[PH015] 大学受験の捉え方とキャリア選択自己効力感,キャリア選択結果期待の関係
Keywords:社会・認知的キャリア理論, キャリア選択自己効力感, 大学受験
問題と目的
Lent,Brown,&Hackett(1994)の社会・認知的キャリア理論(Social Cognitive Career Theory:SCCT)は自己効力感,結果期待を中心にキャリアに関する興味,選択,遂行への影響過程を示す3つのモデルを提示している。それらのモデル内では達成結果が次のキャリア選択自己効力感の情報源に影響している過程も示されている。しかし,SCCTに基づく先行研究(e.g.,児玉,2012)では,それまで経験した進路選択,キャリア選択のキャリア選択自己効力感への影響を検討してはいない。よって,本研究はSCCTを基に,大学生のそれまで経験した進路選択結果の,キャリア選択自己効力感への影響を検討する。それまで経験した進路選択として,大学生にとって時間的に近い進路選択である大学受験を取り上げる。また,Bandura(1995 本明他訳 1997)が指摘したように,自己効力感の形成には過去の経験そのものではなく,その経験の捉え方が重要であると考え,遂行結果に関して持っている主観的な捉え方による影響を検討することとする。
以上のように本研究の目的は,大学生の大学受験の捉え方の,将来のキャリア選択自己効力感,ならびにキャリア選択結果期待への影響を検討することである。それに先立ち,大学受験の捉え方を測定する尺度も作成する。
方法
調査時期と手続き 2014年10~11月,関東圏内の私立大学2校において授業時間内に質問紙の一斉配布により実施した。
参加者 大学生231名(A大学140名,B大学91名;男性112名,女性119名;1年生91名,2年生61名,3年生79名)であった。
使用測度 1.大学受験の捉え方 事前に先行研究(e.g.,Usher &Pajares, 2009)や大学受験の情報サイト(e.g., 株式会社Z会,2014a, 2014b)を参考に42項目を作成し,予備調査を行った。その結果から,大学受験と大学受験期間をどのように感じているのかを表す22項目を採用した。5件法。2.キャリア選択に対する自己効力感 花井(2008)のキャリア選択自己効力感尺度(Career Choice Self-Efficacy Scale::CCSE)25項目を使用した(α=.931)。4件法。3.キャリア選択に対する結果期待 Betz,&Voyten(1997)を邦訳した安達(2001a)のキャリア選択に対する結果期待尺度4項目を使用した(α=.760)。5件法。
結果と考察
大学受験の捉え方尺度の因子分析 大学受験の捉え方尺度22項目の因子分析を主因子法Promax回転で行った。その結果3因子15項目が得られ,累積寄与率は55.97%であった。各因子を構成する項目内容から第1因子8項目を「努力成功経験」(α=.878),第2因子4項目を「受験時不安経験」(α=.841),そして第3因子3項目を「失敗経験」(α=.785)とした。
大学受験の捉え方,CCSE,結果期待の関係 大学受験の捉え方の3下位因子,CCSE,結果期待の関係を共分散構造分析によって検討した。その結果得られたモデルをFigure 1に示す。モデルの適合度はχ2=1.310(df=3, α=.727),GFI=.996,AGFI=.981,CFI=1.000,RMSEA=.000であり,適合度は十分であると判断した。
努力成功経験はCCSEへ正のパス(β=.49, p<.001)を示し,努力をした結果合格したという大学受験の捉え方が次の進路選択である就職活動や職業決定に必要な行動への自信を予測することがわかった。しかし,結果期待への影響は示されなかった。受験時不安経験からはCCSEに負のパス(β=-.23, p<.01),結果期待に正のパスが見られ(β=.26, p<.001),大学受験時に不安があったと捉えていると次のキャリア選択への自信を低める一方,行動の結果への確信や期待は高めるという興味深い結果となった。失敗経験からは有意なパスが得られず,大学受験はうまくいかなかったと捉えていることはこれからのキャリア選択へほとんど影響しないと言える。CCSEはキャリア選択結果期待へ正のパス(β=.30,p<.001)を示し,SCCTを支持する結果となった。
