日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PH

2015年8月28日(金) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PH050] ATLAN音韻意識検査の開発

高橋登1, 中村知靖2 (1.大阪教育大学, 2.九州大学)

キーワード:音韻意識, ATLAN, 適応型検査

はじめに
われわれはこれまで,インターネットで利用可能な適応型言語能力検査(ATLAN: Adaptive Tests for Language Abilities)を開発してきた(高橋・中村, 2009; 高橋・大伴・中村, 2012)。現在,語彙,漢字,漢字書字,文法・談話,および試行版として語用の各下位検査が公開されている(Google等により,“ATLAN”で検索可能)。現在,ATLANの下位検査として新たに音韻意識検査を開発中である。本報告では,開発の経過とともに,ATLAN音韻意識検査の特徴について報告する。
方 法
問題数を確保するために,調査は2期に分けて行われた。
協力者 第1期 幼稚園年少児:69名,年中児;86名,年長児;105名,1年生:67名。第2期 幼稚園年少児:127名,年中児;132名,年長児;152名,1年生:138名。
課題 先行研究を参考にして,次の種類の音韻意識課題を作成した。(1)タッピング:単語のモーラ数に合わせてタッピングを行う,(2)押韻:刺激語と語尾音節が共通の単語を2つの絵から選択させる,(3)抽出:語中の位置を指定し,その位置にある音節を答えさせる(例:「きのこ」の真ん中の音は?),(4)逆唱:単語を逆唱させる,(5)置き換え 語中の1音節を置き換えてできる語を答えさせる(例:「みかん」の「み」を「か」に変えると何になる?),(6)特殊音節のタッピング(拗音):拗音部分を区別しつつ,拗音を含む語のタッピングを行う,(7)特殊音節のタッピング(促音):促音部分を区別しつつ,促音を含む語のタッピングを行う,(8)特殊音節のタッピング(長音):長音部分を区別しつつ,長音を含む語のタッピングを行う。
結 果
高橋・中村(2009)と同様の手続きを用い,問題ごとに困難度・識別力についてパラメータの推定を行った。問題種ごとの困難度・識別力の平均を求めた(Table 1)。Table 1から,タッピングがいちばん容易なこと,逆唱と置き換えはほぼ同じ困難度であること,特殊音節のタッピングでは長音が特に難しいことが示された。
次に,学年ごとの能力値の平均と標準偏差をTable 2に示す。
Table 1に示した問題のうち,押韻のみが選択式であり,偶然による正答も生じることから除き,合計79問を問題プールとするATLAN音韻意識検査を作成した。また,音韻意識の場合は語彙などと異なり,問題種ごとの難易度の違いが明らかなので,受検者の解答状況によって出題する問題を変える適応型の検査ではなく,各問題種から数問ずつランダムに問題を選択,呈示する形式とした。問題例をFig. 1に示す。