日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PH

2015年8月28日(金) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PH005] クリッカーを活用した幼稚園教師の行動観察力の可視化(Ⅱ)

熟達者による可視化資料との比較分析を通して

川端愛子1, 小田進一#2, 植木克美3, 後藤守4 (1.北海道文教大学, 2.北海道文教大学, 3.北海道教育大学, 4.北海道文教大学)

キーワード:幼稚園教師, ペンギンメソッド, PF-NOTE

【はじめに】
本研究は「クリッカーを活用した幼稚園教師の行動観察力の可視化(日本発達心理学会第26回大会)」に続くものである。本研究では,前報と同様に,幼稚園教師(以下,教師という)に対して,保育実践における高度な発達支援力を獲得させるところに焦点をあてている。ここでは,後藤らが開発した「ペンギンメソッド」による学生たちの保育実践を分析素材とした。
ペンギンメソッドは「子どもの表出行動に対する応答性のある環境作り」と「場の構造化」を重視している。また,分析のツールとして,PF-NOTEプロトタイプ(中島,2008)を活用している。このツールを活用して,教師たちがどのような視点から保育場面をとらえているかを熟達者の可視化資料との比較によって明らかにすることを目的にする。なお,ここでは,保育実践の「いい場面」 に関する可視化グラフの波形に焦点をあてて研究を行う。
【研究の方法】
1.研究対象:教師群(教師5名)男性1名,女性4名。熟達者(ペンギンメソッド考案者)1名。
2.分析対象:学生2名(チーフティチャー・サブティチャー担当),母親3名,子ども7名の合計12名がプレィルームで保育支援活動をしている場面を分析対象にした。
3.PF-NOTEプロトタイプによる可視化資料の作成:25分8秒間のビデオ映像を60秒単位で可視化グラフを作成する。
【結果および考察】
図1・図2は,教師群および熟達者が「いい場面」と判断した場面のクリック数の結果をグラフ化したものである。それぞれクリック数の多い場面を3つ抽出し,それらの山に丸い囲みを入れた。
図1の教師群によるグラフと対応した場面の映像を見てみると,第1場面「母と子が一緒にブロックカーで軸空間に立ち寄りチーフからブロックをもらっている場面」,第2場面「子どもたちが一緒にめいめいのブロックカーに乗って舞台周辺の空間を回っている場面」,第3場面「子どもたちが一緒にまわっているブロックカーに小さな子どもがブロックを足してあげようとしている場面」から構成されている。
これに対して,図2の熟達者のグラフでは,教師群と特徴的差異があることが認められる。両者の特徴的差異を見てみると,その1つは熟達者の第1場面に表れている。この場面は,指導者と子どもと母親たちが一緒に,オリジナル曲「ペンギンルームのおともだち」の歌を歌って,呼吸合わせをしている場面である。2つ目の教師群との差異は,台形型のグラフから構成される熟達者の第2場面に表れている。このグラフの特徴は,活動が重層化し,連続していることを意味している。3つ目の特徴的差異は,熟達者の第3場面に表れている。これは,指導の終盤に入って,活動の収束のために,子どもたちを中心にして「ペンギンルームのおともだち」の歌を歌っている場面である。
これらの結果を総合的に見て,教師群はどちらかといえば,エピソードを中心に分析しているのに対して,熟達者は,文脈と場の構造化を重視していることが明らかにされた。