The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PH

Fri. Aug 28, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PH026] 社会的クリティカルシンキング志向性は抑うつを抑制するのか

抑うつへの反応スタイルと認知的統制の視点から

磯和壮太朗1, 南学2 (1.大阪大学大学院, 2.三重大学)

Keywords:クリティカルシンキング, 抑うつ, 反応スタイル理論

【問題と目的】
クリティカルシンキング(以下CT)とは,「自分の推論過程を意識的に吟味する再帰的(reflective)な思考」(Ennis, 1987)のことであり,吟味する際には適切な基準や根拠に基づき,論理的で,偏りのない思考を行う(廣岡・元吉・小川・斎藤, 2001)ものである。この概念の重要性が語られて久しい(e.g.楠見, 1996; 廣岡・小川・元吉, 2000)が,その困難性もまた同時に指摘されている。CTを行う者(クリシンカー)は学生にとっては「親しみにくい」ものであり,そのネガティブなイメージがクリシン能力の獲得や発揮にマイナスに働いている可能性である(廣岡ら, 2000)。
元吉(2011)は,CTの教育を行う際に,その社会的な側面を強調することの重要性を指摘している。社会的な場面でのクリシン(社会的クリシン)のほうが学生にとって有用性を認知しやすく,適用場面も多く,親しみやすさも高いことから発揮されやすいと捉えれば,CTを教育する際には,まずは社会的CTからアプローチすることが有効なのではないだろうか。
本研究では,CTが抑うつの重症化に対して予防的に働く可能性を指摘した磯和・南(2014)の枠組みが,社会的CTに対しても適用できるかどうかを検討する。
【方 法】
調査時期 T1:2014年4月上旬 T2:同7月下旬
対象者 A大学大学生142名 平均年齢18.96歳
年齢のSD=2.36 男性83名・女性59名
調査内容(本稿で報告しないものは省略)
1.社会的CT志向性を測定する尺度として,短縮版社会的CT志向性尺度(磯和・南, 2015)を使用した。
2.抑うつを測定知る尺度として,CES-D尺度16項目版(蒲浦・岡田・志渡, 2009)を使用した。
3.反応スタイルを測定する尺度として,拡張版反応スタイル尺度(松本, 2008)を使用した。
4.反応スタイルのうち,考え込み反応の認知的側面を測定する尺度として,改訂版RSQ & RRS尺度(磯和・南, 2014)に,邦訳版RSQ(名倉・橋本, 1999)の2項目を追加し,使用した。
5.認知的統制を測定する尺度として,認知的統制尺度(甘利・馬岡, 2002)を使用した。
以上の5つの尺度をTimes1とTimes2の二時点において使用した。CES-D尺度16項目版は4段階の評定であった。1.の尺度については7件法,残りの尺度については4件法の尺度であった。
【結果と考察】
社会的CT志向性とその他の変数について,Times1とTimes2の各時点での相関分析を行った(Table 1)。その結果,Times1の社会的CT志向性との間に有意な負の相関が見いだされた(r=-.253)が,Times2ではこの関係は消失していた。このことから,少なくとも社会的CT志向性は抑うつを促進せず,むしろ抑うつを抑制している可能性が示唆された。その他,社会的CT志向性は,問題解決的考え込みや認知的統制,問題への直面化と有意な正の相関を持ち,行動的回避とは有意な負の相関を持っていたことから,社会的CT志向性は問題に対して前向きに取り組もうとする姿勢や,問題から逃げずに取り組もうとする姿勢と結びついている可能性が示唆された。
Times1で見られた相関がTimes2では消失したことについては,抑うつの質が変化した可能性と,質問紙の構成が社会的CT志向性の得点に影響を及ぼした可能性が考えられた。