[PA02] 親子の共同発達として捉えた子どもの自己制御機能(9)
2歳台の子どもの自己主張の多様性
Keywords:自己制御, 幼児, 親子関係
目 的
乳児期から幼児期にかけての子どもの自己制御(自己主張・自己抑制)は,子どもの発達および子育ての重要な側面である。近年の研究では,子どものスキルや能力としての自己制御の発達という観点から,母子間の双方向的な影響関係の中で進行する自己制御の共同発達という側面に注目されるようになってきている(竹尾・渡辺・渡部,2015)。本研究では,母親の語りに見られる子どもの自己主張行動の多様性についてインタビューデータをもとに検討する。
方 法
【調査対象者・調査方法】7組の母子(男児4,女児3)に対し,1.5ヶ月に1回家庭訪問を行い,母親へのインタビューと母子への実験を縦断的に実施した。本研究では,2歳0ヶ月から2歳11ヶ月の期間のインタビューの分析結果について報告する。
【分析方法】母親による語りの内容に対しコーディングを行った。具体的には,まず,6つの分析テーマを設定し,語りの中の意味的まとまり(以下「話題」)に対し,上記の分析テーマごとに語りを詳細・具体的に記述可能なコードをボトムアップに設定した(下位カテゴリー)。下位カテゴリーを包括的に扱いうる上位概念(上位カテゴリー)をまとめ,そのうえで母親の語りの内容が持つ複数の側面について上位カテゴリーに基づいて分類した(語りの側面)。本発表では分析テーマのうち「子どもの自己主張の多様性」について分析と考察を行う。
結果・考察
最初にコーディング結果をまとめた。母親によるこの時期の子どもの自己主張的行動についての語りには,大きく分けて「自己主張の手段」,「自己主張の目的・内容」,「他者との関係のあり方」,「情動の表出」という4側面が存在する。「自己主張の手段」は,自己主張がどのようなコミュニケーションの手段や方法によって表出されるかという側面である。言語的な発達が未熟なこの時期の子どもにとって,言葉による自己主張はまだ少ない(話題数:16。以下,かっこの中の数字は話題数を示す)。それに対し「初期コミュニケーション的」,「動作性」はそれぞれ74と47であり,非常に多い。次に,「自己主張の目的・内容」の側面で多いのは「主体的行動へのこだわり」である(43)。これは,たとえば時間的余裕がない中で,母親が靴ひもを結んだところ,一回脱いで最初から靴ひもを自分で結びなおすといったように,他者ではなく「自分が」その行為を行うことにこだわって自己主張を行う場合である。また,それについで多いのが「行動の志向性へのこだわり(17)」,「他者への愛着を伴う自己主張(14)」,「所有をめぐる自己主張(13)」である。「他者との関係のあり方」については,「相手の意図の否定・拒否」および「相手の意図との衝突・対立」の2つの行動が多く見られた。さらに,単に子どもが情動を表出している場合も自己主張として母親に受け止められていた(「情動の表出」)。対象児によって細かな違いはあるものの,全体として見ると,母親の語りに見られる子どもの自己主張的行動は,どの対象児も「初期コミュニケーション的自己主張」,「動作性自己主張」,「主体的行動へのこだわり」の3カテゴリーが他よりも明らかに多かった。
乳児期から幼児期にかけての子どもの自己制御(自己主張・自己抑制)は,子どもの発達および子育ての重要な側面である。近年の研究では,子どものスキルや能力としての自己制御の発達という観点から,母子間の双方向的な影響関係の中で進行する自己制御の共同発達という側面に注目されるようになってきている(竹尾・渡辺・渡部,2015)。本研究では,母親の語りに見られる子どもの自己主張行動の多様性についてインタビューデータをもとに検討する。
方 法
【調査対象者・調査方法】7組の母子(男児4,女児3)に対し,1.5ヶ月に1回家庭訪問を行い,母親へのインタビューと母子への実験を縦断的に実施した。本研究では,2歳0ヶ月から2歳11ヶ月の期間のインタビューの分析結果について報告する。
【分析方法】母親による語りの内容に対しコーディングを行った。具体的には,まず,6つの分析テーマを設定し,語りの中の意味的まとまり(以下「話題」)に対し,上記の分析テーマごとに語りを詳細・具体的に記述可能なコードをボトムアップに設定した(下位カテゴリー)。下位カテゴリーを包括的に扱いうる上位概念(上位カテゴリー)をまとめ,そのうえで母親の語りの内容が持つ複数の側面について上位カテゴリーに基づいて分類した(語りの側面)。本発表では分析テーマのうち「子どもの自己主張の多様性」について分析と考察を行う。
結果・考察
最初にコーディング結果をまとめた。母親によるこの時期の子どもの自己主張的行動についての語りには,大きく分けて「自己主張の手段」,「自己主張の目的・内容」,「他者との関係のあり方」,「情動の表出」という4側面が存在する。「自己主張の手段」は,自己主張がどのようなコミュニケーションの手段や方法によって表出されるかという側面である。言語的な発達が未熟なこの時期の子どもにとって,言葉による自己主張はまだ少ない(話題数:16。以下,かっこの中の数字は話題数を示す)。それに対し「初期コミュニケーション的」,「動作性」はそれぞれ74と47であり,非常に多い。次に,「自己主張の目的・内容」の側面で多いのは「主体的行動へのこだわり」である(43)。これは,たとえば時間的余裕がない中で,母親が靴ひもを結んだところ,一回脱いで最初から靴ひもを自分で結びなおすといったように,他者ではなく「自分が」その行為を行うことにこだわって自己主張を行う場合である。また,それについで多いのが「行動の志向性へのこだわり(17)」,「他者への愛着を伴う自己主張(14)」,「所有をめぐる自己主張(13)」である。「他者との関係のあり方」については,「相手の意図の否定・拒否」および「相手の意図との衝突・対立」の2つの行動が多く見られた。さらに,単に子どもが情動を表出している場合も自己主張として母親に受け止められていた(「情動の表出」)。対象児によって細かな違いはあるものの,全体として見ると,母親の語りに見られる子どもの自己主張的行動は,どの対象児も「初期コミュニケーション的自己主張」,「動作性自己主張」,「主体的行動へのこだわり」の3カテゴリーが他よりも明らかに多かった。