[PH029] 「自分ひとりの居場所」の志向に関する検討
「安心できる人」評定,ひとりで過ごす感情・評価及び協同作業認識尺度の関係から
キーワード:自分ひとりの居場所, ひとりで過ごす感情・評価, 共同作業
目 的
青年期においては「自分ひとりの居場所」を志向することが増え,その固有の心理的機能も確認されている(杉本・庄司, 2006)。居場所(安心できる人)の評定により“自分”を選択する者は他者との心理的距離をとり(豊田・岡村, 2002),他者と親密的な関係を回避しようとする傾向(岡村・豊田, 2007; 岡村, 2012a, 2012b)が明らかになっている。一方,ひとりで居ることに積極的・肯定的な意味も見いだしている(岡村, 2014)。しかし,ひとりで居ることの認識が他者との共同作業のような具体的な場面においてどのような関連があるのかはこれまで検討されていない。
そこで本研究では,居場所(安心できる人)の評定,ひとりで過ごすことに関する感情・評価及び協同作業認識との関連を検討することを目的とする。
方 法
調査対象 大学生・専門学校生168名(男子53名・女子115名)。平均年齢は19.85歳(SD 1.65,範囲18~30歳)。
調査内容 a)「居場所」(安心できる人)調査 “あなたは以下の人と居る時に安心できますか。ここで用いている「安心できる」とは、ホッとする、落ち着く等という意味です。”という教示を行い,“自分ひとり”“父親”“母親”“きょうだい”“現学校以前の友人”“現学校以降の友人”“恋人”といる場面を設定した。b)ひとりで過ごすことに関する感情・評価尺度(ひとり感情・評価尺度)(増淵 (海野), 2014) “孤独・不安”11項目,“自立願望”8項目,“充実・満足”4項目,“孤絶願望”3項目。計26項目。c)協同作業認識尺度(長濱ら, 2009) “共同効用因子”9項目,“個人志向因子”6項目,“互恵懸念因子”3項目。計18項目。
調査手続 1)「居場所」(安心できる人)調査“自分ひとり”“父親”“母親”“きょうだい”“現学校以前の友人”“現学校以降の友人”“恋人”といる場面においてそれぞれ“5:非常に安心できる”から“1:あまり安心できない”の5件法で回答を求めた。2)ひとり感情・評価尺度 上記b)の調査項目について“6:とてもそう思う”から“1:まったく思わない”の6件法で評定。 3)協同作業認識尺度 上記c)の調査項目について“5:とてもそう思う”から“1:全くそう思わない”の5件法で評定。
結果と考察
安心できる人評定による分類 各場面における「安心できる人」評定得点を用いて,クラスター分析を行った。安心できる人の評定が全体的に低かった群を“全体低群”,高かった群を“全体高群”,他の場面と比較して自分ひとりの場面のみ評定が高かった群を“自分群”と命名した。
各尺度間の関係 ひとり感情・評価尺度と協同作業認識尺度の関係を調べるために、各尺度得点の相関係数(r)を算出した(表1)。その結果,“孤絶願望”と“共同効用因子”に弱い負の相関,“個人志向因子”及び“互恵懸念因子”にそれぞれ中程度の正の相関がみられた。
“孤絶願望”の平均値により高群と低群に分け,協同作業認識尺度の各下位尺度得点について3(居場所)×2(孤絶願望)の分散分析を行った結果,“共同効用因子”においては居場所(F(2, 135)=6.83, p<.01,全体低群<全体高群=自分群)及び孤絶願望(F(1,135)=12.67, p<.001,低群>高群)の主効果が有意であった。また,“個人志向因子”(F(1, 135)=21.09, p<.001)及び“互恵懸念因子”(F(1, 135)=16.80, p<.001)は孤絶願望の主効果のみ有意であり,いずれも高群の方が低群よりも得点が高かった。
孤絶願望の高さは,青年期における発展途上の一時期とも言えるが,他者や社会と自分とのつながりや距離感をうまくつかめず,対人関係がうまく持てなかった場合に陥る可能性が推察されている(増淵 (海野), 2014)。上述の結果は,他者との協同作業が必ずしも望ましい経験ばかりではなく,苦痛と感じている者も考えられ,対人関係における配慮が必要といえる。
