[PH023] 大学における就職支援の課題と取組み
学校規模,就職未決定率との関連から
キーワード:就職支援, 学校規模, 就職未決定率
問題・目的
2013年の秋に,大学・短期大学・高等専門学校・専門学校の就職課・キャリアセンターを対象として,キャリアガイダンスや就職支援の方法の現状に関する調査を実施した。その調査項目のうち,学生の就職支援に関する現在もしくは中長期的な重点課題を取り上げ,学校別に回答傾向の違いを検討した結果は既に報告されているが(室山・深町,2014),本稿では,分析の対象を大学に絞って,大学の学校規模および進路未決定率と就職支援の重点課題に対する回答との関連を検討した。
方 法
調査対象:大学(1071箇所),短期大学(370箇所),高等専門学校(62箇所),専門学校(341箇所)に調査票を郵送した。専門学校以外は全数調査とし,同一校が複数キャンパスをもつ場合は各所に送付した。
回収率:回収は郵便とWEB入力の両方で行い,学校実数に対する回収率は大学63.5%(459校),短期大学51.2%(177校),高等専門学校89.5%(51校),専門学校23.3%(77校)となった。
実査期間:平成25年8月下旬~9月中旬。
設問内容:具体的な就職支援の内容,学生の適性・個性理解のためのツールの活用とニーズ,職業情報・求人情報の活用,就職課・キャリアセンターの重点課題と体制に関する設問を用意した。
結果・考察
就職課・キャリアセンターが現在もしくは中長期的に取り組んでいる重点課題(自由記述を除く16項目)を因子分析により3つの要素に分けた。第1は「情報提供の充実(6項目:学生の個人別情報把握や卒業生・保護者との連携,学内のキャリア支援サービスのネットワーク化等)」,第2は「直接的就職支援の充実(5項目:就職課・キャリアセンター利用の促進,インターンシップの充実,就活意欲の低い学生や就職困難が学生への呼びかけやアプローチ等)」,第3は「教育面での充実(5項目:低学年からのキャリアに対する意識づけ,学校独自のキャリア教育プログラムの開発や充実等)」である。3要素の各平均値を分散分析により比較した結果,「直接的就職支援の充実」が最も高く,「教育面での充実」が2番目で,「情報提供の充実」が最も低かった(p<.01)。
次に,学校規模として,学生数が1136人以下を小規模校,1137~3782人を中規模校,3783人以上を大規模校とし,他方,卒業生のうち就職者と進学者を除いた者の割合(進路未決定率:以下,未決定率とする)により10%未満を低群,10~20%未満を中群,20%以上を高群とした。重点課題の3要素別に,規模と未決定率による2要因の分散分析を行った。「情報提供の充実」では要因による効果は見られなかった。「直接的就職支援の充実」では,中・大規模校は小規模校よりも重視度の数値が高く(p<.01),未決定率による中・高群は低群よりも数値が高かった(p<.01)「教育面での充実」については,規模の要因のみ有意で,中・大規模校は,小規模校よりも数値が高かった(p<.05)。学生に対する直接的な就職支援や教育面での充実については,学校規模や未決定率により重視度に違いがあることが示された。
引用文献
室山晴美・深町珠由(2014).大学・短期大学・高等専門学校・専門学校におけるキャリアガイダンスと就職支援の方法-就職課・キャリアセンターの現在の取組みと課題- 日本教育心理学会第56回総会発表論文集,424.
2013年の秋に,大学・短期大学・高等専門学校・専門学校の就職課・キャリアセンターを対象として,キャリアガイダンスや就職支援の方法の現状に関する調査を実施した。その調査項目のうち,学生の就職支援に関する現在もしくは中長期的な重点課題を取り上げ,学校別に回答傾向の違いを検討した結果は既に報告されているが(室山・深町,2014),本稿では,分析の対象を大学に絞って,大学の学校規模および進路未決定率と就職支援の重点課題に対する回答との関連を検討した。
方 法
調査対象:大学(1071箇所),短期大学(370箇所),高等専門学校(62箇所),専門学校(341箇所)に調査票を郵送した。専門学校以外は全数調査とし,同一校が複数キャンパスをもつ場合は各所に送付した。
回収率:回収は郵便とWEB入力の両方で行い,学校実数に対する回収率は大学63.5%(459校),短期大学51.2%(177校),高等専門学校89.5%(51校),専門学校23.3%(77校)となった。
実査期間:平成25年8月下旬~9月中旬。
設問内容:具体的な就職支援の内容,学生の適性・個性理解のためのツールの活用とニーズ,職業情報・求人情報の活用,就職課・キャリアセンターの重点課題と体制に関する設問を用意した。
結果・考察
就職課・キャリアセンターが現在もしくは中長期的に取り組んでいる重点課題(自由記述を除く16項目)を因子分析により3つの要素に分けた。第1は「情報提供の充実(6項目:学生の個人別情報把握や卒業生・保護者との連携,学内のキャリア支援サービスのネットワーク化等)」,第2は「直接的就職支援の充実(5項目:就職課・キャリアセンター利用の促進,インターンシップの充実,就活意欲の低い学生や就職困難が学生への呼びかけやアプローチ等)」,第3は「教育面での充実(5項目:低学年からのキャリアに対する意識づけ,学校独自のキャリア教育プログラムの開発や充実等)」である。3要素の各平均値を分散分析により比較した結果,「直接的就職支援の充実」が最も高く,「教育面での充実」が2番目で,「情報提供の充実」が最も低かった(p<.01)。
次に,学校規模として,学生数が1136人以下を小規模校,1137~3782人を中規模校,3783人以上を大規模校とし,他方,卒業生のうち就職者と進学者を除いた者の割合(進路未決定率:以下,未決定率とする)により10%未満を低群,10~20%未満を中群,20%以上を高群とした。重点課題の3要素別に,規模と未決定率による2要因の分散分析を行った。「情報提供の充実」では要因による効果は見られなかった。「直接的就職支援の充実」では,中・大規模校は小規模校よりも重視度の数値が高く(p<.01),未決定率による中・高群は低群よりも数値が高かった(p<.01)「教育面での充実」については,規模の要因のみ有意で,中・大規模校は,小規模校よりも数値が高かった(p<.05)。学生に対する直接的な就職支援や教育面での充実については,学校規模や未決定率により重視度に違いがあることが示された。
引用文献
室山晴美・深町珠由(2014).大学・短期大学・高等専門学校・専門学校におけるキャリアガイダンスと就職支援の方法-就職課・キャリアセンターの現在の取組みと課題- 日本教育心理学会第56回総会発表論文集,424.