[PG075] 児童・生徒のLINEトラブルに関する基礎的研究(3)
トラブル行為を“する”ことに関連する要因
Keywords:LINEトラブル, 児童・生徒
問題と目的
現在,LINEをめぐるトラブルの報告は後を絶たず,学校現場ではその対応に苦慮している。本研究は,児童・生徒のLINEトラブルに関する一連の基礎的研究のうち,LINEのトラブル行為を“する”ことに関連する要因を明らかにするものである。
方法
A県の公立・私立の小・中・高等学校の児童・生徒を対象とする無記名式の質問紙調査を2014年10~12月に実施した。学校長に本研究の趣旨を説明して承諾を得られた学校において,学活等の時間に調査を実施した。回収は児童・生徒が個別に封入・密封したものをクラス単位で回収してもらい,研究者が学校単位で回収した。
調査内容は①LINE使用の有無,②LINEトラブル15項目(既読無視などコミュニケーションに関するトラブル,IDの暴露など個人情報の扱い関連のトラブル,性的内容の送信など非行に関連するトラブル等)について「した」経験の有無,ならびに経験がある場合,その影響を「考えた」「考えなかった」から選択,③LINE・インターネットに対する不適切な理解9項目,④LINE使用に対する保護者の指導・制限8項目,その他フェイス項目として学校種別,学年,性別に回答を求めた。回収された2,110(小学校524,中学校770,高等学校816)の質問紙のうち,質問紙の大半が未記入であり分析に適わないと判断したものを除外した2,085名分を分析対象とした。
結果と考察
LINE使用者は1,215名(全体の57.7%)であり,トラブル行為をしたことがあるとの回答は,項目によりばらつきがあった。また,その行為がどんな影響をもたらすかを考えた程度を「考えた」を1,「考えなかった」を0として得点化したところ,友人等身近な人とのコミュニケーションにおけるトラブル行為の場合と犯罪への関与が示唆される場合に得点が高く,実際の面識がない人との場合と性的な動画等の場合に低かった(表1)。
続いて,LINEをめぐるトラブル行為を“する”ことに関連する要因を明らかにするために,インターネットに対する不適切な理解(個人情報の軽視,匿名性の過信),保護者の指導・制限3変数を従属変数として,トラブル行為をした経験の有無によってt検定を行った。
その結果,トラブル⑨⑮以外では複数の変数において有意差が見られ,トラブル行為をすることと最も関連が強い要因は,インターネットに対する不適切な理解の「個人情報の軽視」,次いで「匿名性の過信」と保護者の指導・制限であった。
さらに,インターネットに対する不適切な理解と保護者の指導・制限とトラブル行為をする際に結果や影響を考えたかどうかとの関連を相関係数によって検討したところ,「⑨身近な人のLINEのIDをネット上に無断で書いた」が個人情報の軽視と負の相関(r=-.37),保護者の指導・制限との正の相関(r=.52)を示し,「⑮実際に会ったことのない人にLINEで連絡して犯罪まがいの誘いを実行した」でも個人情報の軽視と負の相関(r=-.51),保護者の指導・制限との正の相関(r=.44)を示す等,個人情報に対する適切な認識と保護者からのLINE使用に対する指導や制限は,児童・生徒がLINEをめぐるトラブル行為を行う際,自分の行為の影響を振り返らせることが明らかにされた。
これらの結果から,LINEをめぐるトラブルは友人等身近な人とのコミュニケーションに関するものは,その後の影響を考慮するという観点からは,それ以外のものと区別されていること,加えて,インターネット・リテラシーと保護者の指導や制限が,トラブル行為に対する一定の抑止力をもつ可能性が示唆された。
現在,LINEをめぐるトラブルの報告は後を絶たず,学校現場ではその対応に苦慮している。本研究は,児童・生徒のLINEトラブルに関する一連の基礎的研究のうち,LINEのトラブル行為を“する”ことに関連する要因を明らかにするものである。
方法
A県の公立・私立の小・中・高等学校の児童・生徒を対象とする無記名式の質問紙調査を2014年10~12月に実施した。学校長に本研究の趣旨を説明して承諾を得られた学校において,学活等の時間に調査を実施した。回収は児童・生徒が個別に封入・密封したものをクラス単位で回収してもらい,研究者が学校単位で回収した。
調査内容は①LINE使用の有無,②LINEトラブル15項目(既読無視などコミュニケーションに関するトラブル,IDの暴露など個人情報の扱い関連のトラブル,性的内容の送信など非行に関連するトラブル等)について「した」経験の有無,ならびに経験がある場合,その影響を「考えた」「考えなかった」から選択,③LINE・インターネットに対する不適切な理解9項目,④LINE使用に対する保護者の指導・制限8項目,その他フェイス項目として学校種別,学年,性別に回答を求めた。回収された2,110(小学校524,中学校770,高等学校816)の質問紙のうち,質問紙の大半が未記入であり分析に適わないと判断したものを除外した2,085名分を分析対象とした。
結果と考察
LINE使用者は1,215名(全体の57.7%)であり,トラブル行為をしたことがあるとの回答は,項目によりばらつきがあった。また,その行為がどんな影響をもたらすかを考えた程度を「考えた」を1,「考えなかった」を0として得点化したところ,友人等身近な人とのコミュニケーションにおけるトラブル行為の場合と犯罪への関与が示唆される場合に得点が高く,実際の面識がない人との場合と性的な動画等の場合に低かった(表1)。
続いて,LINEをめぐるトラブル行為を“する”ことに関連する要因を明らかにするために,インターネットに対する不適切な理解(個人情報の軽視,匿名性の過信),保護者の指導・制限3変数を従属変数として,トラブル行為をした経験の有無によってt検定を行った。
その結果,トラブル⑨⑮以外では複数の変数において有意差が見られ,トラブル行為をすることと最も関連が強い要因は,インターネットに対する不適切な理解の「個人情報の軽視」,次いで「匿名性の過信」と保護者の指導・制限であった。
さらに,インターネットに対する不適切な理解と保護者の指導・制限とトラブル行為をする際に結果や影響を考えたかどうかとの関連を相関係数によって検討したところ,「⑨身近な人のLINEのIDをネット上に無断で書いた」が個人情報の軽視と負の相関(r=-.37),保護者の指導・制限との正の相関(r=.52)を示し,「⑮実際に会ったことのない人にLINEで連絡して犯罪まがいの誘いを実行した」でも個人情報の軽視と負の相関(r=-.51),保護者の指導・制限との正の相関(r=.44)を示す等,個人情報に対する適切な認識と保護者からのLINE使用に対する指導や制限は,児童・生徒がLINEをめぐるトラブル行為を行う際,自分の行為の影響を振り返らせることが明らかにされた。
これらの結果から,LINEをめぐるトラブルは友人等身近な人とのコミュニケーションに関するものは,その後の影響を考慮するという観点からは,それ以外のものと区別されていること,加えて,インターネット・リテラシーと保護者の指導や制限が,トラブル行為に対する一定の抑止力をもつ可能性が示唆された。