒の認知が養育行動と社会的スキルの関連に及ぼす影響
Keywords:養育行動, 認知, 社会的スキル
【問題と目的】
中学生において,社会的スキルが学校での適応に重大な影響を及ぼすことが多くの研究によって明らかにされている(たとえば,嶋田他,1993)。子どもが示す社会的スキルには,親の養育行動が大きな影響を及ぼすことが多くの研究によって示されており(戸ヶ崎・坂野,1997),たとえば,親の攻撃的な行動がモデルとなり,子どもが攻撃的なスキルを用いる傾向にあることが指摘されている(森下,1990)。しかしながら,同じ様な養育行動であっても,子どもによっては,示される社会的スキルに差異が生じることが起こりうる。
このような差異が生じる要因のひとつとして,親が示す養育行動に対する「子どもの認知」が影響している可能性があると考えられる。たとえば,信太(2009)は,中学生において,「親が認識する自身の養育態度」と「子どもが認識する親の養育態度」が必ずしも一致しないことを示している。すなわち,中学生においては,親の養育行動の影響性は,親の養育行動に対する子どもの認知が媒介することによって変化することが推察される。
これらのことを踏まえると,子どもの社会的スキルと親の養育行動の関連を検討する際には,親の養育行動に対する子どもの認知を考慮に入れる必要があると考えられる。親の養育行動に対する子どもの認知の影響性を明らかにすることによって,「子どもの社会的スキル」や「親の養育行動」に対する直接的な介入だけでなく,「子どもの認知」に対する介入を,子どもの社会的スキルに対する支援の選択肢のひとつとして提案することが可能になると考えられる。
そこで本研究では,中学生およびその親を対象として,親の養育行動に対する生徒の認知が,親の養育行動と生徒の社会的スキルの関連に及ぼす影響を検討することを目的とする。
【方 法】
調査対象者:関東圏の公立中学校に在籍する1~3年生95名(平均年齢13.71±0.92歳),保護者95名(平均年齢43.60±3.97歳)を対象とした。
調査材料:(a)養育行動:Parenting Scale日本語版(井澗,2010),(b)社会的スキル:中学生用社会的スキル(嶋田他,1996),(c)親の養育行動に対する子どもの認知:井澗(2010;調査材料(a))をもとに作成した尺度を用いた。調査材料(c)では,子どもに対して,調査材料(a)の項目にある親の養育行動が,自身の親の養育行動にどの程度当てはまるかについて回答を求めた。
なお,本研究は,早稲田大学人を対象とする研究に関する倫理審査委員会の承認を得て行われた。
【結果と考察】
親の養育行動(過剰反応,緩さ)を独立変数,子どもの社会的スキル(攻撃行動,引っ込み思案行動,向社会的スキル)を従属変数,子どもの認知を媒介変数として,媒介モデルの検討を行った。推定値の算出にはAmos16.0を用い,各変数間の直接効果および間接効果を算出した。
その結果,親の過剰反応から子どもの攻撃行動に対する有意な直接効果が認められた(β= .23,p=.02)。次に,子どもの認知をモデルに投入したところ,子どもの認知を媒介した有意な間接効果が認められ(β= .09,p=.02),親の過剰反応から子どもの攻撃行動の直接効果は有意でなくなった(β= .14,p=.18;Figure)。また,親の過剰反応から引っ込み思案行動に対する直接効果は認められなかったが(β= .01,p=.88),親の過剰反応に対する子どもの認知をモデルに投入すると,親の過剰反応から子どもの認知を媒介して引っ込み思案行動に影響を及ぼす有意な間接効果が認められた(β= .10,p=.03)。同様に,親の過剰反応から向社会的スキルに対する直接効果は認められなかったが(β= .01,p=.97),親の過剰反応に対する子どもの認知をモデルに投入すると,親の過剰反応から子どもの認知を媒介して向社会的スキルに影響を及ぼす有意な間接効果が認められた(β= -.09,p=.04)。
本研究の結果から,中学生において,親の養育行動に対する子どもの認知が媒介することによって,子どもの社会的スキルに対する親の養育行動の影響性が変化することが示された。この結果を踏まえると,中学生の社会的スキルに対する支援において,親の養育行動に対するとらえ方の多様性を促進させることや,親の養育行動をモニタリングさせることなど,「子どもの認知」への介入を提案することが可能になると考えられる。
