10:00 AM - 12:00 PM
[shoutai01] アロマザリングの島の子どもたち
多良間島の子別れ
Keywords:アロマザリング, 離島, 子別れ
【講演要旨】
親子の関係を包括的に理解するには,親和性と反発性をともに焦点とする「楕円」構造としての複眼的視点が必要であり,「子別れ」はとくにその反発性のもつ適応的機能に光を当てるものである。子別れには離乳期の親子対立などによる積極的反発性と,母子を取りまく「モノ・ヒト・シクミ」の複合的アロマザリングシステムによる隔たりを通じた消極的反発性とがあり,後者がヒトの子育てをユニークで多様なものにしている。本講演では,私がこれまで調査してきた沖縄県多良間島の子育てなどを通じてこの問題を考察する。とくに,少女が母親に代わって赤ん坊の世話をし,その少女と赤ん坊が生涯にわたってつながりを持つ「守姉」という島のアロマザリングの風習に注目する。守姉には,単に個と個の結合ではなく互いの親族同士のつながりが生まれることや,そういうネットワークの中で少女も赤ん坊も育ちゆくといった,都会の子育てと異なるいくつかの特徴がある。それらの指摘を通じて,今日の子育て・子育ちの問題を再考してみたい。
なお本招待講演は,準備委員会企画シンポジウム「アロマザリングの島における子育て」(8月27日13:30~15:30)と相補的にタイアップする形で企画したものである。
【講師のプロフィール】
<関心領域>
霊長類研究から人間の文化比較まで,長年にわたって一貫して親子関係と子どもの自立を研究。とくに母子間の反発的関係や離乳の過程・食発達などを「子別れ」「身体」をキーワードに考察してきた。モノ・ヒト・シクミのシステムが支える分離と保護の両立的母子観に注目し,最近は保育・アロマザリングや事故にも関心を持つ。
<略歴>
大阪大学大学院文学研究科博士課程中退。大阪大学助手,武庫川女子大学講師・助教授等を経て,現在早稲田大学人間科学学術院教授・早稲田大学応用脳科学研究所研究員。その間,英エディンバラ大学客員研究員・ストラスクライド大学客員教授,仏トゥールーズ大学客員教授となる。博士(人間科学)。発達科学研究教育奨励賞(1990),発達臨床研究賞(2006),こども環境学会賞論文賞(2007)を受賞。
<主要著書>
『発達行動学の視座:<個>の自立発達の人間科学的探求』2002年 金子書房
『身体から発達を問う:衣食住のなかのからだとこころ』2003年 新曜社
『<子別れ>としての子育て』2006年 日本放送出版協会
『ヒトの子育ての進化と文化:アロマザリングの役割を考える』2010年 有斐閣
『アロマザリングの島の子どもたち:多良間島子別れフィールドノート』2012年 新曜社
『発達の基礎:身体・認知・情動』2012年 新曜社
『子どもと食:食育を超える』2013年 東京大学出版会
親子の関係を包括的に理解するには,親和性と反発性をともに焦点とする「楕円」構造としての複眼的視点が必要であり,「子別れ」はとくにその反発性のもつ適応的機能に光を当てるものである。子別れには離乳期の親子対立などによる積極的反発性と,母子を取りまく「モノ・ヒト・シクミ」の複合的アロマザリングシステムによる隔たりを通じた消極的反発性とがあり,後者がヒトの子育てをユニークで多様なものにしている。本講演では,私がこれまで調査してきた沖縄県多良間島の子育てなどを通じてこの問題を考察する。とくに,少女が母親に代わって赤ん坊の世話をし,その少女と赤ん坊が生涯にわたってつながりを持つ「守姉」という島のアロマザリングの風習に注目する。守姉には,単に個と個の結合ではなく互いの親族同士のつながりが生まれることや,そういうネットワークの中で少女も赤ん坊も育ちゆくといった,都会の子育てと異なるいくつかの特徴がある。それらの指摘を通じて,今日の子育て・子育ちの問題を再考してみたい。
なお本招待講演は,準備委員会企画シンポジウム「アロマザリングの島における子育て」(8月27日13:30~15:30)と相補的にタイアップする形で企画したものである。
【講師のプロフィール】
<関心領域>
霊長類研究から人間の文化比較まで,長年にわたって一貫して親子関係と子どもの自立を研究。とくに母子間の反発的関係や離乳の過程・食発達などを「子別れ」「身体」をキーワードに考察してきた。モノ・ヒト・シクミのシステムが支える分離と保護の両立的母子観に注目し,最近は保育・アロマザリングや事故にも関心を持つ。
<略歴>
大阪大学大学院文学研究科博士課程中退。大阪大学助手,武庫川女子大学講師・助教授等を経て,現在早稲田大学人間科学学術院教授・早稲田大学応用脳科学研究所研究員。その間,英エディンバラ大学客員研究員・ストラスクライド大学客員教授,仏トゥールーズ大学客員教授となる。博士(人間科学)。発達科学研究教育奨励賞(1990),発達臨床研究賞(2006),こども環境学会賞論文賞(2007)を受賞。
<主要著書>
『発達行動学の視座:<個>の自立発達の人間科学的探求』2002年 金子書房
『身体から発達を問う:衣食住のなかのからだとこころ』2003年 新曜社
『<子別れ>としての子育て』2006年 日本放送出版協会
『ヒトの子育ての進化と文化:アロマザリングの役割を考える』2010年 有斐閣
『アロマザリングの島の子どもたち:多良間島子別れフィールドノート』2012年 新曜社
『発達の基礎:身体・認知・情動』2012年 新曜社
『子どもと食:食育を超える』2013年 東京大学出版会