日本教育心理学会第57回総会

講演情報

準備委員会企画 シンポジウム

中1ギャップと小中接続を教育相談から考える

研究・実践の成果と今後の課題

2015年8月26日(水) 16:00 〜 18:30 国際会議室 (4階)

企画・司会:神村栄一(新潟大学), 話題提供:青山修司#(女川町立女川小学校), 上野昌弘#(新潟大学附属新潟中学校), 相馬誠一#(東京家政大学), 指定討論:嶋田洋徳(早稲田大学)

16:00 〜 18:30

[j-sym02] 中1ギャップと小中接続を教育相談から考える

研究・実践の成果と今後の課題

神村栄一1, 青山修司#2, 上野昌弘#3, 相馬誠一#4, 嶋田洋徳5 (1.新潟大学, 2.女川町立女川小学校, 3.新潟大学附属新潟中学校, 4.東京家政大学, 5.早稲田大学)

キーワード:集団不適応, 中1ギャップ, 小中接続

不登校やいじめ,その他の問題行動傾向は,中学校への進学直後の1年間で急増し深刻化することがわかっている。この現象を「中1ギャップ」と命名し,初めて調査研究の対象として取り組んだのは,新潟県(平成15年当時)の教育庁学校指導課であった。
今では,学校教育に関する重要キーワードとなり,全国の小中学校で,さまざまな予防のための取り組みが展開されている。
例えば不登校について,前年度の小学校6年生で「30日以上の原因が明確でない欠席」があった子どもの数を1.0とすれば,中1でのその数は,2.8から3.2程度になっている。
不登校は累積しやすい統計量であるが,もしこの中1不登校と中2不登校(中1から中2での1.5倍前後の増加)を積極的に予防できれば,義務教育全体の不登校は半分以下ほどに抑えることが見込める。
いじめも,義務教育6年間と高等学校(大半が3年間)で最も認知件数が高いのは中1の1年間であり,その他,集団不適応,反社会的問題行動の傾向がすすむのは,中学校に進学した1年から1年半であるという指摘も多い。
最近では,「小中一貫教育」推進の背景のひとつとして,この小中のギャップの解消・緩和策をあげ取り組みをすすめている自治体も多い。
そこで本シンポジウムでは,「小学校から中学校への接続」というテーマについて,小中学校でのとりくみ,および教育相談の専門における取り組みについて話題提供を受け,それぞれの成果とのこされた課題を整理し,意見交換してみることとする。


震災復興の中での小中学校統合・再生の成果と小中一貫校設立構想および課題
青山修司(女川小学校教頭)
宮城県女川町では,東日本大震災後の復興のなかで,小中学校の移転,統合がすすみ,その中で一貫校設立も視野にいれた再生プランが進んでいる。自らも被災しながら小学校教諭としてこれらに取り組んできた体験から見えてきたこと,課題について語っていただく。


中1ギャップ解消調査研究から自校プランとしての展開と今後の課題
上野昌弘(新潟大学附属新潟中学校副校長)
平成15年度の新潟県での「中1ギャップ解消調査研究事業」当時の担当指導主事として,および新潟県内公立中学校での教頭・校長あるいは佐渡地区指導主事として取り組んできた,「中1ギャップ未然防止」の取り組みについて,紹介いただく。


不登校といじめの実態の中での「中1ギャップ」現象をどうとらえるか
相馬誠一(東京家政大学)
不登校は,昭和の終わりに「登校拒否」とした語られた時代から変遷してきた。我が国の子どもの状況を敏感に反映している。いじめは,事件や事故のたびにさまざまに扱われるが,現場での改善解消の決め手は得られないままである。これらの問題は,誰もがそれぞれの立場や経験から語ることができるが実際はどうなのか。これらのテーマに科学的かつ実践的に長年取り組んできた結果を踏まえ,中1ギャップや小中一貫教員に期待できること,懸念されることを論じていただく。
上記3氏の話題提供に続き,「学校ストレスの評価」「認知行動療法を基盤としたストレスマネジメント教育」研究の,第一人者である嶋田洋徳氏から,指定討論で意見交換の口火を切っていただく。「中1ギャップ」に限らない,子どものタフネスさを見つめ引き出すコツ,学校状況の工夫,教職員の支援体制における課題について,豊富な実践研究・学術研究を背景として論じていただく。

当日は,小中学校での教育相談,不登校やいじめ,この時期の心の荒れの問題にかかわる会員の方にも参加いただき,討論できればと考える。