The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PH

Fri. Aug 28, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PH004] 高校中退リスク評価尺度(RASHD)の開発(2)

縦断的調査を通した予測的妥当性の検討

小栗貴弘 (作新学院大学女子短期大学部)

Keywords:高校, 中退, 不登校

問題と目的
文部科学省(2014)によれば,平成25年度の高校中退者数は全国で約6万人に上る。高校中退が大きな社会問題となるにつれて,中退者に中退理由を問う方法で,その原因を明らかにしようとする研究が蓄積されてきた。しかしながら,竹綱ら(2009)が指摘するように,中退者に理由を問うという方法では,高校を中退したという結果を正当化する方向でバイアスがかかる危険性がある。この危険性を回避するためには,生徒が在学している時期から原因となりうる情報を収集し,中退との関連を検討するという縦断的な研究を行なう必要があるが,このような手続きをとった研究は少ない(竹綱,2001)。
そこで,本研究では小栗(2015)が開発した高校中退リスク評価尺度(RASHD;Risk Assessment Scale for High School Dropout)を用いた縦断的な調査を通して,高校中退の予測的妥当性について検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 全日制高校2校,定時制高校2校,通信制サポート校2校の1~2年生の生徒813名および教員。
調査時期 X年11月に生徒へ質問紙調査を実施した。また,調査を実施した生徒のX+1年3月末時点の予後(登校・不登校・中退)について,同年4月に各校の教員へ回答を求めた。
調査内容 RASHDを用いた。RASHDは33項目で構成され,小栗(2015)によって「登校義務感」「学級満足感」「友達サポート」「親サポート(道具的)」「親サポート(心理的)」「教員サポート」「積極的学習態度」の7因子構造になること,および信頼性が確認されている。
結 果
カットオフ・ポイントの設定 中退した生徒37名のX年11月時点のRASHD得点についてパーセンタイル順位を算出し,60%の中退者が含まれる得点をカットオフ・ポイントとした。したがって,RASHD得点が111点以下の生徒を中退の「高リスク群」,112点以上の生徒を「低リスク群」と定義した。
中退リスクと予後の関連 予測的妥当性を検討するために,X年11月時点の中退リスクとX+1年3月時点の予後について,2要因(2×3)のクロス分析をχ2検定で行なった(Table1)。その結果,中退リスクと予後の関連が有意であった(χ2 (2)=57.14,p<.001)。次に,どのセルにおいて有意な関連が認められたのかを確認するため,残差分析を行なった。その結果,全てのセルで観測度数と期待度数の有意差が認められ,高リスク群では予後で登校群に分類された生徒が有意に少なく,不登校群や中退群に分類された生徒が有意に多かった。
考察
高リスク群と判断されたのは813名中266名であった(全体の33%)。そのうち,26%にあたる69名の生徒が予後において不登校になったり中退したことになる。また,中退した生徒37名のうち59%にあたる22名を,中退リスクが高いと予測しており,RASHDを用いた中退リスク評価の予測的妥当性がある程度確認された。今後は高リスク群への効果的な介入方法の開発が望まれる。
謝辞
本研究はJSPS科研費(若手研究B,課題番号:26780359)の助成を受けて行なわれた研究の一部です。