The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PG

Fri. Aug 28, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PG076] 児童・生徒のLINEトラブルに関する基礎的研究(4)

トラブル行為を“された”ことに関する要因

山下みどり1, 若本純子2 (1.鹿児島県スクールカウンセラー, 2.佐賀大学)

Keywords:LINEトラブル, 児童・生徒, 影響

問題と目的
現在,無料アプリLINEは,児童・生徒にとって身近なコミュニケーションツールとなっている。しかし,LINEをめぐるトラブルは多々報告され,学校現場はその対応に追われている。本研究では,児童・生徒のLINEトラブルに関する一連の基礎的研究のうち,LINEトラブル行為を“された”ことに関する要因を明らかにする。
方法
A県の公・私立の小・中・高等学校の児童・生徒へ2014年10月~12月に無記名式の質問紙調査を実施した。学校長に本研究の趣旨を説明し,承諾を得られた学校に調査を依頼した。実施はクラス単位で行われ,児童・生徒本人が封筒に密封の上回収し,その後研究者が学校へ出向き回収した。
調査内容は以下のとおりである。①LINE使用の有無,②LINE使用頻度,③LINEトラブルされたこと・したこと15項目についてその有無と,されたことが「ある」場合,その時の気持ちを「とてもつらかった」「つらかった」「あまり気にならなかった」「まったく気にならなかった」から選択,した場合,その影響を「考えた」「考えなかった」から選択,④自尊感情測定尺度(東京都版)22項目,⑤フェイス項目として学校種別,学年,性別,⑥その他保護者の制限等の項目について回答を求めた。回答を得られた2,110名(小学校524名,中学校770名,高等学校816名)のうち,未記入等を除外した2,085名を分析対象とした。
結果と考察
LINE使用者は1,215名(全体の57.7%)であり,以下の結果はこれらの研究協力者から得られた。
トラブル行為をされたことがあるとの回答は項目によりばらつきがあった。また,その時の気持ちを「とてもつらかった」を4,「つらかった」を3,「あまり気にならなかった」を2,「まったく気にならなかった」を1として得点化したところ,友だちなど身近な人とのコミュニケーションにおけるトラブル行為やIDの暴露の場合,会ったことのない人からの犯罪への巻き込みの場合に得点が高く,会ったことのない人とのコミュニケーションにおけるトラブル行為の場合,得点が低かった(表1)。それらの得点から,身近な人との関係の中での悪口や暴露は当事者へつらい思いを与えており,また知らない人からの犯罪への巻き込みも同様であると考えられる。
次に,トラブル行為をされたことがあったときの気持ちと性別での関連をみると,多くの項目で男女に差がみられ(表2),どの項目も女子が男子に比べつらい気持ちが有意に高かった。特に,本人にとって直接的なトラブル行為(ブロック,悪口,送りつけ)に関して高い傾向がみられた。
さらに,された行為と自尊感情尺度との関連を相関係数にて検討したところ,「⑨友だちなどの身近な人から,LINEのIDを無断にインターネット上に書かれた」が,自尊感情の「自己評価・自己受容」と正の相関(r=.39),「関係の中での自己」と正の相関(r=.73),「自己主張・自己決定」と正の相関(r=.40)を示した。「関係の中での自己」との相関が高いことから,周りの人の存在を大切にしている児童・生徒ほどされたことによる影響が大きいことが示された。
これらの結果から,LINEトラブル行為は,友だちなど身近な人からされた直接的な行為ほど,まして相手との関係を大事にしている人にほど,当事者に与える影響は大きいことが示唆された。