中学生において,社会的スキルが学校での適応に重大な影響を及ぼすことが多くの研究によって明らかにされている(たとえば,嶋田他,1993)。子どもが示す社会的スキルには,親の養育行動が大きな影響を及ぼすことが多くの研究によって示されており(戸ヶ崎・坂野,1997),たとえば,親の攻撃的な行動がモデルとなり,子どもが攻撃的なスキルを用いる傾向にあることが指摘されている(森下,1990)。しかしながら,同じ様な養育行動であっても,子どもによっては,示される社会的スキルに差異が生じることが起こりうる。
このような差異が生じる要因のひとつとして,親が示す養育行動に対する「子どもの認知」が影響している可能性があると考えられる。たとえば,信太(2009)は,中学生において,「親が認識する自身の養育態度」と「子どもが認識する親の養育態度」が必ずしも一致しないことを示している。すなわち,中学生においては,親の養育行動の影響性は,親の養育行動に対する子どもの認知が媒介することによって変化することが推察される。
これらのことを踏まえると,子どもの社会的スキルと親の養育行動の関連を検討する際には,親の養育行動に対する子どもの認知を考慮に入れる必要があると考えられる。親の養育行動に対する子どもの認知の影響性を明らかにすることによって,「子どもの社会的スキル」や「親の養育行動」に対する直接的な介入だけでなく,「子どもの認知」に対する介入を,子どもの社会的スキルに対する支援の選択肢のひとつとして提案することが可能になると考えられる。
そこで本研究では,中学生およびその親を対象として,親の養育行動に対する生徒の認知が,親の養育行動と生徒の社会的スキルの関連に及ぼす影響を検討することを目的とする。
【方 法】
調査対象者:関東圏の公立中学校に在籍する1~3年生95名(平均年齢13.71±0.92歳),保護者95名(平均年齢43.60±3.97歳)を対象とした。
調査材料:(a)養育行動:Parenting Scale日本語版(井澗,2010),(b)社会的スキル:中学生用社会的スキル(嶋田他,1996),(c)親の養育行動に対する子どもの認知:井澗(2010;調査材料(a))をもとに作成した尺度を用いた。調査材料(c)では,子どもに対して,調査材料(a)の項目にある親の養育行動が,自身の親の養育行動にどの程度当てはまるかについて回答を求めた。
なお,本研究は,早稲田大学人を対象とする研究に関する倫理審査委員会の承認を得て行われた。
【結果と考察】
親の養育行動(過剰反応,緩さ)を独立変数,子どもの社会的スキル(攻撃行動,引っ込み思案行動,向社会的スキル)を従属変数,子どもの認知を媒介変数として,媒介モデルの検討を行った。推定値の算出にはAmos16.0を用い,各変数間の直接効果および間接効果を算出した。
その結果,親の過剰反応から子どもの攻撃行動に対する有意な直接効果が認められた(β= .23,p=.02)。次に,子どもの認知をモデルに投入したところ,子どもの認知を媒介した有意な間接効果が認められ(β= .09,p=.02),親の過剰反応から子どもの攻撃行動の直接効果は有意でなくなった(β= .14,p=.18;Figure)。また,親の過剰反応から引っ込み思案行動に対する直接効果は認められなかったが(β= .01,p=.88),親の過剰反応に対する子どもの認知をモデルに投入すると,親の過剰反応から子どもの認知を媒介して引っ込み思案行動に影響を及ぼす有意な間接効果が認められた(β= .10,p=.03)。同様に,親の過剰反応から向社会的スキルに対する直接効果は認められなかったが(β= .01,p=.97),親の過剰反応に対する子どもの認知をモデルに投入すると,親の過剰反応から子どもの認知を媒介して向社会的スキルに影響を及ぼす有意な間接効果が認められた(β= -.09,p=.04)。
本研究の結果から,中学生において,親の養育行動に対する子どもの認知が媒介することによって,子どもの社会的スキルに対する親の養育行動の影響性が変化することが示された。この結果を踏まえると,中学生の社会的スキルに対する支援において,親の養育行動に対するとらえ方の多様性を促進させることや,親の養育行動をモニタリングさせることなど,「子どもの認知」への介入を提案することが可能になると考えられる。