[PH062] 大規模災害後の学校における子どものメンタルヘルスサポートについてのワークショップの効果(2)
理解度の変化を通して
Keywords:大規模災害, 子どものメンタルヘルス, ワークショップ理解
問題・目的
日本では日々さまざまな自然災害が発生するため,児童・生徒が被害にあうことも多く,心身の不調につながることも少なくない。そのような際に,日々学校で児童・生徒と接する学校関係者の役割は大きい。発表者らは,大規模災害後の児童・生徒の心身の不調に対して学校関係者ができることについて,日本各地でワークショップ(WS)を開催した。WSの内容は,オーストラリアで開発されたものであり,オーストラリアでの実績を持つ研究者が講師を務めた。本発表はそれらのWS(全国5会場)において,受講者である日本の学校関係者のトラウマに関する知識がどのように変化したのかについて報告するものである。
方 法
参加者に対し,WSの実施前後に,クイズへの回答を依頼した。クイズは,全22問(A1~A13,B1~B6,C1~C3)で構成された。Aはトラウマの一般的内容に関して問うもの,Bは災害から6か月たった時点での児童生徒のことについて問うもの,Cは自然災害後に教師が子どもの回復を支える上で役立つ行動について問うものであった。回答者は,東京19名,千葉29名,京都12名,広島56名,福岡46名の計162名であった。ただし,欠損値の関係から,各設問への回答者数は異なった。
結 果
A1~A13の正答率 A1~A13の正答率を,WS前後で算出した(Table1)。全13問中9問で,WS後の正答率が高まる結果であった。
また,WS前後で,正答から誤答に変わった人数と,誤答から正答に変わった人数の差異について検討する為,McNemar検定を実施した結果,A1,A3,A7,A10,A13の4問に有意差(p<.05)が,A8に有意傾向(p<.10)が見られた。それらは全て,誤答から正答に変わった人数の方が,正答から誤答に変わった人数よりも多いことを示す結果であった。
B1~B6の正答率 B1~B6の正答率を,WS前後で算出した(Table2)。全6問中4問で,WS後の正答率が高まる結果であった。McNemar検定の実施結果では,全設問で有意差が見られなかった。
C1~C3の正答率 C1~C3の正答率を,WS前後で算出した(Table2)。全3問とも,WS後の正答率が高まる結果であった。McNemar検定の実施結果からは,C1に有意傾向(p<.10)が見られ,誤答から正答に変わった人数の方が,正答から誤答に変わった人数よりも多いことが示唆された。
考 察
以上のように,WS実施前後のクイズの正答率は,全22問中16問で実施後に上昇する結果となった。またMcNemar検定の結果から,本WSの受講が特に,トラウマの一般的内容に関する理解促進に有効であることが示された。これらの結果は,子どものトラウマ反応について学ぶ上での,本WSの有効性を示唆するものといえよう。一方で,実施後の上昇がみられなかった設問もあった。このことの要因として,WSの内容が日本の学校関係者に対して十分に適応するものでなかった可能性やクイズの設問に理解度を把握するものとして妥当でないものが含まれていたことが考えられる。
※本WSは,日本学術振興会の二国間交流事業(セミナー)による助成を受けて実施された。
日本では日々さまざまな自然災害が発生するため,児童・生徒が被害にあうことも多く,心身の不調につながることも少なくない。そのような際に,日々学校で児童・生徒と接する学校関係者の役割は大きい。発表者らは,大規模災害後の児童・生徒の心身の不調に対して学校関係者ができることについて,日本各地でワークショップ(WS)を開催した。WSの内容は,オーストラリアで開発されたものであり,オーストラリアでの実績を持つ研究者が講師を務めた。本発表はそれらのWS(全国5会場)において,受講者である日本の学校関係者のトラウマに関する知識がどのように変化したのかについて報告するものである。
方 法
参加者に対し,WSの実施前後に,クイズへの回答を依頼した。クイズは,全22問(A1~A13,B1~B6,C1~C3)で構成された。Aはトラウマの一般的内容に関して問うもの,Bは災害から6か月たった時点での児童生徒のことについて問うもの,Cは自然災害後に教師が子どもの回復を支える上で役立つ行動について問うものであった。回答者は,東京19名,千葉29名,京都12名,広島56名,福岡46名の計162名であった。ただし,欠損値の関係から,各設問への回答者数は異なった。
結 果
A1~A13の正答率 A1~A13の正答率を,WS前後で算出した(Table1)。全13問中9問で,WS後の正答率が高まる結果であった。
また,WS前後で,正答から誤答に変わった人数と,誤答から正答に変わった人数の差異について検討する為,McNemar検定を実施した結果,A1,A3,A7,A10,A13の4問に有意差(p<.05)が,A8に有意傾向(p<.10)が見られた。それらは全て,誤答から正答に変わった人数の方が,正答から誤答に変わった人数よりも多いことを示す結果であった。
B1~B6の正答率 B1~B6の正答率を,WS前後で算出した(Table2)。全6問中4問で,WS後の正答率が高まる結果であった。McNemar検定の実施結果では,全設問で有意差が見られなかった。
C1~C3の正答率 C1~C3の正答率を,WS前後で算出した(Table2)。全3問とも,WS後の正答率が高まる結果であった。McNemar検定の実施結果からは,C1に有意傾向(p<.10)が見られ,誤答から正答に変わった人数の方が,正答から誤答に変わった人数よりも多いことが示唆された。
考 察
以上のように,WS実施前後のクイズの正答率は,全22問中16問で実施後に上昇する結果となった。またMcNemar検定の結果から,本WSの受講が特に,トラウマの一般的内容に関する理解促進に有効であることが示された。これらの結果は,子どものトラウマ反応について学ぶ上での,本WSの有効性を示唆するものといえよう。一方で,実施後の上昇がみられなかった設問もあった。このことの要因として,WSの内容が日本の学校関係者に対して十分に適応するものでなかった可能性やクイズの設問に理解度を把握するものとして妥当でないものが含まれていたことが考えられる。
※本WSは,日本学術振興会の二国間交流事業(セミナー)による助成を受けて実施された。