The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA01] なりたい親についての研究

性差の観点から

櫻井登世子 (法政大学)

Keywords:なりたい親, 性差, 家族

問題と目的
 現代社会は少子高齢化社会であり,父親・母親の役割に対する認識も一昔前と様変わりしている。若者たちは,将来自分が親になるとしたらどのような父親・母親になりたいと思うのであろうか。
 櫻井(2003)は,女子大学生を対象として,思春期の頃の母親に対する認識が将来「なりたい親」におよぼす影響について検討した。本研究では,女子大学生および男子大学生がどのような親になりたいと思っているか調査し,女子と男子では「なりたい親」に対する思いに違いがあるのかどうか検討する。
方   法
調査協力者:東京都内の大学に通う大学生201名(男子78名,女子123名)。
質問紙:「なりたい親」について,櫻井(2003)が作成した質問紙を使用した。どのような親になりたいかについての質問紙は40項目からなっており,「全くそう思わない」から「非常にそう思う」までの7段階評定とした。
手続き:授業中に質問紙を配布し,学生の同意のもと集団で実施した。
結果と考察
 「なりたい親」についての質問紙は,支配・寛容・均衡・溺愛の4因子構造になっている。尚,櫻井(2003)では第3因子を「放任」と命名していたが,因子を構成する質問項目は,ワークライフバランスに関する内容であるため,本研究では「均衡」と命名した。支配因子得点は,女子大学生のほうが男子大学生より高く,「親の言うことを素直に聞く子どもに育てたい」「子どもの生活を親として管理したい」という思いが強いことが示された(t(199)=2.29,p<.01)。寛容因子得点についても女子大学生のほうが男子大学生より得点が高く,女子大学生のほうが男子大学生より「子どもの心を大切にしたい」「子どもの考えをきちんと聞いてあげたい」と思っていることが示唆された(t(199)=1.70,p<.05)。均衡因子,溺愛因子に関しては,男子大学生と女子大学生の得点に差が見られなかった。
 本研究の結果は,女子大学生のほうが子育てに対する思いが強く,従来のように家庭の役割分担として「子育て」は母親が担うものであると認識しているのではないかと推察される。ベネッセ教育総合研究所の「乳幼児の父親についての調査」(2015)によると,子どもとの接し方に自信が持てない父親が多い。本研究では「なりたい親」についての自由記述も求めたが,「子育てに関わるようにしたい」という記述をするものの,「あくまで子育ての中心は母親である」と考える男子大学生が多かった。「子育てに自信が持てない父親」を予感させられなくもない。均衡因子と溺愛因子に性差が見られなかったことは現代社会の家族の在り方を反映し,大学生は親になってからも自分の生きがいを大切にしながら,子どもに愛情を注いでいきたいと考えているようである。
 大学ではどのような家庭を築きたいのか考える機会は少ない。学生が子育て家庭を訪ね,子どもと触れ合い親の話を聞く「家族留学」を企画する団体があるという。待機児童問題が大きく取り上げられ,家庭を築くことや子育てにネガティブなイメージを抱きやすいが,実際に家庭を訪問することで子育てに関心をもつようになったという。また,今まで将来自分が子どもをもつことがイメージできなかったが,定期的に保育園で乳幼児と関わるうちに,父親になることが身近なこととして考えられるようなったという男子大学生もいる。待機児童の問題では女性が赤ちゃんを抱っこして「保育園不足の解消」を訴える映像をよく目にするが,男性にとっても深刻な問題であるととらえられるような教育を大学に求めたいものである。