The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PH

Fri. Aug 28, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PH012] 自己決定理論における心理的欲求充足と学校適応感の関連について(2)

中学生を対象として

吉崎聡子 (弘前大学)

Keywords:自己決定理論, 心理的欲求, アセス

問題と目的
Deci&Ryanの自己決定理論では,心理的欲求の充足は主観的幸福感に関連するとされている。大久保・長沼・青柳(2003)は適応も幸福感の一側面であるとし,心理的欲求充足と学校適応感の関連を検討している。この学校適応感とは,学校に関わることについての,個人と環境の主観的な関係のことであり,学校への適応の一指標である(栗原,2013)。大久保他(2003)では,学校適応感として,「居心地の良さの感覚」「課題・目的の存在」「被信頼・受容感」「劣等感の無さ」の4つを挙げている。しかし学校適応感には学校以外の場面での適応状態も影響すると栗原(2013)は述べる。そこで,本研究では,学校以外の場面での影響を考慮に入れ,中学生の心理的欲求充足と学校適応感の関連を検討することを目的とする。
方法・手続き
対象は,A県B中学校全生徒。調査実施日に登校していた258名(1年男41・女42,2年男45・女51,3年男31・女49)を対象とした。学級担任に実施マニュアル,質問紙を郵送し調査実施を依頼した。調査実施時期は2013年10月。
質問紙の構成
Ⅰ 学校環境適応感尺度(以下アセス):栗原・井上(2010)の子どもの学校環境における適応感を測定する尺度。34項目,5件法。Ⅱ心理的欲求充足尺度(以下心理的欲求):大久保他(2003)がDeci & Ryan(2000)の“The Basic Need Satisfaction in Life Scale”を翻訳した尺度。21項目,5件法。
結果と考察
アセス,心理的欲求共に,各下位因子(教師サポート,友人サポート,向社会的スキル,侵害的関係,学習適応感,生活満足感/自律性欲求,コンピテンス欲求,関係性欲求)それぞれに該当する各項目の和を,項目数で除したものを下位因子得点として使用する。被調査者全体での各平均下位因子得点(SD)は,教師サポート3.65(.83),友人サポート3.85(.92),向社会的スキル3.66(.76),侵害的関係2.12(.89),学習適応感2.84(.87),生活満足感3.12(1.03)/自律性欲求3.03(.73),コンピテンス欲求3.08(.80),関係性欲求3.83(.76)であった。
心理的欲求充足と学校適応感の関連を検討するため,大久保他(2003)にならい,アセス7下位因子を目的変数,心理的欲求充足3下位因子を説明変数として,重回帰分析(強制投入法)を行った(表1)。
さらに,学年の影響を確認した。学年をダミー変数として説明変数に加え,学年,心理的欲求充足を説明変数とし,アセス7下位因子を目的変数とした階層的重回帰分析(強制投入法)を行った。
教師サポートでは,R2adj=.24(p<.001)となり,Bより,中1年に対して中3年が有意に.40低かった。友人サポートでは,R2adj=.57(p<.001)と有意な値が得られた。しかし学年には有意な値は見られなかった。向社会的スキルでは,R2adj=.35(p<.001)となり,Bより,中1年に対し中2年が.36,中3年が.45有意に低いという結果を得た。侵害的関係では,R2adj=.40(p<.001)となり,またBより,有意に中1年に対し中3年が.33低いと言えた。なお,侵害的関係は値が大きいほど侵害的状況にあるということを示す。学習的適応では,R2adj=.16(p<.001),Bの値より,有意に中1年に対し中2年が.36,中3年が.46低いと言えた。対人的適応では,R2adj=.66(p<.001)となったが,学年に有意な効果は見られなかった。生活満足感では,R2adj=.54(p<.001)であった。対人的適応と同じく学年に有意な効果は見られなかった。
心理的欲求の充足は,学校適応感に対して約30%から70%の説明率を持つことから,中学生の学校適応感へ影響を及ぼす有力な要因であるといえるだろう。しかし,学習的適応に対しては,有意ではあるが全体の15%程度しか予測できず,欲求充足以外の要因の検討が必要であろう。