青年期においては「自分ひとりの居場所」を志向することが増え,その固有の心理的機能も確認されている(杉本・庄司, 2006)。居場所(安心できる人)の評定により“自分”を選択する者は他者との心理的距離をとり(豊田・岡村, 2002),他者と親密的な関係を回避しようとする傾向(岡村・豊田, 2007; 岡村, 2012a, 2012b)が明らかになっている。一方,ひとりで居ることに積極的・肯定的な意味も見いだしている(岡村, 2014)。しかし,ひとりで居ることの認識が他者との共同作業のような具体的な場面においてどのような関連があるのかはこれまで検討されていない。
そこで本研究では,居場所(安心できる人)の評定,ひとりで過ごすことに関する感情・評価及び協同作業認識との関連を検討することを目的とする。
方 法
調査対象 大学生・専門学校生168名(男子53名・女子115名)。平均年齢は19.85歳(SD 1.65,範囲18~30歳)。
調査内容 a)「居場所」(安心できる人)調査 “あなたは以下の人と居る時に安心できますか。ここで用いている「安心できる」とは、ホッとする、落ち着く等という意味です。”という教示を行い,“自分ひとり”“父親”“母親”“きょうだい”“現学校以前の友人”“現学校以降の友人”“恋人”といる場面を設定した。b)ひとりで過ごすことに関する感情・評価尺度(ひとり感情・評価尺度)(増淵 (海野), 2014) “孤独・不安”11項目,“自立願望”8項目,“充実・満足”4項目,“孤絶願望”3項目。計26項目。c)協同作業認識尺度(長濱ら, 2009) “共同効用因子”9項目,“個人志向因子”6項目,“互恵懸念因子”3項目。計18項目。
調査手続 1)「居場所」(安心できる人)調査“自分ひとり”“父親”“母親”“きょうだい”“現学校以前の友人”“現学校以降の友人”“恋人”といる場面においてそれぞれ“5:非常に安心できる”から“1:あまり安心できない”の5件法で回答を求めた。2)ひとり感情・評価尺度 上記b)の調査項目について“6:とてもそう思う”から“1:まったく思わない”の6件法で評定。 3)協同作業認識尺度 上記c)の調査項目について“5:とてもそう思う”から“1:全くそう思わない”の5件法で評定。
結果と考察
安心できる人評定による分類 各場面における「安心できる人」評定得点を用いて,クラスター分析を行った。安心できる人の評定が全体的に低かった群を“全体低群”,高かった群を“全体高群”,他の場面と比較して自分ひとりの場面のみ評定が高かった群を“自分群”と命名した。
各尺度間の関係 ひとり感情・評価尺度と協同作業認識尺度の関係を調べるために、各尺度得点の相関係数(r)を算出した(表1)。その結果,“孤絶願望”と“共同効用因子”に弱い負の相関,“個人志向因子”及び“互恵懸念因子”にそれぞれ中程度の正の相関がみられた。
“孤絶願望”の平均値により高群と低群に分け,協同作業認識尺度の各下位尺度得点について3(居場所)×2(孤絶願望)の分散分析を行った結果,“共同効用因子”においては居場所(F(2, 135)=6.83, p<.01,全体低群<全体高群=自分群)及び孤絶願望(F(1,135)=12.67, p<.001,低群>高群)の主効果が有意であった。また,“個人志向因子”(F(1, 135)=21.09, p<.001)及び“互恵懸念因子”(F(1, 135)=16.80, p<.001)は孤絶願望の主効果のみ有意であり,いずれも高群の方が低群よりも得点が高かった。
孤絶願望の高さは,青年期における発展途上の一時期とも言えるが,他者や社会と自分とのつながりや距離感をうまくつかめず,対人関係がうまく持てなかった場合に陥る可能性が推察されている(増淵 (海野), 2014)。上述の結果は,他者との協同作業が必ずしも望ましい経験ばかりではなく,苦痛と感じている者も考えられ,対人関係における配慮が必要といえる。