日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PH

2015年8月28日(金) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PH010] クラスワイドで取り組むPBISを活用した 実践に関する研究(2)

第2層支援の取り組み

松山康成1, 池島徳大2 (1.寝屋川市立東小学校, 2.奈良教育大学大学院)

キーワード:特別支援教育, PBIS(肯定的な行動介入と支援), 多層支援

1.問題と目的
池島・吉村(2009)は、Demchak, M. A. & Bossert,K.W.(1996)が開発した「行動問題に対する機能的アセスメント」を実施し、特別な教育的ニーズのある児童に対して、学級担任が行動問題の改善を図る取り組みを行っている。また関戸・田中(2010)はPBS(積極的行動支援)を学級に導入し、学級全体での支援を行った後に、個別支援を行うことにより、より円滑な支援が可能であったことを示唆している。
このように学級担任による個別支援は、わが国において近年着目されつつある取り組みであるが、アメリカでは近年、これをスクールワイドで行う生徒指導システム、PBIS(Positive Behavioral Interventions and Supports:肯定的な行動の介入とその支援)の導入を進めている。全3層の多層支援で行われるPBISの第2層支援では行動の改善が見られない児童生徒を対象とし、個別にCICO(Check-in/Check-out)という用紙を使用し、授業時間で行動問題が見られたかどうかのチェックを受けるという取り組みが行われている。
そこで本研究では、わが国でのPBISにおける第2層支援の試みとして、CICOのような学級担任が同時に複数の教育的ニーズのある児童に個別支援できる支援モデルを、認知行動療法において行動変容の支援の手法として用いられるトークン・エコノミー法と、解決志向アプローチで用いられるスケーリング・クエスチョン技法を統合したモデルを開発し、実践することを目的とした。
2.方法
対象者:公立A小学校に在籍する特別支援学級児童1名(A児)、特別な教育的ニーズのある児童2名(B,C児)。
時期:個別の行動支援Table1の手順で、A児が9月25日から11月19日までの全38回。B児10月23日から11月19日までの全19回。C児が10月24日から11月19日までの全18回、それぞれ行った。
効果測定用具:学校適応感尺度(山田・米沢,2011)をチェックシート実施前、実施後に行った。また、クラスの友達から遊びたいと恩われているかを検討するために,ソシオメトリック測度における肯定的指名法を用いて、チェックシート実施前と実施後、実施から3ヶ月後に指名させた。
3.結果
⑴ 学校適応感
学校適応感の結果をTable2に示す。
⑵ 仲間からの受容度
仲間からの受容度はA児(2人→3→8人),B児(3人→4人→7人)、C児(4人→4人→4人)と推移した(Fig1)。
4.考察
学級担任の指導によって、対象者それぞれの教師サポートは向上した。さらに全員ではないが、非侵害的関係や学習的適応の向上も見られた。また、米国で行われているPBISシステムは、行動問題の改善を子ども個人に求めるのではなく、指導スタッフも含めた環境の改善こそが、大切であるという視点を持った実践である。学級児童は、A児が10点でなければ、ごほうびの達成まで日が遠くなってしまうことを知っていた。そこで、学級担任に声をかけたようだ。このように、あと1点分のいい行動に目を向けることができること、それが子どもたちの自浄作用となり、子ども同士の肯定的行動の強化・般化につながっているのではないだろうか。
以上のことから、本研究で開発したモデルは、基盤的支援と同時に行いつつモデルを活用することによって、教育的ニーズのある児童に対する援助モデルの一つとして有効となるということが示唆された。今後はスクールワイドで取り組むPBISの実現に向けて、研究を進めていきたい。