[PH011] 中学生の持つ登校回避感情と登校理由
担任教師の把握とのズレに注目して
キーワード:登校回避感情, 中学生, 教師用RCRT
【問 題】
昨今の教育現場における大きな問題の一つに不登校の問題が挙げられる。その背景には,「学校へ行きたくない」と感じながら登校している登校回避群ともいえる生徒の存在がある。稲村(1994)は登校回避群について不登校のグレイゾーンとして取り上げており,教師や公式統計からは見えにくい不登校であると述べている。有賀(2013)は生徒が持つ登校回避感情の特徴を明らかにすることで,不登校の予防や早期支援が可能になると述べている。しかし,彼らへのサポートは明確化されているとは言い難い。では,登校回避群の生徒は,何を支えに登校しているのだろうか。また,先に述べたように教師は,登校回避群を認知できていない。その点を含めて教師の認知構造は,指導行動や学級雰囲気に現れ,生徒の学校適応に影響する(塚本,2006)とされている。
そこで本研究では,生徒の視点と,教師の視点から,2つの研究を行っていく。
研究1
【目的】
登校回避群が,登校している理由を明らかにする。同時に,教師が考える彼らへ必要なサポートも調査する。
【方法】
中学生,担任教師への質問紙調査を行った。調査対象者は3年生の生徒,277名。3年生の各クラス担任および副担任の教師,13名。質問紙の内容は,生徒用:「①登校回避感情尺度(渡辺・小石, 2000)」,全26項目②「山本(2007),清水(2010)のカテゴリーをKJ法により再分類して作成した登校理由についての項目」,教師用:「上記②に対応する項目の教師版」,「上記②に対応する項目に関して,登校回避群の生徒にどの程度支援を行うかを問う質問」
【結果と考察】
登校回避感情尺度得点を使用して,群わけを行った。その結果,登校回避群46名,普通登校群177名,積極登校群53名となった。
因子分析の結果,登校理由について6つの因子ができた。第一因子は「交流の楽しさ」,第二因子は「世間体」,第三因子は「社会常識」,第四因子は「勉強好き」,第五因子は「自助努力」,第六因子は「消極的選択」とそれぞれ名づけた。群間差が見られたのは,第一,第二,第四,第五因子であった。
登校回避群には自分自身のために登校したいという理由よりも,世間体や,義務教育という枠で仕方なく,他者や社会からの影響を受けて登校しているといえる。
研究2
【目的】
教師の認知構造の中で登校回避群がどのような位置にいるか探索する。
【方法】
教師が登校回避群をどのように認知しているのかを調査するため,「教師がどのような視点から子どもをとらえているか」を明らかにする教師用RCRT(近藤,1996)を用いて,担任教師のクラス認知図を作成した。調査対象者は3学年の担任7名である。記入ガイド資料と回答用紙をメールで添付して送り,回答後返信してもらった。匿名性を保証するため,クラス名には実際のクラスとは異なるアルファベットを振り分けた。さらに,それをもとにインタビュー調査を行った。
【結果と考察】
全46名の登校回避群のうち,教師が心配な子としてあげたのは4名であった。クラスに存在する登校回避群について,教師は心配な生徒としてほとんどあげることはなかった。つまり,多くの登校回避群は注目をされていないと言えるだろう。
教師は印象の薄い生徒には目が向きづらく,ウマが合わない生徒と評価しがちである。そう評価されてしまうと,教師との交流の機会も少なくなり,登校理由がネガティブなものへと偏ってしまう。
こうした結果を見ていくと,登校回避群がいかに他者との交流を必要としているかがわかる。わかってもらえていない状態を脱し,交流の楽しさを真に知った時,彼らの登校回避感情は薄れていくのである。
昨今の教育現場における大きな問題の一つに不登校の問題が挙げられる。その背景には,「学校へ行きたくない」と感じながら登校している登校回避群ともいえる生徒の存在がある。稲村(1994)は登校回避群について不登校のグレイゾーンとして取り上げており,教師や公式統計からは見えにくい不登校であると述べている。有賀(2013)は生徒が持つ登校回避感情の特徴を明らかにすることで,不登校の予防や早期支援が可能になると述べている。しかし,彼らへのサポートは明確化されているとは言い難い。では,登校回避群の生徒は,何を支えに登校しているのだろうか。また,先に述べたように教師は,登校回避群を認知できていない。その点を含めて教師の認知構造は,指導行動や学級雰囲気に現れ,生徒の学校適応に影響する(塚本,2006)とされている。
そこで本研究では,生徒の視点と,教師の視点から,2つの研究を行っていく。
研究1
【目的】
登校回避群が,登校している理由を明らかにする。同時に,教師が考える彼らへ必要なサポートも調査する。
【方法】
中学生,担任教師への質問紙調査を行った。調査対象者は3年生の生徒,277名。3年生の各クラス担任および副担任の教師,13名。質問紙の内容は,生徒用:「①登校回避感情尺度(渡辺・小石, 2000)」,全26項目②「山本(2007),清水(2010)のカテゴリーをKJ法により再分類して作成した登校理由についての項目」,教師用:「上記②に対応する項目の教師版」,「上記②に対応する項目に関して,登校回避群の生徒にどの程度支援を行うかを問う質問」
【結果と考察】
登校回避感情尺度得点を使用して,群わけを行った。その結果,登校回避群46名,普通登校群177名,積極登校群53名となった。
因子分析の結果,登校理由について6つの因子ができた。第一因子は「交流の楽しさ」,第二因子は「世間体」,第三因子は「社会常識」,第四因子は「勉強好き」,第五因子は「自助努力」,第六因子は「消極的選択」とそれぞれ名づけた。群間差が見られたのは,第一,第二,第四,第五因子であった。
登校回避群には自分自身のために登校したいという理由よりも,世間体や,義務教育という枠で仕方なく,他者や社会からの影響を受けて登校しているといえる。
研究2
【目的】
教師の認知構造の中で登校回避群がどのような位置にいるか探索する。
【方法】
教師が登校回避群をどのように認知しているのかを調査するため,「教師がどのような視点から子どもをとらえているか」を明らかにする教師用RCRT(近藤,1996)を用いて,担任教師のクラス認知図を作成した。調査対象者は3学年の担任7名である。記入ガイド資料と回答用紙をメールで添付して送り,回答後返信してもらった。匿名性を保証するため,クラス名には実際のクラスとは異なるアルファベットを振り分けた。さらに,それをもとにインタビュー調査を行った。
【結果と考察】
全46名の登校回避群のうち,教師が心配な子としてあげたのは4名であった。クラスに存在する登校回避群について,教師は心配な生徒としてほとんどあげることはなかった。つまり,多くの登校回避群は注目をされていないと言えるだろう。
教師は印象の薄い生徒には目が向きづらく,ウマが合わない生徒と評価しがちである。そう評価されてしまうと,教師との交流の機会も少なくなり,登校理由がネガティブなものへと偏ってしまう。
こうした結果を見ていくと,登校回避群がいかに他者との交流を必要としているかがわかる。わかってもらえていない状態を脱し,交流の楽しさを真に知った時,彼らの登校回避感情は薄れていくのである。