[PH066] ひきこもりの人のソーシャルスキルとコミュニケーションに向けた動機づけ
キーワード:ひきこもり, コミュニケーション, 動機づけ
目 的
社会的ひきこもりは,種々の要因により他者と関わらない形で家庭内にとどまり続けている状態(齋藤,2010)とされる。一般に他者との関わりのためには,関わりのスキルと関わりたいという心の動きが前提となるが,ひきこもりの人の場合,それがうまく働いていないことが考えられる。このためひきこもりの人のソーシャルスキルとコミュニケーションに向けた動機づけについて調査を行い検討した。
方 法
調査票の作成
「友人関係動機づけ尺度」(岡田,2005)20項目の質問文中の「友人」を一般的な「人」に置き換え,これに「無調整」5項目を加えて対人コミュニケーション動機づけ調査表とした。これに,成人用ソーシャルスキル自己評定尺度(相川, 2005)を加え,調査票を作成した。
調査の実施
(1) ひきこもり群:2013年11月から翌年5月に全国引きこもりKHJ家族会および都道府県精神保健福祉センターを通じて郵送でひきこもり本人へ調査票を配布し,添付した返信用封筒により59名(男40名,女19名:平均32.2歳)から回答を得た。
(2) 対照群:2014年6月から9月に大学生,看護学校学生計352名(男218名,女134名:平均20.2歳)に同様の調査を行い対照群とした。
結 果
ひきこもりの人のソーシャルスキル 「感情統制」を除く全ての項目で,ひきこもり群の得点が有意に低かった(Figure1.)。ひきこもり群はソーシャルスキルを効果的に使用できていないといえる。
コミュニケーションに向けた動機づけ 有意な違いを示したのは「内的調整」だけであり,他の動機調整には違いが見られなかった。(Figure2.)ひきこもりの人は他者とのコミュニケーションにおいて「楽しみ」など内的調整により動機づけられることは少ないものの,他の動機調整は対照群とほぼ同様といえる。
対人コミュニケーション動機調整の内部相関
動機づけの自己決定理論によると,隣接し合う動機調整間の相関が高いとされるが,これは対照群においても同様であった。しかしながら,ひきこもり群では,「無調整」と「外的調整」の間の相関が有意に低かった。(Table1.)
性差等 以上の検討のほとんどの項目において,性差,治療中の疾患の有無による違いは,見られなかった。
考 察
ひきこもりの人は,社会的場面で対人関係のスキルをうまく使えていない。また,対人コミュニケーションでは無調整の段階から,外的調整に移行する部分に大きな困難が存在している。このことは,ひきこもりの人への支援における,アウトリーチの重要性を示唆している。
社会的ひきこもりは,種々の要因により他者と関わらない形で家庭内にとどまり続けている状態(齋藤,2010)とされる。一般に他者との関わりのためには,関わりのスキルと関わりたいという心の動きが前提となるが,ひきこもりの人の場合,それがうまく働いていないことが考えられる。このためひきこもりの人のソーシャルスキルとコミュニケーションに向けた動機づけについて調査を行い検討した。
方 法
調査票の作成
「友人関係動機づけ尺度」(岡田,2005)20項目の質問文中の「友人」を一般的な「人」に置き換え,これに「無調整」5項目を加えて対人コミュニケーション動機づけ調査表とした。これに,成人用ソーシャルスキル自己評定尺度(相川, 2005)を加え,調査票を作成した。
調査の実施
(1) ひきこもり群:2013年11月から翌年5月に全国引きこもりKHJ家族会および都道府県精神保健福祉センターを通じて郵送でひきこもり本人へ調査票を配布し,添付した返信用封筒により59名(男40名,女19名:平均32.2歳)から回答を得た。
(2) 対照群:2014年6月から9月に大学生,看護学校学生計352名(男218名,女134名:平均20.2歳)に同様の調査を行い対照群とした。
結 果
ひきこもりの人のソーシャルスキル 「感情統制」を除く全ての項目で,ひきこもり群の得点が有意に低かった(Figure1.)。ひきこもり群はソーシャルスキルを効果的に使用できていないといえる。
コミュニケーションに向けた動機づけ 有意な違いを示したのは「内的調整」だけであり,他の動機調整には違いが見られなかった。(Figure2.)ひきこもりの人は他者とのコミュニケーションにおいて「楽しみ」など内的調整により動機づけられることは少ないものの,他の動機調整は対照群とほぼ同様といえる。
対人コミュニケーション動機調整の内部相関
動機づけの自己決定理論によると,隣接し合う動機調整間の相関が高いとされるが,これは対照群においても同様であった。しかしながら,ひきこもり群では,「無調整」と「外的調整」の間の相関が有意に低かった。(Table1.)
性差等 以上の検討のほとんどの項目において,性差,治療中の疾患の有無による違いは,見られなかった。
考 察
ひきこもりの人は,社会的場面で対人関係のスキルをうまく使えていない。また,対人コミュニケーションでは無調整の段階から,外的調整に移行する部分に大きな困難が存在している。このことは,ひきこもりの人への支援における,アウトリーチの重要性を示唆している。