日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PH

2015年8月28日(金) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PH008] 中学校に勤務する養護教諭が生徒の心の健康問題に気づくサインの特徴

松嵜英士1, 田中美恵子#2, 日沼千尋#3, 小川久貴子#4, 小山達也#5, 飯塚あつ子#6 (1.東京女子医科大学, 2.東京女子医科大学, 3.東京女子医科大学, 4.東京女子医科大学, 5.東京女子医科大学, 6.東京女子医科大学)

キーワード:養護教諭, 心の健康問題, 中学生

問題
平成20年の「子どもの心身の健康問題の解決」に向けた中央教育審議会答申をうけて,学校保健安全法に,養護教諭やその他の職員と連携した,健康観察,健康相談,保健指導,学校と医療機関等との連携が新たに位置付けられ,養護教諭の行う健康相談活動がますます重要であることが提言されている。健康相談活動は,養護教諭の職務の活動の特質をいかした活動と定義され,「心の健康問題と身体症状」に関する知識の理解,カウンセリング能力などの資質が求められるとされている。また現在,スクールカウンセラーや心の教室相談員が配置され,養護教諭は,教職員や心の専門家と連携をはかりながら,生徒の心の健康問題の支援で中心的かつ継続的な役割を果たすことが求められている。
研究者らは,養護教諭がどのような生徒の心の健康問題に直面し,どのように支援を行っているのかを明らかにすることを目的として,中学校に勤務する養護教諭を対象とし調査を実施・分析している。本報告は,養護教諭が生徒の心の健康問題に気づくサインの特徴を分析し,心の健康問題に対する生徒への関わりの程度,基本的属性との関連性を分析した結果である。
研究方法
1.調査協力者
調査を依頼した全国の中学校の養護教諭より回答のあった1804名のうち,有効と判断した1531名分のデータを分析対象とした。
2.調査内容
調査用紙は,養護教諭の経験年数,スクールカウンセラーの配置の有無などの属性と養護教諭が関わる心の健康問題の程度,生徒の心の健康問題に気づくサインなどの項目に回答を求める内容から構成されている。
3.調査期間
調査期間は,2014年4月から6月。
4.倫理的配慮
研究協力の自由意志の尊重・プライバシーの保護・所属する組織の匿名性等を図り,学校名は特定されないようにした。尚,本研究は,東京女子医科大学倫理委員会の承認を得ている(承認番号3023)。
結果と考察
生徒の心の健康問題に気づくサイン42項目については,因子分析(主因子法,Promax回転)を行い,因子構造を検討し,負荷量が低い項目や多重負荷をもつ項目を排除しつつ分析を繰り返し,「行動や態度にあらわれるサイン」「体調にあらわれるサイン」「学習状況にあらわれるサイン」「表情に表れるサイン」「友人関係にあらわれるサイン」の5因子25項目を採用し,因子ごとに得点化した。関わる心の健康問題の程度に関する17項目についても同様な因子分析を行い「精神疾患,ストレス性障害」「発達障害,引きこもり」の2因子11項目を採用し得点化した。
心の健康問題として気づくサインについては,「体調にあらわれるサイン」が多く,「学習状況にあらわれるサイン」については少ない傾向が示された。関わる健康問題に程度については,「発達障害,引きこもり」が多く,「精神疾患,ストレス性障害」が少ない傾向が示された。養護教諭が関わる心の健康問題の程度の因子と心の健康問題に気づくサインの因子の間には有意な相関が見られ,両者の関連性が示唆された。
養護教諭としての経験年数,教員免許の種類やスクールカウンセラーの配置の有無などによって,健康問題として気づくサインや関わる心の健康問題の程度が異なることも示されたが,調査協力者の属性との関連性についてはさらなる検討が必要である。

本研究は,科学研究費補助金(基盤研究B/課題番号23390524・研究代表者:田中美恵子)による。