[PH024] 若手小学校教員の対人関係能力を中心とした社会的能力を向上させるための研修会事例
ロールプレイを中心とした取組
キーワード:若手小学校教員, 対人関係能力, 研修会
目的
小学校に勤務する若手教員を対象として,対人関係能力を中心とした社会的能力を向上させることを目的とした。特に,対象者の経験をもとに学校で起こりうる場面を設定することと,対応方法をロールプレイによって体験させることを重視し,社会的能力および日常の指導力に関してどのような効果が見られるのかについて検証した。
方法
対象者
A県内公立小学校に勤務する若手教員5名を対象とした。対象者のうち,1名が教職経験年数10年目で年齢が30代前半の教諭,4名が教職経験年数1年目~5年目で年齢が20代前半~20代後半までの教諭および常勤講師であった。
実施時期および手続き
2014年10月~12月に,週に1回,対人関係能力を中心とした社会的能力を向上させるための研修会を,全8回実施した。各研修会の内容は相川(2009),小泉(2011,2014),山下・小泉(2012)を参考にし,前半5回を「気づく力,聞く力,話す力,対処する力」の向上にあてた。第6回~第7回は,学校教育に関わる具体的な場面を対象者の経験をもとに複数設定し,教員としての対応方法をロールプレイの中で体験させた。
第1回~第7回については,それぞれに60分間の展開案を作成し,進め方は,「話し合い→ロールプレイ→振り返り」という形式を基本とした。ロールプレイでは対児童,対同僚,対保護者をイメージした場面を設定し,学校教育現場ですぐに実践できることを目指した。第8回は,7回の研修会で身につけたことを生かして学校教育現場で取り組んでいることや,自分自身の中で向上したと感じる社会的能力について,7~8分程度の持ち時間で各自が発表する場とした。
調査内容
5名の対象者すべてに,研修前(10月)・研修中(11月)・研修後(12月)の3回,教師用社会性と情動尺度(山田・小泉・高松,2014)を用いて,「自己への気づき,他者への気づき,自己コントロール,対人関係,責任ある意思決定,生活上の問題防止のスキル,人生の重要事態に対処する能力,積極的・貢献的な奉仕活動」の8下位尺度24項目について,自己評価(5段階)を求めた。また,日常の指導力(学級経営,学習指導,生徒指導)3項目についても,自己評価(5段階)を求めた。さらに,意識の変容を把握するために,各回の終了後に5分間程度で感想の記述を求めた。
結果
社会的能力の変容(自己評価)
対象者ごとに8つの社会的能力および日常の指導力について平均値を算出し,これら9つの測度について時期(研修前・研修中・研修後)における変容を検討した。その結果,7つの社会的能力および日常の指導力について,研修前に比べて研修後に数値の伸びが見られた。特に,他者への気づき(p<.001)については,研修前(M=2.4)と研修中(M=2.9),研修前と研修後(M=3.3),研修中と研修後の比較において伸びが有意であった。自己のコントロール(p<.05)については,研修前(M=2.5)と研修後(M=3.5)の比較において伸びが有意であった。日常の指導力(p<.05)についても,研修前(M=1.8)と研修後(M=2.5)の比較において伸びが有意であった。
意識の変容(第8回終了後のB講師の感想)
「8回の研修を通して,今までの自分の教員生活を深く振り返ることができた。あの話し方や聞き方では子供たちは素直に納得できなかっただろうな,こうすればよかったなと思う場面や状況がたくさんあった。それに気づくことが子供たちや周りの先生との接し方や関わり方を意識して考えることにつながり,学びの多い研修だった。学びを生かし,実践し続けていきたいし,学んだことを今度は私が子供たちに伝えて,温かい学級作りや,温かい人間関係作りができたらいいと思う。」
考察
若手小学校教員に対して,社会的能力の向上をめざす研修会を意図的に実施した結果,短期間の研修でもその能力が向上する可能性が示唆された。特に,ロールプレイの場面を対象者の経験をもとに設定したことと,ロールプレイの中で対象者が対応方法を体験できたことの2点が効果的であったと考えられる。今回は研修会という場を設定しての取組であったが,若手小学校教員が自らの勤務校において,本研修会において実施したようなロールプレイを継続的に体験することができれば,さらに社会的能力が向上していくのではないかと考える。そのためには,経験豊富なベテラン教員が,例えば放課後に機会を見つけるなどして場を設定することも効果的であろう。
