[PH067] 「いじめ」は早期発見できるのか
つながりの性質に着目して
キーワード:いじめ, つながり, 能動性・受動性
1.問題と目的
2006年の改訂以降,いじめの定義は被害者による「心理的・物理的な攻撃」の認知,およびそれに伴う「心身の苦痛」に焦点づけられている。このことは,集団において特定の成員が安定したつながりを有することのできない集団状況に相当すると考えられる(Hafsi,2004; 黒崎, 2015)。従って,そのような状態におかれている成員を早期に見出し介入を行うことがいじめ対策として求められる。本研究では,つながりの性質に着目し,発表者らが開発した尺度を用いてそれを評定できる可能性について検討を行う。
2.方法
1)対象と手続き 対象者は,A県内の公立小学校6年生2クラス(B/C)に在籍する生徒67名(男女内訳:B19/15,C18/15)である。本調査は2013年11月に実施した。
2)調査尺度 新尺度「こころのメート」を作成し用いた。本尺度は,クラス全員の氏名と調査項目(遊んだ,遊びたかった,話した,話したかった)を記した5頁から成る。月曜から金曜の5日間,該当欄に印を付け記録するよう求めた。
3)集計 まず,曜日別・個人別・項目別に,つながりの性質,すなわち能動性(例:成員Dが月曜日に「遊んだ人」として選択した人数の合計値),受動性(月曜日に成員Dを「遊んだ人」として選択した人数の合計値)それぞれについて集計を行った。次に,全日・全員・全項目のクラス別平均値と標準偏差から基準値を算出し,4類型(能動性・受動性型,能動性低位型,受動性低位型,能動性・受動性低位型)別に各成員の評定を行った。
3.結果
1)クラス別集計結果 クラス別・男女別の集計結果を表に示した。平均値の差の大きさから,「遊ぶ」と「話す」は異なるものとみなされている可能性が示唆された。また,同一個人・項目内における曜日間の差の大きさ(最大21)から,複数日の測定期間の必要性が確認された。
2)各成員の評定結果 つながりの性質によりすべての成員の評定を行った結果,能動性・受動性の何れかにおいて低位値を示した成員は67名中18名(約27%; B男3女5, C男4女6)であった。
・能動性・受動性型(49名) 能動性・受動性ともに高位値か標準範囲内を示す型。級友への主体的な関わり,および級友からの関わりに対する受容性ともに充分あり,安定したつながりが保持されている可能性が高い。
・能動性低位型(5名) 受動性は高位か標準範囲内にもかかわらず,能動性で低位を示す型。級友からの関わりに対する受容性はあるが,級友への主体的な関わりは不充分であり,安定したつながりが保持されていない可能性が高い。
・受動性低位型(9名) 能動性は高位か標準範囲内にもかかわらず,受動性で低位を示す型。級友への主体的な関わりはあるが,級友からの関わりに対する受容性は不充分であり,安定したつながりが保持されていない可能性が高い。
・能動性・受動性低位型(4名) 能動性・受動性ともに低位を示すタイプ。級友への主体的な関わり,および級友からの関わりに対する受容性ともに不充分であり,安定したつながりが保持されていない可能性が高い。
4.考察
新尺度「こころのメート」を用いて,各成員が有するつながりの性質を把握し,いじめの早期発見,および適切な介入が可能になると考えられる。
今後,「遊ぶ」と「話す」の認識の違い,主観的な適応感や居場所感との関連,担任などによる評価との関連等について明らかにする必要がある。
2006年の改訂以降,いじめの定義は被害者による「心理的・物理的な攻撃」の認知,およびそれに伴う「心身の苦痛」に焦点づけられている。このことは,集団において特定の成員が安定したつながりを有することのできない集団状況に相当すると考えられる(Hafsi,2004; 黒崎, 2015)。従って,そのような状態におかれている成員を早期に見出し介入を行うことがいじめ対策として求められる。本研究では,つながりの性質に着目し,発表者らが開発した尺度を用いてそれを評定できる可能性について検討を行う。
2.方法
1)対象と手続き 対象者は,A県内の公立小学校6年生2クラス(B/C)に在籍する生徒67名(男女内訳:B19/15,C18/15)である。本調査は2013年11月に実施した。
2)調査尺度 新尺度「こころのメート」を作成し用いた。本尺度は,クラス全員の氏名と調査項目(遊んだ,遊びたかった,話した,話したかった)を記した5頁から成る。月曜から金曜の5日間,該当欄に印を付け記録するよう求めた。
3)集計 まず,曜日別・個人別・項目別に,つながりの性質,すなわち能動性(例:成員Dが月曜日に「遊んだ人」として選択した人数の合計値),受動性(月曜日に成員Dを「遊んだ人」として選択した人数の合計値)それぞれについて集計を行った。次に,全日・全員・全項目のクラス別平均値と標準偏差から基準値を算出し,4類型(能動性・受動性型,能動性低位型,受動性低位型,能動性・受動性低位型)別に各成員の評定を行った。
3.結果
1)クラス別集計結果 クラス別・男女別の集計結果を表に示した。平均値の差の大きさから,「遊ぶ」と「話す」は異なるものとみなされている可能性が示唆された。また,同一個人・項目内における曜日間の差の大きさ(最大21)から,複数日の測定期間の必要性が確認された。
2)各成員の評定結果 つながりの性質によりすべての成員の評定を行った結果,能動性・受動性の何れかにおいて低位値を示した成員は67名中18名(約27%; B男3女5, C男4女6)であった。
・能動性・受動性型(49名) 能動性・受動性ともに高位値か標準範囲内を示す型。級友への主体的な関わり,および級友からの関わりに対する受容性ともに充分あり,安定したつながりが保持されている可能性が高い。
・能動性低位型(5名) 受動性は高位か標準範囲内にもかかわらず,能動性で低位を示す型。級友からの関わりに対する受容性はあるが,級友への主体的な関わりは不充分であり,安定したつながりが保持されていない可能性が高い。
・受動性低位型(9名) 能動性は高位か標準範囲内にもかかわらず,受動性で低位を示す型。級友への主体的な関わりはあるが,級友からの関わりに対する受容性は不充分であり,安定したつながりが保持されていない可能性が高い。
・能動性・受動性低位型(4名) 能動性・受動性ともに低位を示すタイプ。級友への主体的な関わり,および級友からの関わりに対する受容性ともに不充分であり,安定したつながりが保持されていない可能性が高い。
4.考察
新尺度「こころのメート」を用いて,各成員が有するつながりの性質を把握し,いじめの早期発見,および適切な介入が可能になると考えられる。
今後,「遊ぶ」と「話す」の認識の違い,主観的な適応感や居場所感との関連,担任などによる評価との関連等について明らかにする必要がある。