日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PH

2015年8月28日(金) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PH003] 非専門家(大学生)による学校支援ボランティアに関する研究(8)

支援を受けている子どものメンタルヘルスおよび行動傾向

大西将史1, 廣澤愛子2, 笹原未来3, 松木健一4 (1.福井大学, 2.福井大学, 3.福井大学, 4.福井大学大学院)

キーワード:非専門家, 大学生, 学生ボランティア

【問題と目的】
近年,学校現場では,特別な支援を要する子どもへの支援の1つとして,大学生などの非専門家による学校支援ボランティア活動が広がりを見せている(文部科学省,2007)。著者らの所属する福井大学においても,教職志望の大学生が支援を行う『ライフパートナー(以下LP)事業』を展開している。これまで,LP活動の対象となる児童生徒の特徴や活動場所ごとの活動内容(大西ら,2013),LP活動が効果的に展開した事例の特徴(廣澤ら,2012,2013,2015;笹原ら,2012,2013,2015)及び活動を通しての学生の学び(大西,2015)について報告されている。本研究では,支援を受けている生徒のメンタルヘルスの状態および行動特性について,生徒本人への質問紙調査を実施した結果を報告する。
【方 法】
調査協力者 中学生391名(男209名,女182名)を対象に質問紙調査を実施した.1年生は男子76名,女子69名,2年生は男子52名,女子57名,3年生は男子81名,56名)であった.
調査内容
⑴ DSRS-C短縮版 抑うつの指標として,Birleson Depression Self-Rating Scale for Children(DSRS-C)の短縮版(並川ら,2011)9項目を用いた。「そんなことはない」~「いつもそうだ」の3件法で回答を求めた。
⑵ HAQ-C短縮版 攻撃性の指標としてBussらのBuss-Perry Aggression Questionnairの日本語版(坂井ら,2000)の短縮版(谷,2014)8項目を用いた。「全く当てはまらない」から「とてもよく当てはまる」までの5件法で回答を求めた。
⑶ 日本版Strengths and Difficulties Questionnaire行動傾向の指標として,SDQ25項目を用いた。原田ら(2014)によって標準化が行われている。「当てはまらない」から「当てはまる」までの3件法で回答を求めた。
手続き 各クラスで質問紙を配布し回答を求めた。調査は12月中中旬に行った。
【結果と考察】
LPによる支援対象生徒および支援対象ではない一般生徒の抑うつ,攻撃性,およびSDQの各下位尺度および,それぞれの標準得点による偏差値を算出した(Table 1)。
偏差値に着目すると,一般群においては,各尺度得点の平均値のほとんどが平均値付近にあったのに対して,LP支援対象生徒においては,平均値よりもやや高い値を示すものが見られた。
各尺度得点(粗点)について,両グループの比較を行った結果,攻撃性とSDQ多動性・衝動性及びSDQ友人関係問題においてLPの支援対象生徒の方が一般生徒よりも有意に得点が高かった。抑うつにおいては,差が有意傾向であった。
また,各尺度の相関を検討した結果,向社会的行動以外の尺度得点間に有意な相関がみられた(Table 2)。
抑うつは情緒不安定および友人関係問題と関連が強く,攻撃性は,問題行動と関連が強いことが示唆された。
今後は教師の評価との関連を検討することが課題である。