以上から,大学生にとって前回の進路選択行動であった大学受験をどのように捉えているかが,将来のキャリア選択に対する自己効力感,結果期待に影響を及ぼすことがわかった。
Lent,Brown,&Hackett(1994)の社会・認知的キャリア理論(Social Cognitive Career Theory:SCCT)は自己効力感,結果期待を中心にキャリアに関する興味,選択,遂行への影響過程を示す3つのモデルを提示している。それらのモデル内では達成結果が次のキャリア選択自己効力感の情報源に影響している過程も示されている。しかし,SCCTに基づく先行研究(e.g.,児玉,2012)では,それまで経験した進路選択,キャリア選択のキャリア選択自己効力感への影響を検討してはいない。よって,本研究はSCCTを基に,大学生のそれまで経験した進路選択結果の,キャリア選択自己効力感への影響を検討する。それまで経験した進路選択として,大学生にとって時間的に近い進路選択である大学受験を取り上げる。また,Bandura(1995 本明他訳 1997)が指摘したように,自己効力感の形成には過去の経験そのものではなく,その経験の捉え方が重要であると考え,遂行結果に関して持っている主観的な捉え方による影響を検討することとする。
以上のように本研究の目的は,大学生の大学受験の捉え方の,将来のキャリア選択自己効力感,ならびにキャリア選択結果期待への影響を検討することである。それに先立ち,大学受験の捉え方を測定する尺度も作成する。
方法
調査時期と手続き 2014年10~11月,関東圏内の私立大学2校において授業時間内に質問紙の一斉配布により実施した。
参加者 大学生231名(A大学140名,B大学91名;男性112名,女性119名;1年生91名,2年生61名,3年生79名)であった。
使用測度 1.大学受験の捉え方 事前に先行研究(e.g.,Usher &Pajares, 2009)や大学受験の情報サイト(e.g., 株式会社Z会,2014a, 2014b)を参考に42項目を作成し,予備調査を行った。その結果から,大学受験と大学受験期間をどのように感じているのかを表す22項目を採用した。5件法。2.キャリア選択に対する自己効力感 花井(2008)のキャリア選択自己効力感尺度(Career Choice Self-Efficacy Scale::CCSE)25項目を使用した(α=.931)。4件法。3.キャリア選択に対する結果期待 Betz,&Voyten(1997)を邦訳した安達(2001a)のキャリア選択に対する結果期待尺度4項目を使用した(α=.760)。5件法。
結果と考察
大学受験の捉え方尺度の因子分析 大学受験の捉え方尺度22項目の因子分析を主因子法Promax回転で行った。その結果3因子15項目が得られ,累積寄与率は55.97%であった。各因子を構成する項目内容から第1因子8項目を「努力成功経験」(α=.878),第2因子4項目を「受験時不安経験」(α=.841),そして第3因子3項目を「失敗経験」(α=.785)とした。
大学受験の捉え方,CCSE,結果期待の関係 大学受験の捉え方の3下位因子,CCSE,結果期待の関係を共分散構造分析によって検討した。その結果得られたモデルをFigure 1に示す。モデルの適合度はχ2=1.310(df=3, α=.727),GFI=.996,AGFI=.981,CFI=1.000,RMSEA=.000であり,適合度は十分であると判断した。
努力成功経験はCCSEへ正のパス(β=.49, p<.001)を示し,努力をした結果合格したという大学受験の捉え方が次の進路選択である就職活動や職業決定に必要な行動への自信を予測することがわかった。しかし,結果期待への影響は示されなかった。受験時不安経験からはCCSEに負のパス(β=-.23, p<.01),結果期待に正のパスが見られ(β=.26, p<.001),大学受験時に不安があったと捉えていると次のキャリア選択への自信を低める一方,行動の結果への確信や期待は高めるという興味深い結果となった。失敗経験からは有意なパスが得られず,大学受験はうまくいかなかったと捉えていることはこれからのキャリア選択へほとんど影響しないと言える。CCSEはキャリア選択結果期待へ正のパス(β=.30,p<.001)を示し,SCCTを支持する結果となった。
以上から,大学生にとって前回の進路選択行動であった大学受験をどのように捉えているかが,将来のキャリア選択に対する自己効力感,結果期待に影響を及ぼすことがわかった。