[PH009] クラスワイドで取り組むPBISを活用した実践に関する研究(1)
第1層支援の取り組み
キーワード:PBIS, 第1層支援, 規範意識の向上
1.問題と目的
石隈(1999)は学校心理学の枠組みから,3段階の心理教育的援助サービスを提唱している。また文部科学省(2010)も,集団指導と個別指導を進める指導原理として,生徒指導事象を第1次から第3次的支援に分けて指導する必要性を示している。栗原(2013)は支援を3段階のレベルに分けてアプローチする「マルチレベルアプローチシステム」を開発し,心理教育的支援を用いた実践を報告している。その中で第1次的支援の重要性と有効性を示し,学級担任による支援の充実の必要性を挙げている。
ところでアメリカでは近年,階層支援をスクールワイドで行う生徒指導システム,PBIS(Positive Behavioral Interventions and Supports:肯定的な行動の介入とその支援)の導入を進めている。PBISは問題行動の減少,子ども本人の適応行動スキルの増加,そして子どもたちの QOLの向上を目指したもので,2002年の「No Child Left Behind(落ちこぼれ防止法)」の施行以来,児童・生徒の行動面への支援として広く全米で普及しつつある(Barnes, 2013)。
そこで本研究は,わが国でのPBISにおける第1層支援の試みとして,PBISを活用し,クラスワイドでPBISに取り組むことが可能なプログラムを開発し,その実践の効果等について検討する。
2.方法
実施学級:公立A小学校5年生1学級38名(男子20名,女子18名)に実施。
時期:X年11月中旬から12月下旬までの全7回(1回45分)の授業を行った(Table1)。教科は総合的な学習の時間に実施した。学級児童が主体的に肯定的な行動指針を作成し,それに基づいて児童相互で認め合う活動を行い,規範意識の向上を目指した(Table2)。
効果測定用具:学校適応感尺度(Q-U, 河村, 2000)を用いた。
3.結果
t検定の結果,学校満足群に有意な差が認められた(t(72)=-2.13 p<.05, Fig.1)。
4.考察
Fig1より,学級児童の学級満足度が有意に高まったことが示唆された。
実際,子どもたちの様子を見てみると,自分たちで学級の規範を考える気運が高まり,学級環境を良くしていこうとする意欲が高まったように思われる。それはPBISシステムが,単に問題行動の改善を子ども個人に求めるのではなく,指導スタッフも含めた人的環境の改善こそが,大切であるという視点を提供したからであろう。また,行動指針の策定では,子どもの主体性を尊重し,個々の変化を促す環境をつくることを目的として行ったことが,功を奏したものと解せられた。子どもの同意形成を図りつつ,プログラムを開発し導入していくことは,学級の共同性意識の向上につながることが推察される。今後は共同性意識の高まりによって,学習環境にどのような影響を及ぼすかを検討し,スクールワイドで取り組むPBISの実現に向けて,研究を進めていきたい。
石隈(1999)は学校心理学の枠組みから,3段階の心理教育的援助サービスを提唱している。また文部科学省(2010)も,集団指導と個別指導を進める指導原理として,生徒指導事象を第1次から第3次的支援に分けて指導する必要性を示している。栗原(2013)は支援を3段階のレベルに分けてアプローチする「マルチレベルアプローチシステム」を開発し,心理教育的支援を用いた実践を報告している。その中で第1次的支援の重要性と有効性を示し,学級担任による支援の充実の必要性を挙げている。
ところでアメリカでは近年,階層支援をスクールワイドで行う生徒指導システム,PBIS(Positive Behavioral Interventions and Supports:肯定的な行動の介入とその支援)の導入を進めている。PBISは問題行動の減少,子ども本人の適応行動スキルの増加,そして子どもたちの QOLの向上を目指したもので,2002年の「No Child Left Behind(落ちこぼれ防止法)」の施行以来,児童・生徒の行動面への支援として広く全米で普及しつつある(Barnes, 2013)。
そこで本研究は,わが国でのPBISにおける第1層支援の試みとして,PBISを活用し,クラスワイドでPBISに取り組むことが可能なプログラムを開発し,その実践の効果等について検討する。
2.方法
実施学級:公立A小学校5年生1学級38名(男子20名,女子18名)に実施。
時期:X年11月中旬から12月下旬までの全7回(1回45分)の授業を行った(Table1)。教科は総合的な学習の時間に実施した。学級児童が主体的に肯定的な行動指針を作成し,それに基づいて児童相互で認め合う活動を行い,規範意識の向上を目指した(Table2)。
効果測定用具:学校適応感尺度(Q-U, 河村, 2000)を用いた。
3.結果
t検定の結果,学校満足群に有意な差が認められた(t(72)=-2.13 p<.05, Fig.1)。
4.考察
Fig1より,学級児童の学級満足度が有意に高まったことが示唆された。
実際,子どもたちの様子を見てみると,自分たちで学級の規範を考える気運が高まり,学級環境を良くしていこうとする意欲が高まったように思われる。それはPBISシステムが,単に問題行動の改善を子ども個人に求めるのではなく,指導スタッフも含めた人的環境の改善こそが,大切であるという視点を提供したからであろう。また,行動指針の策定では,子どもの主体性を尊重し,個々の変化を促す環境をつくることを目的として行ったことが,功を奏したものと解せられた。子どもの同意形成を図りつつ,プログラムを開発し導入していくことは,学級の共同性意識の向上につながることが推察される。今後は共同性意識の高まりによって,学習環境にどのような影響を及ぼすかを検討し,スクールワイドで取り組むPBISの実現に向けて,研究を進めていきたい。