[PH074] 女子大学生における愛情の関係モデル,感情調節と精神的健康の関連
Keywords:愛情の関係モデル, 感情調節, 精神的健康
目的
近年,大学の大衆化がすすむとともに,大学生活への適応に困難を抱える学生が増加し,その困難の背景には,人間関係の問題が関連すると言われている(高倉,1995; 平野,2005; 谷島,2005)。その背景要因として,愛情の関係モデル(高橋,2002)と感情調節の方略(吉津ら,2013)に注目し,その関連を検討することを目的とする。
方法
対象と実施期間
2014年6月に,首都圏女子大学において279名を対象に,講義後,教室内で質問紙調査を行った。無記名での記入を依頼し,その場で回収した。
調査内容
①フェイスシート:年齢,学年,家族構成に関する回答を求めた。
②愛情の関係スケール(Affective Relationships Scale: 高橋,2002 ; 以下ARSとする):愛情の要求を向ける対象者ごとに,心理的機能6機能(2項目ずつ)計12項目(5段階評価)からなる。各々36点以下の場合,人間に関心をもたない,あるいはもてていないと判断して,これをLone wolf型(以下Lw型)とする。ARS点の各対象別合計得点が最も高い場合,愛情の関係の枠組みの特徴を代表する対象とみなした。
③感情調節尺度(Emotion Regulation Questionnaire)日本語版(吉津ら, 2013 ; 以下ERQとする):感情の原因となる出来事を再解釈することによって感情自体を調節する「再評価方略」傾向と,感情が起きた後に感情の表出を抑える「抑制方略」傾向を問う尺度。10項目,2下位尺度。
④日本語版GHQ精神健康調査票28項目版(The General Health Questionnaire 28 ; 中川・大坊, 1985 ; 以下GHQとする):精神的健康度を査定する尺度。28項目,「身体的症状」,「不安と不眠」,「社会的活動障害」,「うつ傾向」の4因子。
なお,本研究は跡見学園女子大学文学部臨床心理学科倫理委員会において承認を受けた。(14009)
結果と考察
ARSの類型別における精神的健康度の比較
ARSの類型別GHQの得点に有意な差はみられなかった。
ERQの方略別における精神的健康度の比較
ERQの方略別GHQ得点の差を検討したところ,「不安と不眠」,「社会的活動障害」,「うつ傾向」,「GHQ総合得点」において「抑制方略」>「再評価方略」となった。この結果は,Gross & John(2003)が作成したERQを使用した,平井 (2012)が示している「再評価方略の平均が高い人は,精神的健康度も高い」結果と一致した。
ARSの愛情の対象の人数×ERQの感情調節方略別,精神的健康度の比較
愛情の対象の人数(「Lw型」,「一人」,「二人以上」)と感情調節方略(「抑制方略」,「再評価方略」)を独立変数,GHQを従属変数とし,3×2の二要因の分散分析を行った結果,「不安と不眠」,「GHQ総合得点」で有意な交互作用がみられ,単純主効果検定を行った結果,「不安と不眠」は「抑制方略」の場合「Lw型」<「一人」・「二人以上」,「二人以上」の場合,「再評価方略」<「抑制方略」に,「GHQ総合得点」は「抑制方略」の場合「Lw型」<「一人」・「二人以上」,「一人」・「二人以上」の場合,「再評価方略」<「抑制方略」となった。
全体的にLw型は「抑制方略」の場合の方が「再評価方略」の場合より精神的健康が良く,愛情の要求を向ける対象がいる人たちは「再評価方略」の場合の方が,「抑制方略」の場合よりも精神的健康が良い結果になることが示された。
近年,大学の大衆化がすすむとともに,大学生活への適応に困難を抱える学生が増加し,その困難の背景には,人間関係の問題が関連すると言われている(高倉,1995; 平野,2005; 谷島,2005)。その背景要因として,愛情の関係モデル(高橋,2002)と感情調節の方略(吉津ら,2013)に注目し,その関連を検討することを目的とする。
方法
対象と実施期間
2014年6月に,首都圏女子大学において279名を対象に,講義後,教室内で質問紙調査を行った。無記名での記入を依頼し,その場で回収した。
調査内容
①フェイスシート:年齢,学年,家族構成に関する回答を求めた。
②愛情の関係スケール(Affective Relationships Scale: 高橋,2002 ; 以下ARSとする):愛情の要求を向ける対象者ごとに,心理的機能6機能(2項目ずつ)計12項目(5段階評価)からなる。各々36点以下の場合,人間に関心をもたない,あるいはもてていないと判断して,これをLone wolf型(以下Lw型)とする。ARS点の各対象別合計得点が最も高い場合,愛情の関係の枠組みの特徴を代表する対象とみなした。
③感情調節尺度(Emotion Regulation Questionnaire)日本語版(吉津ら, 2013 ; 以下ERQとする):感情の原因となる出来事を再解釈することによって感情自体を調節する「再評価方略」傾向と,感情が起きた後に感情の表出を抑える「抑制方略」傾向を問う尺度。10項目,2下位尺度。
④日本語版GHQ精神健康調査票28項目版(The General Health Questionnaire 28 ; 中川・大坊, 1985 ; 以下GHQとする):精神的健康度を査定する尺度。28項目,「身体的症状」,「不安と不眠」,「社会的活動障害」,「うつ傾向」の4因子。
なお,本研究は跡見学園女子大学文学部臨床心理学科倫理委員会において承認を受けた。(14009)
結果と考察
ARSの類型別における精神的健康度の比較
ARSの類型別GHQの得点に有意な差はみられなかった。
ERQの方略別における精神的健康度の比較
ERQの方略別GHQ得点の差を検討したところ,「不安と不眠」,「社会的活動障害」,「うつ傾向」,「GHQ総合得点」において「抑制方略」>「再評価方略」となった。この結果は,Gross & John(2003)が作成したERQを使用した,平井 (2012)が示している「再評価方略の平均が高い人は,精神的健康度も高い」結果と一致した。
ARSの愛情の対象の人数×ERQの感情調節方略別,精神的健康度の比較
愛情の対象の人数(「Lw型」,「一人」,「二人以上」)と感情調節方略(「抑制方略」,「再評価方略」)を独立変数,GHQを従属変数とし,3×2の二要因の分散分析を行った結果,「不安と不眠」,「GHQ総合得点」で有意な交互作用がみられ,単純主効果検定を行った結果,「不安と不眠」は「抑制方略」の場合「Lw型」<「一人」・「二人以上」,「二人以上」の場合,「再評価方略」<「抑制方略」に,「GHQ総合得点」は「抑制方略」の場合「Lw型」<「一人」・「二人以上」,「一人」・「二人以上」の場合,「再評価方略」<「抑制方略」となった。
全体的にLw型は「抑制方略」の場合の方が「再評価方略」の場合より精神的健康が良く,愛情の要求を向ける対象がいる人たちは「再評価方略」の場合の方が,「抑制方略」の場合よりも精神的健康が良い結果になることが示された。