[PA07] 幼児の協同性の発達における論理的思考力
5歳児の発達的変化に注目して
キーワード:協同性, 論理的思考力, メタ認知
目 的
幼児期においては,協同性の発達とともに論理的思考力の発達が,重要な発達の側面と考えられている。論理的思考力については,次期幼稚園教育要領の構造化の検討の中で,「思考力・判断力・表現力等の基礎」として取り上げられている。また,幼児期の論理的思考力は,メタ認知の萌芽という認知的能力をも含む概念と考えられる。
筆者は,これまで幼児期の協同性の発達に関して,11の視点で分類した発達的変化について検討し,報告してきた。そこでは,協同性の発達につれて,「振り返り活動」というメタ認知的活動が重要になってくることが指摘された。
本研究では,協同性の発達においてみられる論理的思考力を,「振り返り活動」を含め,さらに広範な認知的観点から再検討することを目的としている。具体的には,協同性の発達につれて,どのような論理的思考力が出現し,重要となってくるのかを明らかにすることである。
論理的思考力の分類基準に関しては,内田・津金(2014)を参考としながら,協同性の発達の文脈で解釈し,基準を設定した。例えば,「規則性・法則性」では物理的な外界についての知識だけでなく,下位レベル1から5までを区別し,新たな遊びのルールを作りだすことまでを含むこととした。また,「人との関係性」に関しては,他者の視点と捉えなおし,他者との公平・平等性について考え判断するレベルと,他者の視点を取りこんで判断・評価するという2つの下位レベルを想定した。協同性の発達という文脈特有の基準となっている。設定した大分類はFigure 1.に記載している。
方 法
2012年度,阪神間のK市の公立幼稚園において,各クラスの担任の先生に3名の園児を対象として,縦断的に協同性に関するエピソードを記述していただいた。今回,分析の対象としたのは5歳児の計102のエピソードである。各エピソードについて2つまでの論理的思考力の観点を分類し集計した。論理的思考力については計131の項目となった。なお,協同性の分類については,先生方と話し合いをしながら行っている。
結果及び考察
(1)5歳児の論理的思考力の発達的変化
Figure 1.は,3つの学期別に,論理的思考力の視点の出現の割合を図にしたものである。
1学期とそれ以降とで大きく異なっていることが示された。1学期には,遊びをめぐってルールを理解したり,遊びに関連するものを作りだしたり,ルールを作りだすという(1)規則性が半数を超えており,また友だちと関わり始める中で,(2)比較・分類特徴の出現数も多くなっている。2学期以降は,協同性の視点(Table 1参照)8以降が多くなるため,自分なりの仮説・アイデアを伝え,他者の視点を取ることの重要性が増してくる。
(2)5歳児の協同性と論理的思考力の関係
協同性の視点7の「嬉しさや楽しさを共感する」では多様な論理的思考力の観点が出現している。またそれ以降の視点では因果関係への言及も出てくることが特徴的である。
今後は,論理的思考力の観点を重視した遊びのエピソードの収集と分析を進め,協同的な遊びにおける論理的思考力の発達とその役割,さらにそれへの支援を検討してく予定である。
幼児期においては,協同性の発達とともに論理的思考力の発達が,重要な発達の側面と考えられている。論理的思考力については,次期幼稚園教育要領の構造化の検討の中で,「思考力・判断力・表現力等の基礎」として取り上げられている。また,幼児期の論理的思考力は,メタ認知の萌芽という認知的能力をも含む概念と考えられる。
筆者は,これまで幼児期の協同性の発達に関して,11の視点で分類した発達的変化について検討し,報告してきた。そこでは,協同性の発達につれて,「振り返り活動」というメタ認知的活動が重要になってくることが指摘された。
本研究では,協同性の発達においてみられる論理的思考力を,「振り返り活動」を含め,さらに広範な認知的観点から再検討することを目的としている。具体的には,協同性の発達につれて,どのような論理的思考力が出現し,重要となってくるのかを明らかにすることである。
論理的思考力の分類基準に関しては,内田・津金(2014)を参考としながら,協同性の発達の文脈で解釈し,基準を設定した。例えば,「規則性・法則性」では物理的な外界についての知識だけでなく,下位レベル1から5までを区別し,新たな遊びのルールを作りだすことまでを含むこととした。また,「人との関係性」に関しては,他者の視点と捉えなおし,他者との公平・平等性について考え判断するレベルと,他者の視点を取りこんで判断・評価するという2つの下位レベルを想定した。協同性の発達という文脈特有の基準となっている。設定した大分類はFigure 1.に記載している。
方 法
2012年度,阪神間のK市の公立幼稚園において,各クラスの担任の先生に3名の園児を対象として,縦断的に協同性に関するエピソードを記述していただいた。今回,分析の対象としたのは5歳児の計102のエピソードである。各エピソードについて2つまでの論理的思考力の観点を分類し集計した。論理的思考力については計131の項目となった。なお,協同性の分類については,先生方と話し合いをしながら行っている。
結果及び考察
(1)5歳児の論理的思考力の発達的変化
Figure 1.は,3つの学期別に,論理的思考力の視点の出現の割合を図にしたものである。
1学期とそれ以降とで大きく異なっていることが示された。1学期には,遊びをめぐってルールを理解したり,遊びに関連するものを作りだしたり,ルールを作りだすという(1)規則性が半数を超えており,また友だちと関わり始める中で,(2)比較・分類特徴の出現数も多くなっている。2学期以降は,協同性の視点(Table 1参照)8以降が多くなるため,自分なりの仮説・アイデアを伝え,他者の視点を取ることの重要性が増してくる。
(2)5歳児の協同性と論理的思考力の関係
協同性の視点7の「嬉しさや楽しさを共感する」では多様な論理的思考力の観点が出現している。またそれ以降の視点では因果関係への言及も出てくることが特徴的である。
今後は,論理的思考力の観点を重視した遊びのエピソードの収集と分析を進め,協同的な遊びにおける論理的思考力の発達とその役割,さらにそれへの支援を検討してく予定である。