[PH035] 大学生の性格傾向や自己愛傾向とバウムテストとの関連
Keywords:バウムテスト指標, 自己愛傾向
【目 的】
現代の大学生の性格傾向や自我状態,他者意識とバウムテストについての我々の調査結果から,バウム指標の「樹冠の高さ」,「木の高さ」と支配性,「樹木の高さ/木の高さ」とのんきさ,「幹の幅/樹冠の幅」と思考的外向や活動性に関連があること,バウム指標内容をクラスタ分析し,樹冠と木の高さ,樹冠と幹の幅の高低2群間比較から,バウム指標と自己効力感,情緒的感受性との関連性があることを報告した(齊藤,2013,2014)。
自己愛傾向とは,青年における自信や優越感などの自分自身に対する肯定的感覚で,その感覚を維持したいという要求を表す概念である。タイプABC性格とは,緊張感,攻撃性,自己犠牲的観念などと身体症状との関係を示す性格傾向である。本調査では,バウムテストと自己愛傾向,タイプABCの性格傾向との関連について検討を行った。
【方 法】
対象は,大学生1年~4年の120名,方法は検査法・質問紙法を用いた。
① バウムテスト(指標として,樹冠の高さ,木の高さ,成長指標[樹冠の高さ/木の高さ],樹冠の幅,幹の幅,幹の幅/樹冠の幅,バウムのサイズ[大中小],筆圧[強,普通,弱]を用いた)。
② 自己愛人格目録短縮版(小塩,1998)
(以後,自己愛尺度と略す)下位領域は,優越・有能感,自己主張性,注目・賞賛欲求。
③ タイプABC尺度簡略版(12項目,7件法)。
統計処理は,クラスタ分析,重回帰分析(ステップワイズ),分散分析を使用した。
【結果と考察】
バウム指標の樹冠の高さ
木の高さ,樹冠の幅,幹の幅によるクラスタ分析を行い,高低群で自己愛尺度得点とタイプABC得点の比較を行った。自己愛尺度では,自己主張性において,高群>低群(p<.05,図1)となり,タイプABC得点では有意差はなかった。
自己愛尺度とバウム指標の対応関係については,独立変数を優越・有能感,自己主張性,注目・賞賛欲求,従属変数をバウムテストの8指標とする重回帰分析を行った。樹冠の高さにおいては,優越・有能感(β=.211,p<.05,R2=.036),木の高さにおいては,自己主張性(β=.244,p<.05,R2=.051)で有意であり,成長指標においては,自己主張性(β=.188,p<.05,R2=.026),樹冠の幅では,優越・有能感(β=.313,p<.05,R2=.087),木のサイズでは,優越・有能感(β=.222,p<.05,R2=.041)で有意であった。優越・有能感の高さは,樹冠の高さ,樹冠の幅,木のサイズを説明する変数となり,自己主張性の高さは木の高さ,成長指標を説明する変数となっていた。
バウムサイズ[大中小],筆圧[強,弱]による群でタイプABC尺度得点,自己愛尺度得点を比較した結果は,バウムサイズの大群での優越・有能感が有意に高く,筆圧の強い群でのタイプA得点が有意に高かった(図2)。
樹冠は,対人関係能力を表すと考えられるが,自己愛傾向の中でも優越・有能感との関連し,筆圧は競争的なタイプA性格傾向と関連することが示唆された。 (SAITO Kazue)
現代の大学生の性格傾向や自我状態,他者意識とバウムテストについての我々の調査結果から,バウム指標の「樹冠の高さ」,「木の高さ」と支配性,「樹木の高さ/木の高さ」とのんきさ,「幹の幅/樹冠の幅」と思考的外向や活動性に関連があること,バウム指標内容をクラスタ分析し,樹冠と木の高さ,樹冠と幹の幅の高低2群間比較から,バウム指標と自己効力感,情緒的感受性との関連性があることを報告した(齊藤,2013,2014)。
自己愛傾向とは,青年における自信や優越感などの自分自身に対する肯定的感覚で,その感覚を維持したいという要求を表す概念である。タイプABC性格とは,緊張感,攻撃性,自己犠牲的観念などと身体症状との関係を示す性格傾向である。本調査では,バウムテストと自己愛傾向,タイプABCの性格傾向との関連について検討を行った。
【方 法】
対象は,大学生1年~4年の120名,方法は検査法・質問紙法を用いた。
① バウムテスト(指標として,樹冠の高さ,木の高さ,成長指標[樹冠の高さ/木の高さ],樹冠の幅,幹の幅,幹の幅/樹冠の幅,バウムのサイズ[大中小],筆圧[強,普通,弱]を用いた)。
② 自己愛人格目録短縮版(小塩,1998)
(以後,自己愛尺度と略す)下位領域は,優越・有能感,自己主張性,注目・賞賛欲求。
③ タイプABC尺度簡略版(12項目,7件法)。
統計処理は,クラスタ分析,重回帰分析(ステップワイズ),分散分析を使用した。
【結果と考察】
バウム指標の樹冠の高さ
木の高さ,樹冠の幅,幹の幅によるクラスタ分析を行い,高低群で自己愛尺度得点とタイプABC得点の比較を行った。自己愛尺度では,自己主張性において,高群>低群(p<.05,図1)となり,タイプABC得点では有意差はなかった。
自己愛尺度とバウム指標の対応関係については,独立変数を優越・有能感,自己主張性,注目・賞賛欲求,従属変数をバウムテストの8指標とする重回帰分析を行った。樹冠の高さにおいては,優越・有能感(β=.211,p<.05,R2=.036),木の高さにおいては,自己主張性(β=.244,p<.05,R2=.051)で有意であり,成長指標においては,自己主張性(β=.188,p<.05,R2=.026),樹冠の幅では,優越・有能感(β=.313,p<.05,R2=.087),木のサイズでは,優越・有能感(β=.222,p<.05,R2=.041)で有意であった。優越・有能感の高さは,樹冠の高さ,樹冠の幅,木のサイズを説明する変数となり,自己主張性の高さは木の高さ,成長指標を説明する変数となっていた。
バウムサイズ[大中小],筆圧[強,弱]による群でタイプABC尺度得点,自己愛尺度得点を比較した結果は,バウムサイズの大群での優越・有能感が有意に高く,筆圧の強い群でのタイプA得点が有意に高かった(図2)。
樹冠は,対人関係能力を表すと考えられるが,自己愛傾向の中でも優越・有能感との関連し,筆圧は競争的なタイプA性格傾向と関連することが示唆された。 (SAITO Kazue)