小学校に勤務する若手教員を対象として,対人関係能力を中心とした社会的能力を向上させることを目的とした。特に,対象者の経験をもとに学校で起こりうる場面を設定することと,対応方法をロールプレイによって体験させることを重視し,社会的能力および日常の指導力に関してどのような効果が見られるのかについて検証した。
方法
対象者
A県内公立小学校に勤務する若手教員5名を対象とした。対象者のうち,1名が教職経験年数10年目で年齢が30代前半の教諭,4名が教職経験年数1年目~5年目で年齢が20代前半~20代後半までの教諭および常勤講師であった。
実施時期および手続き
2014年10月~12月に,週に1回,対人関係能力を中心とした社会的能力を向上させるための研修会を,全8回実施した。各研修会の内容は相川(2009),小泉(2011,2014),山下・小泉(2012)を参考にし,前半5回を「気づく力,聞く力,話す力,対処する力」の向上にあてた。第6回~第7回は,学校教育に関わる具体的な場面を対象者の経験をもとに複数設定し,教員としての対応方法をロールプレイの中で体験させた。
第1回~第7回については,それぞれに60分間の展開案を作成し,進め方は,「話し合い→ロールプレイ→振り返り」という形式を基本とした。ロールプレイでは対児童,対同僚,対保護者をイメージした場面を設定し,学校教育現場ですぐに実践できることを目指した。第8回は,7回の研修会で身につけたことを生かして学校教育現場で取り組んでいることや,自分自身の中で向上したと感じる社会的能力について,7~8分程度の持ち時間で各自が発表する場とした。
調査内容
5名の対象者すべてに,研修前(10月)・研修中(11月)・研修後(12月)の3回,教師用社会性と情動尺度(山田・小泉・高松,2014)を用いて,「自己への気づき,他者への気づき,自己コントロール,対人関係,責任ある意思決定,生活上の問題防止のスキル,人生の重要事態に対処する能力,積極的・貢献的な奉仕活動」の8下位尺度24項目について,自己評価(5段階)を求めた。また,日常の指導力(学級経営,学習指導,生徒指導)3項目についても,自己評価(5段階)を求めた。さらに,意識の変容を把握するために,各回の終了後に5分間程度で感想の記述を求めた。
結果
社会的能力の変容(自己評価)
対象者ごとに8つの社会的能力および日常の指導力について平均値を算出し,これら9つの測度について時期(研修前・研修中・研修後)における変容を検討した。その結果,7つの社会的能力および日常の指導力について,研修前に比べて研修後に数値の伸びが見られた。特に,他者への気づき(p<.001)については,研修前(M=2.4)と研修中(M=2.9),研修前と研修後(M=3.3),研修中と研修後の比較において伸びが有意であった。自己のコントロール(p<.05)については,研修前(M=2.5)と研修後(M=3.5)の比較において伸びが有意であった。日常の指導力(p<.05)についても,研修前(M=1.8)と研修後(M=2.5)の比較において伸びが有意であった。
意識の変容(第8回終了後のB講師の感想)
「8回の研修を通して,今までの自分の教員生活を深く振り返ることができた。あの話し方や聞き方では子供たちは素直に納得できなかっただろうな,こうすればよかったなと思う場面や状況がたくさんあった。それに気づくことが子供たちや周りの先生との接し方や関わり方を意識して考えることにつながり,学びの多い研修だった。学びを生かし,実践し続けていきたいし,学んだことを今度は私が子供たちに伝えて,温かい学級作りや,温かい人間関係作りができたらいいと思う。」
考察
若手小学校教員に対して,社会的能力の向上をめざす研修会を意図的に実施した結果,短期間の研修でもその能力が向上する可能性が示唆された。特に,ロールプレイの場面を対象者の経験をもとに設定したことと,ロールプレイの中で対象者が対応方法を体験できたことの2点が効果的であったと考えられる。今回は研修会という場を設定しての取組であったが,若手小学校教員が自らの勤務校において,本研修会において実施したようなロールプレイを継続的に体験することができれば,さらに社会的能力が向上していくのではないかと考える。そのためには,経験豊富なベテラン教員が,例えば放課後に機会を見つけるなどして場を設定することも効果的であろう。