[PA05] 保育士志望の短期大学生における発達観
Keywords:発達観, 大学生, 幼児期
保育の質の向上に向けた保育実践が模索されているが,とくに子どもの状態に気付き分析的にかかわることの重要性に焦点が当てられてきている。これは保育者が子どもの行動を発達の枠組みのなかでとらえ,保育指導につなげていくことを意味している。
ここでは,保育専攻の学生を対象にして,とくに子どもの発達の階層・段階,そして発達の諸機能連関性を含む発達のすじ道の理解の実態を明らかにし,充実した保育実践の準備の手がかりを得ることを目的とする。
方 法
1.調査対象
O県の短期大学保育学科で保育を学ぶ大学2年生62名。卒業後,保育士あるいは幼稚園教諭の資格をもって就労するが,大半は保育士として就学前保育・教育を担当している。
2.調査内容
幼児期の子どもの行動22項目及び正解以外の項目(distracter)として青年期の行動1項目,計23項目。幼児期の子どもの行動は,運動・手指操作・言語認識の各発達機能を含むもので,4つの発達時期,すなわち1歳半ごろ,2歳半~3歳ごろ,4歳ごろ,そして5・6歳ごろに区分される。
3.調査手続き
授業(「教育心理学」「保育の心理学Ⅱ」など)における「発達」教授の際,受講生に幼児の行動を時期区分させる。授業終了時に回収する。
結 果
1.正答分析
運動機能・手指操作・言語認識機能における正答率は,各々30.8%,36.5%,51.4%,そして全体38.7%であった。言語認識機能の正答率は,他に比べて有意に高い傾向が示された(χ2=5.729,df=2,p<.10).
2.誤答分析
(1)全体
過大評価による誤答率53.1%,過小評価による誤答率46.1%であった。
(2)発達機能
運動機能では,過大評価誤答率45.2%,過小54.8%であった。手指操作過大評価誤答率28.1%,過小71.9%であった。
言語認識過大評価誤答47.2%,過小評価52.8%であった。手指操作機能における過小評価誤答率は,他の2つの発達機能に比べて有意に高かった(x2=26.04,df=2,p<.001).
4.機能連関性の分析
運動,手指操作,言語認識の各発達機能における正答数をもとに機能連関に対する意識レベルを,低・中間・高タイプに分類する。
運動―手指操作では,低タイプ74.2%,中間タイプ25.8%,そして高タイプ0%であった。手指操作―言語認識では,低タイプ48.4%,中間タイプ51.6%,高タイプ0%であった。言語認識―運動では,低タイプ69.4%,中間タイプ30.6%,高タイプ0%であった。そして,運動―手指操作―言語認識では低タイプ77.4%,中間タイプ22.6%,高タイプ0%であった。
運動機能と手指操作との連関性,言語認識―運動,そして3つの機能間の連関性はいずれも低タイプの割合が有意に高かった。
考 察
保育専攻の大学生は,授業の一環として保育実習で幼児との交流を経験してきている。また卒業後の進路先として保育園での保育士を希望している。就学前の子どもの発達の理解をもっと深め,とくに発達の質的転換期を学び,発達の諸機能連関性の把握が大切であろう。小1プロブレムが幼児期の発達の問題として取り上げられている折,whole personとして子どもを理解する必要がある。
ここでは,保育専攻の学生を対象にして,とくに子どもの発達の階層・段階,そして発達の諸機能連関性を含む発達のすじ道の理解の実態を明らかにし,充実した保育実践の準備の手がかりを得ることを目的とする。
方 法
1.調査対象
O県の短期大学保育学科で保育を学ぶ大学2年生62名。卒業後,保育士あるいは幼稚園教諭の資格をもって就労するが,大半は保育士として就学前保育・教育を担当している。
2.調査内容
幼児期の子どもの行動22項目及び正解以外の項目(distracter)として青年期の行動1項目,計23項目。幼児期の子どもの行動は,運動・手指操作・言語認識の各発達機能を含むもので,4つの発達時期,すなわち1歳半ごろ,2歳半~3歳ごろ,4歳ごろ,そして5・6歳ごろに区分される。
3.調査手続き
授業(「教育心理学」「保育の心理学Ⅱ」など)における「発達」教授の際,受講生に幼児の行動を時期区分させる。授業終了時に回収する。
結 果
1.正答分析
運動機能・手指操作・言語認識機能における正答率は,各々30.8%,36.5%,51.4%,そして全体38.7%であった。言語認識機能の正答率は,他に比べて有意に高い傾向が示された(χ2=5.729,df=2,p<.10).
2.誤答分析
(1)全体
過大評価による誤答率53.1%,過小評価による誤答率46.1%であった。
(2)発達機能
運動機能では,過大評価誤答率45.2%,過小54.8%であった。手指操作過大評価誤答率28.1%,過小71.9%であった。
言語認識過大評価誤答47.2%,過小評価52.8%であった。手指操作機能における過小評価誤答率は,他の2つの発達機能に比べて有意に高かった(x2=26.04,df=2,p<.001).
4.機能連関性の分析
運動,手指操作,言語認識の各発達機能における正答数をもとに機能連関に対する意識レベルを,低・中間・高タイプに分類する。
運動―手指操作では,低タイプ74.2%,中間タイプ25.8%,そして高タイプ0%であった。手指操作―言語認識では,低タイプ48.4%,中間タイプ51.6%,高タイプ0%であった。言語認識―運動では,低タイプ69.4%,中間タイプ30.6%,高タイプ0%であった。そして,運動―手指操作―言語認識では低タイプ77.4%,中間タイプ22.6%,高タイプ0%であった。
運動機能と手指操作との連関性,言語認識―運動,そして3つの機能間の連関性はいずれも低タイプの割合が有意に高かった。
考 察
保育専攻の大学生は,授業の一環として保育実習で幼児との交流を経験してきている。また卒業後の進路先として保育園での保育士を希望している。就学前の子どもの発達の理解をもっと深め,とくに発達の質的転換期を学び,発達の諸機能連関性の把握が大切であろう。小1プロブレムが幼児期の発達の問題として取り上げられている折,whole personとして子どもを理解する必要がある。