The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PH

Fri. Aug 28, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PH027] 青年期の恋愛とジェンダー心性との関連に関する研究

伊藤俊樹 (神戸大学大学院)

Keywords:恋愛, ジェンダー, 青年期

【問題と目的】
恋愛に関する社会心理学的研究において,性差は重要な一側面とみなされ,検討されてきた。土肥(1995)は大学生の性役割分担志向性とその実行度,愛情・好意度を取り上げ,性別とジェンダー・タイプ,相互作用を検討している。本研究では,ジェンダー・タイプから見た,青年におけるジェンダー意識と恋愛状態との関係を検討する事を目的とする。
【方 法】
〈調査対象〉現在交際中の大学生カップル85組(170名)。平均年齢20.89歳(SD=1.67)。
〈手続き〉以下の尺度からなる質問紙をカップル毎に配布し,後日回収した。
①基礎項目:性別,年齢,学年,交際期間
②BSRI(Bem Sex Role Inventory;Bem, 1974)に基づいて安達ら(1985)が作成した性役割パーソナリティを測定する日本版BSRI。男性性尺度,女性性尺度毎に得点を算出する。男性性・女性性尺度の平均値を算出し,共に平均より高い群を「両性具有型(MF)」,男性性得点が高く,女性性得点が低い群を「男性性優位型(Mf)」,その逆を「女性性優位型(mF)」,共に低い群を「未分化型(mf)」と判定する。
③藤原ら(1983)が作成した日本版Love-Liking尺度。
④TAT図版第Ⅳ版。図版の男女は恋人同士だが,ある時喧嘩をしてしまった,という状況設定をし,どのように仲直りすると思うかについて自由記述してもらった。
【結 果】
①BSRIの結果
型・組合せの度数に有意な差は見られなかった。全組み合わせの中で類似的組合せは23.5%,相補的組合せは24.7%であった。
②Love-Liking尺度との関連において
男女別・型毎に分散分析を行った結果,男性のみでLove得点で有意差が見られた(p<.01)ので,多重比較(LSD法)を行った所,MF>Mf・mf(p<.05),mF>mf(p<.05)であった。
③組合せ別による分散分析
Love得点において有意であった(p<.01)ので,多重比較(LSD法)を行った所, MFMFは他の全ての組み合わせより高く(p<.05),mfMfは他の全ての組合せより低かった(p<.05)。類似的,相補的,その他の組合せ別に分散分析を行った所, Love得点で有意(p<.05)であったので,多重比較(LSD法)を行った所,類似的組合せ>相補的,その他の組合せ(p<.05)であった。
④TAT反応において
仲直りのきっかけという観点で「男から」「女から」「両方から」「その他」の4種に分類し,男女別にχ2検定を行った所,有意差が見られた(男:p<.01,女:p<.05)。男女共に「女から」という回答が少なかった。更に男女型別にχ2検定を行った結果,男Mf(p<.05)及び女mf(p<.05)では「女から」が少なく「両方から」が多い事が分かった。また男mFでは「男から」が多かった(p<.01)。
【考 察】
1.Love-Liking尺度との関連結果からの考察
型分析結果よりMF・mFの型の男性,つまり女性性が強い男性の方が相手に愛情を深めやすい事が分かった。Fが高い男性とは自分の事だけでなく相手の事にも関心を配る事ができる能力の高い男性と言えるだろう。従って相手に対し愛情が深まるのだと考えらえる。
b)組合せ分析 互いの女性性に焦点を当てて考えるとMFMF,MFmF,mFMFは他の組合せに比べてLove得点に有意差,またはその傾向がみられた。よってFが高いもの同士の組み合わせは愛情が高まる傾向があると言える。その理由として,他人に気を配る能力が高ければ愛情が深まると考えられ,Fが高いもの同士,つまり愛情を高めやすいもの同士のLove得点が高くなったと推測できる。又,MFMFが最もLove得点が高くなっているが,日本版BSRIにおけるM(男性性)は全体的に外界に働きかける心理的強さを表しており,Mが高いほど周りに対する関心は高まると考えられる。そのためFを兼ね備え,かつ外界に対して関心が高いMFMFが最も愛情が高まる結果となったのだと考えられる。
c)類似的・相補的組合せ分析 類似しているもの同士は相手のことを理解しやすく,心を開きやすい可能性が高く,結果として愛情が深まったのではないだろうか。逆に相補しているもの同士は理解しづらい分愛情が深まりにくいかもしれない。
2.TAT反応との関連結果からの考察
男女ともに「女から」という回答が少なかったのは現代におけるジェンダー意識の変化と関係があると考えられる。特に,男mFでは「男から」謝るという回答が極端に多かった。又,優位だった男Mfは男性的意識が高い群ではあるが「女から」謝る事が少ない現代の風潮との妥協として「両方から」という回答に集中したのかもしれない。女mfは,両性について意識が低いため,曖昧な態度として「両方から」という回答が多くなったと考えられる。この事は,女mfのTAT反応を調べたところ「なんとなく」「どちらからともなく」という回答が多かった事からも裏付けられる。