[PH048] 4~6歳児のパーソナルナラティブの発達過程
ナラティブ発達評価指標作成に向けての基礎研究
Keywords:ナラティブ, 発達評価指標, 幼児期
[目 的]
本研究は,ナラティブ発達評価指標作成に向けての一連の基礎研究の一部である。幼児期後半になると,時間的に連続した出来事を順序立てて伝えるナラティブが発達してくる。しかしナラティブの発達のプロセスや評価の方法論についてはまだ十分に研究が進んでいない。そこで報告者らはナラティブの発達に関係すると思われる7つの課題を作成し2013年に調査を実施した。これまでにストーリーナラティブの分析,事象知識の語りの分析,スクリプト知識の発達の分析,選択の理由づけの分析(瀬戸・秦野,2014a, b, c, 2015)(秦野・瀬戸, 2014, 2015)を行い,ナラティブ能力が5歳から6歳前半にかけて高まる様相が明らかにされた。ここでは,パーソナルナラティブのきっかけとなる個人的な経験内容に関する質問として,具体的には遊びに関する単純な質問2問と,個人の経験の中で最も強調されて内的感情とともに残っている経験内容についての質問1問,計3問について質問し,その反応の発達的変化について分析する。
[方 法]
調査参加児:保護者の調査協力の承諾が得られた幼稚園年中児年長児83名(4歳前半4名,4歳後半17名,5歳前半23名,5歳後半14名,6歳前半15名,6歳後半10名)。調査期間:2013年2月,3月,7月。質問項目:質問1.幼稚園でお友達とどんな遊びをしていますか。質問2.お家に帰ったら何をして遊んでいますか。質問3.このごろ一番楽しかったことは何ですか。
[結果と考察]
⑴ 質問1,2の応答様式:質問1,2の応答例を表1に示した。質問1,質問2はいずれも遊ぶ対象に関する質問であったが,応答を分析すると,質問2よりも質問1の方が遊ぶものを複数あげる子どもが多かった。同じような質問であったが,子どもが今いる幼稚園で遊んでいるものの方が,家に帰ってからの遊びよりも想起されやすいことが示唆された。図1は,質問1,質問2を合わせた結果である。5歳台までは「どんな遊びをしてる?」の質問に対し,「かくれんぼ」のように,遊ぶ対象を複数とあげる子どもは30%以下であったが,5歳後半から6歳前半にかけて急増し,6歳台になると単数での応答と複数での応答が40~50%でほぼ同じ程度となった。また,動詞述語構文での応答も年齢が高くなるごとに徐々に上昇し,6歳台では45%前後となった。
⑵ 質問3の応答様式と発話内容分析:質問に対し対象のみ応答したか,動詞述語文で応答したかを図3に示した。楽しかったことを話す内容だったからか,質問1,2よりも動詞述語文で答える子どもが多かった。語った内容は大きく日常のこと(ゲームで遊んだこと,お友達と遊ぶことなど)と,特別なこと(縄跳びのバッテン飛びが20回飛べた,発表会でかわいい衣装を着たこと,等)に分けられた。図4にあるように,年齢が高くなるにつれて特別な事象について語る子どもが増えた。今後質問内容を精査していきたい。
本研究は,ナラティブ発達評価指標作成に向けての一連の基礎研究の一部である。幼児期後半になると,時間的に連続した出来事を順序立てて伝えるナラティブが発達してくる。しかしナラティブの発達のプロセスや評価の方法論についてはまだ十分に研究が進んでいない。そこで報告者らはナラティブの発達に関係すると思われる7つの課題を作成し2013年に調査を実施した。これまでにストーリーナラティブの分析,事象知識の語りの分析,スクリプト知識の発達の分析,選択の理由づけの分析(瀬戸・秦野,2014a, b, c, 2015)(秦野・瀬戸, 2014, 2015)を行い,ナラティブ能力が5歳から6歳前半にかけて高まる様相が明らかにされた。ここでは,パーソナルナラティブのきっかけとなる個人的な経験内容に関する質問として,具体的には遊びに関する単純な質問2問と,個人の経験の中で最も強調されて内的感情とともに残っている経験内容についての質問1問,計3問について質問し,その反応の発達的変化について分析する。
[方 法]
調査参加児:保護者の調査協力の承諾が得られた幼稚園年中児年長児83名(4歳前半4名,4歳後半17名,5歳前半23名,5歳後半14名,6歳前半15名,6歳後半10名)。調査期間:2013年2月,3月,7月。質問項目:質問1.幼稚園でお友達とどんな遊びをしていますか。質問2.お家に帰ったら何をして遊んでいますか。質問3.このごろ一番楽しかったことは何ですか。
[結果と考察]
⑴ 質問1,2の応答様式:質問1,2の応答例を表1に示した。質問1,質問2はいずれも遊ぶ対象に関する質問であったが,応答を分析すると,質問2よりも質問1の方が遊ぶものを複数あげる子どもが多かった。同じような質問であったが,子どもが今いる幼稚園で遊んでいるものの方が,家に帰ってからの遊びよりも想起されやすいことが示唆された。図1は,質問1,質問2を合わせた結果である。5歳台までは「どんな遊びをしてる?」の質問に対し,「かくれんぼ」のように,遊ぶ対象を複数とあげる子どもは30%以下であったが,5歳後半から6歳前半にかけて急増し,6歳台になると単数での応答と複数での応答が40~50%でほぼ同じ程度となった。また,動詞述語構文での応答も年齢が高くなるごとに徐々に上昇し,6歳台では45%前後となった。
⑵ 質問3の応答様式と発話内容分析:質問に対し対象のみ応答したか,動詞述語文で応答したかを図3に示した。楽しかったことを話す内容だったからか,質問1,2よりも動詞述語文で答える子どもが多かった。語った内容は大きく日常のこと(ゲームで遊んだこと,お友達と遊ぶことなど)と,特別なこと(縄跳びのバッテン飛びが20回飛べた,発表会でかわいい衣装を着たこと,等)に分けられた。図4にあるように,年齢が高くなるにつれて特別な事象について語る子どもが増えた。今後質問内容を精査していきたい。