[PH047] 共同絵本読み場面における母子交渉の質と子どもの理解
キーワード:共同絵本読み場面, 母子交渉の質, 子どもの理解
問題と目的
絵本読み場面における子どもの言語発達と母子相互交渉を検討した先行研究では,母親と子どもの対話を分析している研究が多い(e, g.,石崎,1996)。本研究では,3歳から小学2年生までの子どもと両親の様子を追跡した縦断研究の資料を用いて,小学2年時での母子の共同絵本読み場面での相互交渉の質が,子どもの絵本の理解に影響すること,そして,それは子どもの言語能力を統制してもなお明らかであること,を検討した。
方法
調査協力者 小学2年生(二学期)に調査した53名(女児26名,男児27名)とその母親を分析対象とした。
調査内容 1.言語発達:3歳6か月にPPVT(Peabody Picture Vocabulary Test,Dunn & Dunn;絵画語彙検査日本語版,永野,1974)を,小学1年生(二学期)にPVT(Picture Vocabulary Test;絵画語彙検査,上野ら,1991)で測定。2.共同絵本読み場面(Joint picture-book reading situation):小学2年時に絵本「大きな木」(Silverstein,1964;本田訳,1976,篠崎書林)を母子に,「これからお二人でこの本を読んでいただき,あとでどういうお話だったかをお母様からお子様に聞いていただきます」と共同で読むように教示し,⑴本のあらすじを子どもが理解した程度(本のあらすじ理解能力),⑵本の主題を子どもが理解した程度(内示的主題理解能力)を測定した。⑶母子の相互交渉の質をみるために,子どもと母親のやり取りをビデオで記録して後にプロトコルを作成し,相互交渉の質を7コード(Table 1参照)の出現頻度で測定した。
結 果
1.子どもの理解能力
子どもの⑴「本のあらすじ理解能力」を,絵本の内容を8場面に分け,場面ごとに理解されているかどうか3段階評定(2, 1, 0)をして得点化した。⑵「内示的主題理解能力」についてはプロトコルから情動的な語句(喜びと寂しさ)を使ってその根拠を述べているかを0~5の6段階で評定した。53名のそれぞれの平均値と標準偏差は,⑴ 8.75, SD=3.91,⑵ 2.32, SD=1.25であった。
2.母子交渉の質と子どもの理解能力
共同絵本読み場面での母子交渉の質と子どもの本の理解の程度⑴本のあらすじ理解能力,⑵内示的主題能力との関連をみるために,相関係数を算出した。その結果,⑴本のあらすじ理解能力とCollaborative talkとAcceptance talkでは正の相関(r=.62,p<.001,r=.30, p<.05)が,Withdrawal とRejectでは負の相関(r=.-47,r=-.38, p<.01)がみられた.また,子どもの⑵内示的主題理解能力においてはCollaborative talkと正の相関(r=.39,p<.01)が, Rejectと負の相関(r=.-28,p<.05)がみられ,⑴とはやや異なることがわかった。さらに,子どもの言語能力(3歳時と小学1年時に測定したPPVTとPVT)を制御変数として偏相関係数を算出したところ,Table2のようになった。⑴,⑵の子どもの絵本の内容の理解の程度と母子交渉の質との関連は,子どもの言語能力を統制してもほとんど変わらないことがわかった。
結 論
母子の共同絵本読みによる子どもの本の理解の程度は,子どもの言語能力とは無関係に,本を読む時の母子交渉の質が良い(母親が協力的であり,子どもが課題に取り組み,母親の申し出を拒否しないなど)と関連していることが明らかになった。
絵本読み場面における子どもの言語発達と母子相互交渉を検討した先行研究では,母親と子どもの対話を分析している研究が多い(e, g.,石崎,1996)。本研究では,3歳から小学2年生までの子どもと両親の様子を追跡した縦断研究の資料を用いて,小学2年時での母子の共同絵本読み場面での相互交渉の質が,子どもの絵本の理解に影響すること,そして,それは子どもの言語能力を統制してもなお明らかであること,を検討した。
方法
調査協力者 小学2年生(二学期)に調査した53名(女児26名,男児27名)とその母親を分析対象とした。
調査内容 1.言語発達:3歳6か月にPPVT(Peabody Picture Vocabulary Test,Dunn & Dunn;絵画語彙検査日本語版,永野,1974)を,小学1年生(二学期)にPVT(Picture Vocabulary Test;絵画語彙検査,上野ら,1991)で測定。2.共同絵本読み場面(Joint picture-book reading situation):小学2年時に絵本「大きな木」(Silverstein,1964;本田訳,1976,篠崎書林)を母子に,「これからお二人でこの本を読んでいただき,あとでどういうお話だったかをお母様からお子様に聞いていただきます」と共同で読むように教示し,⑴本のあらすじを子どもが理解した程度(本のあらすじ理解能力),⑵本の主題を子どもが理解した程度(内示的主題理解能力)を測定した。⑶母子の相互交渉の質をみるために,子どもと母親のやり取りをビデオで記録して後にプロトコルを作成し,相互交渉の質を7コード(Table 1参照)の出現頻度で測定した。
結 果
1.子どもの理解能力
子どもの⑴「本のあらすじ理解能力」を,絵本の内容を8場面に分け,場面ごとに理解されているかどうか3段階評定(2, 1, 0)をして得点化した。⑵「内示的主題理解能力」についてはプロトコルから情動的な語句(喜びと寂しさ)を使ってその根拠を述べているかを0~5の6段階で評定した。53名のそれぞれの平均値と標準偏差は,⑴ 8.75, SD=3.91,⑵ 2.32, SD=1.25であった。
2.母子交渉の質と子どもの理解能力
共同絵本読み場面での母子交渉の質と子どもの本の理解の程度⑴本のあらすじ理解能力,⑵内示的主題能力との関連をみるために,相関係数を算出した。その結果,⑴本のあらすじ理解能力とCollaborative talkとAcceptance talkでは正の相関(r=.62,p<.001,r=.30, p<.05)が,Withdrawal とRejectでは負の相関(r=.-47,r=-.38, p<.01)がみられた.また,子どもの⑵内示的主題理解能力においてはCollaborative talkと正の相関(r=.39,p<.01)が, Rejectと負の相関(r=.-28,p<.05)がみられ,⑴とはやや異なることがわかった。さらに,子どもの言語能力(3歳時と小学1年時に測定したPPVTとPVT)を制御変数として偏相関係数を算出したところ,Table2のようになった。⑴,⑵の子どもの絵本の内容の理解の程度と母子交渉の質との関連は,子どもの言語能力を統制してもほとんど変わらないことがわかった。
結 論
母子の共同絵本読みによる子どもの本の理解の程度は,子どもの言語能力とは無関係に,本を読む時の母子交渉の質が良い(母親が協力的であり,子どもが課題に取り組み,母親の申し出を拒否しないなど)と関連していることが明らかになった。